不遇の海外移籍を経て、復活した大黒将志=孤高のストライカーが見せるゴールへの執着心

海江田哲朗

オフサイドライン上に生きるストライカー

独特の嗅覚でJ2得点ランキング首位を快走する東京VのFW大黒将志(左) 【Photo:アフロ】

「もっとパスを出してくれればゴールを決められる。後ろでボールを回しているとき、前にいる僕に当ててくれていいのにと思うことがたくさんあります。点を取りたい。だって、本当ならもっと取れますもん。まあ、自分のせいでもありますけどね。シュートを決めておけば勝てたゲームもあったんで。いや、でも、みんなでうまくやれば、もっとゴールできるんすよ。周りにはいつも言ってます。パスを出してくれ、クロスを入れてくれと。そうしたらもっともっと点が取れる。取りますから」

 あるときの大黒将志のコメントを忠実に再現してみた。わたしは言葉のつぶてを受けながら、そんなに何度も同じことを言わなくても重々分かりましたと言いたくなった。大黒には簡単な質問をしただけである。ヒーローインタビューの際、「もっとゴールを決めたかった」と毎回のように聞いていたため、一体何点くらい取れば満足するのですか、と。愚問は承知だが、聞いてみなければ分からないこともある。この調子ではハットトリックを達成しても「ま、ええか」とはならない。3点取ったら4点目が取れなかったと残念がり、10点取っても11点目のチャンスを決め損ねたと言い出しかねない様子だ。そして、上記の質問はもう二度とすまいと胸に刻んだ。

 東京ヴェルディ(東京V)のエースである大黒は現在(第21節終了時点)11得点を挙げ、J2得点ランキングのトップを走る。周囲からはJ2に置いておくのはもったいないという声が高まりつつあり、それは実に的確な指摘で、かつ妥当な評価と思われるが、当面は聞かなかったフリを決め込んでいる。しばし待たれよと余裕をかますにはJ1昇格圏が遠すぎ(3位と勝ち点14差の7位)、それ以外に上のステージでプレーする方法がないわけではないが、そっちの話は気が進まない。

 特筆すべきは、ほとんどのゴールをワンタッチで仕上げること。第19節のセレッソ大阪戦のゴールは、大黒の“らしさ”が凝縮されていた。51分、滝澤邦彦が河野広貴にスルーパスを通し、河野がダイレクトでグラウンダーのクロスを入れる。そこに、ドンピシャのタイミングでDFの前に回り込んだ大黒が右足を伸ばしてボールの軌道を変えた。直前、滝澤からのクロスに対応するつもりだったのだろう。一時はDFの背後を狙ってファーサイドに流れようとしている。ところが、河野が縦に抜けた瞬間、急激にニアサイドへと舵(かじ)を切った。鮮やかなフィニッシュの一方、ラストパスが出たときはオフサイドポジションに見える。VTRを何度も見返したが、副審によっては旗を上げられてもおかしくない際どさだ。つまり、彼はそういう場所で生きている。

独自の得点スタイルを持つFW大黒将志

 高木琢也監督は大黒の際立った得点力の好例として、第13節の横浜FC戦のゴールを挙げた。2分、左サイドから滝沢がミドルシュートを撃つ。シュートは右に逸れ、ペナルティーエリアを斜めに横切ってゴールラインを割ると思われたが、ファーサイドに詰めていた大黒がプッシュに成功した。
「まさかあそこに飛び込んでくるとはね。びっくりしましたよ。まったく思いもしませんでしたから。大黒はどんな状況においてもゴールを狙っている。自分のスタイル、得意な形を確立している。そこがほかのFWとの違いです」

 かつては、高木監督も日本屈指のストライカーとして鳴らした(J1通算191試合64得点、日本代表45試合27得点)。その人がストライカーをどう定義付けるのか興味がある。高木監督の現役時代を思い起こすと、1992年のアジアカップ決勝のサウジアラビア戦のゴールがとりわけ印象深い。三浦知良のクロスを胸で落とし、左足でネットに突き刺した。これが決勝点となり、日本は大会初優勝を達成している。ああいった勝負どころの一発がチームメートの信頼を集め、ゴールに特化した選手をつくるのだろうか。

「ゴールが劇的であることはあまり重要ではないと思う。1点は1点でしょう。それよりも、あいつは○○だけど、点を取るんだよなと言われるようになること。例えばトラップが大きくてボールが収まらないとか、パス回しのリズムがどうも良くないなど、いくらかゲームに支障があるにせよ、結局いつもゴールを決めるじゃないかと。周りからそんなふうに評価されることですかね」

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著者プロフィール

海江田哲朗

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『Soccer KOZO』のほか、東京ローカルのサッカー情報を伝える『東京偉蹴』など。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。

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