ロナウジーニョは終わってしまったのか?=ミランで輝けない2つの理由
残された可能性はスーパーサブに徹すること
エース・カカ(右)に合わせた戦術に、ロナウジーニョはなじめないでいる 【Photo:アフロ】
第34節終了時点、今季のカカが欠場したのは7試合。この7試合でミランが獲得した勝ち点は1試合当たりの平均でわずかに0.86。対して、カカが出場した27試合での同数値は2.37にまで跳ね上がる。しかも、カカは15ゴールを挙げてチーム得点王(2位はパトの14ゴール、ロナウジーニョは8ゴール)であり、アシストもチーム最多の8(ロナウジーニョは4)をマークしている。絶対的エースと言われるゆえんである。
そのエースがいわゆるショートカウンターを柱とする戦術を好むため、中盤でボールを奪ってからなだれ込むような動きがMF、そしてFW陣に連続して求められる。その中で、ボールを持つとわずかとはいえプレーを止めてしまうロナウジーニョは、どうしてもチーム全体のリズムを狂わせてしまう。
ロナウジーニョがミランのスタイルに順応し切れていないのか、あるいはミランがロナウジーニョという“特殊な”選手を使い切れていないのか。なおも両論分かれるところだが、現時点では前述のデータが示す通り、「Kaka’dipendente(カカの出来次第)」という状態にミランがあることは間違いない。
だとすれば、監督がエースの特性を最大限に生かすべくメンバー構成を決めるのは当然だ。よってロナウジーニョに残された出場の可能性は1つ。後半15分以降、試合のリズムが落ちる時間帯からピッチに入るというスーパーサブに徹するよりほかない。これが、アンチェロッティの言う「プロとしての義務」であるとも解釈できる。
カカの動向がロナウジーニョの来季に影響を与える
『今年に入って以降のロナウジーニョは、スタメン出場がわずかに4試合(国内リーグ3試合、UEFAカップ1試合)。これだけしか使えない選手の獲得におよそ25億円を費やし、しかも年俸約11億円とは、どれだけ費用対効果が悪いのか。ミランの戦術に順応できるか否かなどという問題以前に、クラブ側による明らかな補強戦略の失策ではないのか? だとすれば、今季終了後の放出も大いにあり得るということになる。もっとも、アンチェロッティ自身が退団濃厚と言われており、その監督にカカも付いて行くとのうわさが絶えない。となると、来季のミランはカカではなく、ロナウジーニョ中心のチーム構成になるのかもしれないが……』
主将マルディーニは今季限りの引退を表明。インザーギはいまだゴール量産を続けるが、来季には36歳になる。19歳のパトが急成長を遂げているとはいえ、まだ彼一人に前線を任せるわけにはいかない。と、幾つもの改善点が指摘されるミランは、来季には間違いなくチャンピオンズリーグ(CL)に戻ってくる(現在、首位インテルに勝ち点7差の2位)。
来季のセリエAとCL、両方の戦いを最後まで続けるには、中盤の主軸(ピルロ、セードルフ、ガットゥーゾ、アンブロジーニ)にも質と量の向上が求められる。本来ミランが最も得意とするシステム、4−3−2−1を再び3年前のレベルに戻すには、以前から獲得を熱望するエトー(またはドログバ)のようなFWが必要なのは言うまでもない。前線でタメを作れるFWが加入すれば、ロナウジーニョも今より生きてくるだろう。
5月4日、スペインの『マルカ』紙は、レアル・マドリーの今夏の補強プランとしてリストを掲載した。会長復帰が有力視されるフロレンティーノ・ペレスの下、率いる監督はベンゲルになると予想した上で、“クリスティアーノ・ロナウド、シャビ・アロンソ、ファブレガス、そしてカカ”の獲得が確定的である、と――。
無論、現時点で移籍市場の結末を知ることはできない。『マルカ』紙の件も単なる飛ばし記事のたぐいと見るべきだろう。だが、確実に言えるのはカカの市場価値が140億円にも達するということ。そして、カカを放出してこの額が手に入れば、言うまでもなくミランは大規模なチーム改造を可能にできる。残留にせよ退団にせよ、カカの動向がロナウジーニョの来季に絶大な影響を与えることもまた確かである。
<了>