ロナウジーニョは終わってしまったのか?=ミランで輝けない2つの理由

宮崎隆司

今のミランにロナウジーニョの居場所はない

年明けあたりから、ベンチを温めることが多くなったロナウジーニョ(右) 【Photo:BFP/アフロ】

「ロナウジーニョは終わってしまったのか?」と問われ、仮に即答を求められるとすれば、まだ30歳にも満たない選手の話であり、当然のごとく答えは「ノー」だ。だが、仮に今の状態が長く続き、ロナウジーニョ自身がミランで担うべき役割を正しく理解できないとすれば、答えは必然的に質問の意を肯定せざるを得なくなる。
 先の第34節カターニア戦――インザーギとカカのゴールで快勝。ロナウジーニョはベンチ入りするも出場機会は与えられず――を終えた直後、いみじくも投げかけられた同様の問いに対し、ミランのカルロ・アンチェロッティ監督は次のように答えている。
「今季前半のような形をわれわれ(首脳陣)も望んでいる」

 正確なやり取りは、まず記者が「ミランは来季もロナウジーニョをベンチに置き続けるつもりなのか?」と問うと、アンチェロッティが「あり得ない」と即答。そして以下のように続いている。

記者 「『あり得ない』では答えにならない。あれだけの選手、あれだけのサラリーを手にする選手である以上、仮に一言で片付けるのであれば、むしろ『できない』と言うべきところだと思われるが。しかし、現実には今のミランに彼の居場所はない」

アンチェロッティ 「期待の大きさを自ら知る以上、彼にはプロとしてそれに応える義務がある。大切なのはチームのバランス。そもそも、バランスを崩すようではそれを戦術とは呼ばない」

記者 「今季の後半、ロナウジーニョはほとんどスタメン出場していないが、つまりそれは彼がバランスを崩す存在であるということの証しなのか? だとすれば、来季以降のミラン残留も確実とは言えなくなるということか? もっとも、監督自身の残留も定かではないと報じられているが……」

アンチェロッティ 「わたしは間違いなく来季もミランの監督であり、ロナウジーニョも間違いなくミランの選手であり続ける」

継続性の欠如、これでは計算できない

 上記やり取りの中で記者が指摘している通り、現在のロナウジーニョはミランで定位置を確保していない。今季開幕から12月まで、ボッリエッロやインザーギといったFW陣が故障で戦列を離れた状況では出場の機会を保証され、確かに幾つかの試合を決めるプレーを披露、またはゴールを決めている。だが、当時から指摘されていたのは継続性の欠如だ。好不調の波が激しく、1試合の中でも後半になると極端に運動量を落としてしまう。「これでは計算できない」との声がチーム内部から上がったのも当然というわけだ。

 上記アンチェロッティのコメントにある「期待の大きさを自ら知る以上〜」のくだりを厳しい言い方で意訳すれば、『もっとマジメにトレーニングしてコンディションを高め、ほかの選手と同様に走ってくれないと使えない。今のままではチームのバランスを崩すだけの存在でしかない。そもそも、イタリアではバランスを崩すようでは選手とは呼べない』といったところか。

 ロナウジーニョは、ウインターブレーク期間中のドバイキャンプで懸命に調整し、体力測定である程度の数値を出すと、それ以降は継続したトレーニングを怠ったと言われている。35歳にしてゴールを量産し、その要因を徹底した自己管理とするインザーギとは両極端。プロ意識の差は歴然である。

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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