補欠から主役となった水鳥寿思=〜世界体操競技選手権を振り返って(1)水鳥寿思〜

日本体操協会:遠藤幸一
 北京五輪の国別出場枠をかけた体操の世界選手権が1〜9日、ドイツのシュツットガルトで行われた。

 補欠選手がこれほど活躍した大会は私の記憶にない。
 もっとも称賛を越えて驚異に感じたのが今回の水鳥寿思(徳洲会体操クラブ)だ。大会直前に、鹿島丈博(セントラルスポーツ)の負傷により正選手となり、団体、個人、種目別(ゆか、鉄棒)において4つのメダル(銀1、銅3)を獲得する活躍をみせた水鳥。そのどこが驚異なのか振り返ってみたい。

異例のスケジュールを克服

 第1に日程。バンコクで行われたユニバーシアード(8月9〜12日)に出場し、帰国まもなく8月18日には世界選手権の事前合宿(ドイツ)に出発。9月1日からの本大会を迎える。つまり、わずか1カ月の間に2つの世界大会を経験するという離れ業を成し遂げたのである。通常、国内大会でも1カ月内に2つの大会を企画することはない。それは、1試合するだけで選手は心身ともに大きく消耗するからだ。なお、ユニバーシアードの個人総合決勝に進出した選手の中で世界選手権に出場した選手は水鳥を含めてわずかに7人。まずはこのタフな日程を克服した点が驚異に値する。

出場選手中最多の演技数

 第2に演技数。水鳥の世界選手権での演技数は、団体予選−団体決勝−個人総合の3日間で17にのぼる。これは、梁泰栄(韓国)の18演技に次ぐ2番目の数字。そして種目別決勝を含めると、冨田洋之(セントラルスポーツ)、楊威(中国)と同じく大会最多の19演技。水鳥は世界選手権でもっとも演技を見せた選手の一人なのである。それでいて冨田はメダル獲得数1、楊威はメダル獲得数2なので、メダル獲得数4の水鳥は、世界一タフなオールラウンダーとしての称号を与えてもいいのではないか。いずれにしても10点満点制廃止で青天井になったルールの中で、これだけの演技数をこなして結果を残した点が驚異に値する。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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