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G大阪、世界でも貫く“超攻撃”
FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2008

マンUとガップリ四つでやりたい

クラブワールドカップの記者会見後、ガッツポーズで意気込みを見せるG大阪の(左から)西野監督、遠藤、安田理、ルーカス=大阪府吹田市
クラブワールドカップの記者会見後、ガッツポーズで意気込みを見せるG大阪の(左から)西野監督、遠藤、安田理、ルーカス=大阪府吹田市【共同】

 理想と現実との葛藤――。クラブW杯まで半月という時間との戦いの中で、ロマンチストの要素を多分に持つ指揮官は、現実路線へとチームの舵を切る。

 11月29日の浦和戦は、数字の上では消化試合に過ぎないが、ホーム最終戦で、しかも相手はACLのリベンジに燃える宿敵・浦和。迎え撃つG大阪にとってモチベーション的にも最高の相手に対して、クラブW杯の「予行演習」は行われた。

 大会での二川不在を想定して、山崎雅人をワントップに据え、ルーカスが2列目に下がる4−2−3−1の布陣を敷いたG大阪は、一時、数的不利を強いられながらも遠藤の決勝ゴールで勝利をつかみ取る。


 ワイタケレ(ニュージーランド)かアデレードの勝者と対戦する14日の準々決勝で、G大阪は浦和戦の布陣を採用する可能性が濃厚だ。「何とかクラブW杯には間に合わせたい」と語る背番号10が復帰すれば、ACL決勝のようにルーカスのワントップが、二川不在の場合は山崎をワントップに据えた形がクラブW杯仕様となる。


 4−2−3−1を再び採る狙いは大きく二つ。

「マンU(マンチェスター・ユナイテッド)との対戦をすでに設定されているみたいだけど、まずアデレードかワイタケレ相手に1勝することしか頭にない」と、ACL同様、現実的な目標を掲げる西野監督だが、アデレードで優勝トロフィーを手にした直後に思わずもらした「マンUとやりたいね。ガップリ四つで」の言葉が本音ではある。

 一勝=マンUへの挑戦権獲得――。是が非でも初戦を突破するためにも、その機能性を実証済みの布陣で確実に勝利をもぎ取りたいところだろう。


 もう一つの狙いが、ACLでも固執した浦和とは違うスタイルへのこだわりだ。ACL優勝が決まる前、西野監督は欧州王者と対戦する可能性についてこう話していた。「(守備的な)レッズのスタイルならある程度対抗できるのかもしれないけど、うちが真っ向から行ったら多分、木っ端みじんになる。でもそれで違う策があるかといえば、ないから(笑)。もし対戦するとすればガンバのスタイルを出さざるを得ない」


 前線に本来の力がない以上、今のチームが打ち出すのはやはり遠藤を中心とした「中盤力」にほかならない。「自分たちのサッカーに自信を持って挑みたい」(遠藤)。中盤に厚みを持たせて、守備陣の負担を軽減する上でも欠かせないボール保持率で世界に挑戦するという訳だ。


 鍵となるのはやはり新境地を開拓中の背番号7だ。「もう一度自分たちの力を証明したかった」と振り返った浦和戦では、クロスに飛び込んで貴重な決勝点をたたき出すなど、「ストライカー」としての新たな顔を垣間見せた。終了間際に加地亮が送り込んだクロスの落下地点にはルーカスが走り込んでいたが、その背後にいた遠藤は、ポルトガル語で鋭く「デイシャ(触るな)」。ルーカス自身も「ヤット(遠藤)にポルトガル語で指示されたことがないから驚いた」。シドニー五輪やW杯ドイツ大会で世界の大舞台に立てなかった悔しさが、ACLでも見せた貪欲なまでの決定力の高さにつながっているのは間違いない。

マイアミの奇跡の再現を狙う

 世界への思いを強く持つのは指揮官も同様だ。12年前、ジャージ姿で28年ぶりに日本を五輪の大舞台に導いた青年監督は、スーツ姿がこの上なく似合うアジア最優秀監督へと変貌(へんぼう)。クラブW杯に出場する初の日本人監督として2度目の世界に挑む。


「アトランタの時も雲の上のような監督と試合ができた。ああいう瞬間をまた感じてくると思う」。12年前、圧倒的な力量の差を持つブラジル五輪代表を指揮した名将ザガロを前に、畏怖の念を感じながらも一歩も引かない戦いぶりで「マイアミの奇跡」を演出して見せた西野監督。仮にマンUとの対戦が決まれば、やはりチームの総合力では比較にならない上に、率いる将も老獪(ろうかい)なアレックス・ファーガソンと、アトランタ五輪当時と似た条件が整うことになる。


「15分でもしっかり戦えれば」、「次元が違う」。口から出るのはレベルの差を自覚する言葉ばかりだが、西野監督の目に全く恐れの念はない。12年前、フル代表に近い顔ぶれがそろったブラジルを破るという「ミッション・インポッシブル」を遂行した強運を持つ指揮官だけに、まずは準々決勝に勝利して、12月18日の横浜国際総合競技場でその続編を期待したい。


<了>

下薗昌記

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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