デムーロ殊勲! 伏兵スクリーンヒーローが3強撃破!!=ジャパンカップ

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デムーロの好騎乗に導かれ、伏兵スクリーンヒーローが鮮やかにJC制覇 【スポーツナビ】

 デムーロやった殊勲の手綱! 3世代ダービー馬撃破で波乱のヒーローだ!! 日本と世界のトップホースが激突する日本最大の国際レース、第28回GIジャパンカップが30日に東京競馬場2400メートル芝で開催され、ミルコ・デムーロ騎乗の9番人気スクリーンヒーロー(牡4=鹿戸雄厩舎)が優勝。注目を集めた3世代ダービー馬をまとめて撃破し、GI初挑戦にしてうれしいビッグタイトルを手に入れた。良馬場の勝ちタイムは2分25秒5。デムーロ、同馬を管理する鹿戸雄一調教師ともにジャパンカップは初制覇となる。

 一方、半馬身差の2着には直線外から追い込んだ1番人気の08年ダービー馬ディープスカイ(牡3=昆厩舎)、さらに4分の3馬身差の3着には天皇賞・秋からGI連勝を狙った07年ダービー馬ウオッカ(牝4=角居調教師)。凱旋門賞以来となる06年ダービー馬のメイショウサムソン(牡5=高橋成厩舎)は6着に敗れた。

冴え渡るミルコ・マジック! 9番人気馬をVロードに導く

イタリアを代表する名手デムーロ、表彰式では祝福のキス 【スポーツナビ】

 今年のジャパンカップは昨年と同じく、日本馬が掲示板に乗る上位5頭を独占。しかし、先頭でゴールを駆け抜けたのはイタリア人ジョッキーのミルコ・デムーロ。ウオッカでもメイショウサムソンでも、そして1番人気のディープスカイでもなく、9番人気の伏兵スクリーンヒーローをVへと導く殊勲の手綱だった。
 「グレードレースを勝つのはいつだってうれしいけど、ジャパンカップは初めてだし、日本ダービーを勝った時とはまた違ったうれしさがある。一昨年はアンラッキーにも落馬して鎖骨を折ってしまって出られなかったけど、今年は来日して1カ月でこんな大きなレースを勝てて、最高のスタートだよ!」

 母国イタリアでは1997年〜2000年に4年連続のリーディングを獲得し、伊ダービーなど数多くのビッグタイトルを制覇。日本には1999年の初来日以来、毎年のように短期免許で来日し、その確かな騎乗技術から日本の競馬ファンの間ではおなじみの人気者だ。
 2003年にはネオユニヴァースでクラシック三冠のGI皐月賞、そして外国人ジョッキー初となるGI日本ダービー制覇までもやってのけた。翌04年には皐月賞で断然人気のコスモバルクを撃破し、本格化前のダイワメジャーに初のビッグタイトルをプレゼント。そして今年のJCでも、秘めた素質馬スクリーンヒーローにジャパンカップのGIタイトルをもたらした。

早くから素質評価も鹿戸雄師「ビックリしました」

今年3月に開業したばかりの鹿戸雄調教師(左から2人目)も驚きの素質開花 【スポーツナビ】

 「予想より早かった……と言ったら、馬に失礼だけど(笑)、来年の春あたりには大きなところを狙える馬だと思ったいましたが、ビックリしましたね(笑)」
 こう目を丸くしてJC勝利の喜びに浸ったのは鹿戸雄調教師だ。今年3月の厩舎開業以来、約8カ月にして早くもGI初制覇。喜びと同時に驚きも隠せない新人トレーナーだったが、スクリーンヒーローの素質そのものは早くから期待していたという。
 「もともと素質のある馬だなと見ていて、骨折明け後は夏競馬から使い始めたんですが、レースで乗るジョッキーみんなが『先々走る馬』と言ってくれた。札幌では典ちゃん(横山典弘)が『この馬は上に行くよ』って言ってくれたんです。それで、先々は走ってくれる馬と期待しながらレースを使っていたんです」

 ただ、期待はしていながらもまだ完全本格化前、そして初の超一線級が相手だけに、「果たしてどこまで来れるのか」「ダービー馬3頭の近くまで来てくれるんじゃないか」と期待と不安で半信半疑。しかし、デムーロの手に導かれたスクリーンヒーローは大舞台でその素質を余すところなく開花させたのだ。

デムーロ渾身追い、真っ向勝負で3強撃破

ウイニングランでガッツポーズ 【スポーツナビ】

 「レース前の打ち合わせで蛯名さんの馬(マツリダゴッホ)がいい状態みたいだしポジション取りもうまい馬だから、その後ろをマークして行こうと思いました。予定通りだったし、懸念していた外枠からのスタートも、スローペースだったからいい位置を取ることができた。そのままいいフィニッシュの形を迎えられましたね」

 レースを振り返ったデムーロ。超スローペースの中、マツリダゴッホの後ろ5番手でスムースに折り合い、ポジショニングも完ぺき。最後の直線もその手綱さばきと追いの技術で、スクリーンヒーローの脚を爆発させると、ゴール100メートルを切ってマツリダゴッホ、ウオッカを差し切る。これで勝負は終わりではなく、外からディープスカイが迫った時は「Oh、My God! なんとかもってくれ!」とさすがに肝を冷やしたが、鞍上のゲキに応えた相棒はグンと踏ん張って大金星のゴールへと飛び込んだ。
 「この馬は調教でも他馬と併せる形になるとファイトを燃やす馬。そういう意味でも競走馬としていいモノを持っていると感じていたし、この馬の能力を信頼していた。ウオッカとかダービー馬3頭が相手でもイケルと思っていたんだ」

 小細工など使わず、先行5番手ポジションから直線ド真ん中を突いての真っ向勝負。ウオッカを差し、ディープスカイの追撃を完封。一介の伏兵馬が見せた一世一代の大駆けではない。確かな素質を持ったスクリーンヒーローの潜在能力と、それをすべて出し切らせたデムーロの好騎乗が掛け合わされて生まれた、この日の大勝利だった。

“牝馬の時代”に牡馬ニューヒーロー誕生だ

待望の牡馬ニューヒーロー誕生だ 【スポーツナビ】

 「今後は馬の状態を見て、オーナーと相談してからですね。馬の状態がこのままいい状態で来れば有馬記念も、と思いますが、まずはオーナーと相談してです」と、鹿戸雄調教師は次走についてコメント。現時点では未定だが、いいコンディションを維持したまま年末を迎えれば、12月28日の有馬記念(中山競馬場)に向かう公算は高い。

 そして、「この馬で海外にも行ってみたいですね」と新進気鋭トレーナーはさらに大きな夢をスクリーンヒーローとともに描く。鹿戸雄調教師の話し振りから、まだまだ底を見せない奥深さを感じさせるグラスワンダー産駒の4歳牡馬。銀幕ではなく、この日東京競馬場ターフビジョンに映しだされたのは、牝馬の時代と言われている日本競馬界に待望の牡馬ニューヒーローが誕生したシーンだった。

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