直線盛り返してマツリダゴッホを競り落とす３着が、ウオッカのせめてもの意地。だが、天皇賞・秋につづくトップでのゴールは遠かった。レース後の岩田は何度も首をひねりながら振り返った。
　「結果的にスローペースだったのがね。前半はちょっとムキになって走っていたけど、あそこで馬に逆らって乗るのもどうかと思って、うーん……」
　１０００メートルの通過が６１秒８のスローペース。特に１コーナーに入るまでのウオッカは行きたがる素振りを見せていた。それでも向こう正面に入ってからは折り合いもつき、最終４コーナーでインの先行４番手は岩田騎乗で圧勝した安田記念を思い出させる。岩田もそのイメージで追い出しにかかったが、この日は末脚が爆発しきらなかった。
　「もっと弾けると思っていたんですけど……。安田記念と比べても調子はいいと感じていましたから。それでもあの競馬でよく粘っているんですが……」

　自慢の末脚が引き出しきれなかった理由。それはやはり、２４００メートルという距離にあるのかもしれない。
　「この距離になると、馬任せに行かせるのは良くないのかも」と岩田。一方、管理する角居調教師も「この距離はやっぱり長いのかなという気がしないでもない」とコメントしている。１着からは０秒２差。大きくは負けてはいないが、距離の壁を痛感させられる敗戦だったか。
　今後について角居調教師は「有馬記念含めて、オーナーと相談してからになりますね」としている。

　またしても届かなかった。天皇賞・秋でウオッカ、ダイワスカーレットの後塵を拝した悔しい敗戦。それを糧にまた大きく成長し、今度こその日本最強タイトル奪取へ準備は万端だった。ファンもそんな若き最強王者誕生を期待して、１番人気の支持。レースでも、四位＆ディープスカイは中団後ろの位置から折り合いはスムース。４コーナーでグンと加速してポジションアップすると、直線は外へ進路を取り自慢の末脚を発揮する。上がり３ハロンは最速の３３秒８。快勝の日本ダービーを彷彿とさせるレースぶりで、日本最強の座は目前と思われた。
　「引っ掛かることなくいい感じだったし、リズムよく走れていた。４コーナーも十分な手応えで回って来れたんだけどね。正直、ミルコの馬（スクリーンヒーロー）はかわせると思っていた。だから、内に残っている馬（ウオッカ、マツリダゴッホ）だけだな、って思っていたんだけど……。悔しいね」
　冷静な口調でレースを振り返りながらも、その表情には悔しさをにじませた四位。自信を持って乗ろうと思った、力は出し切ったとも語り、その通りの強い競馬を見せたが、「それでも前に１頭いた。負けたのは現実だから」とやり場のない無念さを口にする。

　天皇賞・秋、ジャパンカップと古馬トップと互角の実力を発揮し、すでに最強馬クラスであることを証明した秋２戦。しかし、自ら語ったように現実的にはどちらも勝てなかったことに、四位は“悔しい”と何度も繰り返して肩を落とした。
　「あそこまで行ったら勝たないとね。ファンの方も１番人気で応援してくれていたし、責任を果たせなくて悔しいですね」
　当初の予定どおりなら、ディープスカイの今季はこのジャパンカップが最終戦。有馬記念には向かわずに、海外遠征のプランもある来年に向けて充電することになる。
　「流れが遅くなるのは分かっていたし、遅かったからどうこうと言い訳したくない。スローになっても勝てるようにならないとね。来年のテーマだと思います。また、今度はいいところを見せられるように頑張ります」
　手応えと悔しさとが大きく入り混じった３歳秋シーズン。残った課題をすべて克服し、真の飛翔を見せるその時まで、ディープスカイは羽を休める。

　昨年の宝塚記念以来１年５カ月ぶりのコンビ復活で挑んだメイショウサムソン＆石橋守だったが、復活勝利とはならなかった。
　レースはウオッカよりも後ろのポジションで進め、最後の直線も枠なりからそのまま最内へ。ジワジワと伸びてはいるものの、最後までＶ争いには絡めなかった。
　「ウオッカのポジションがほしかったけど、向こうはサーっと馬なりで行ってしまったから、ひとつ後ろに。以前乗っていた時よりもシャープになっているから、ここからでも伸びてくるかなと思った。４コーナーの手応えもあったんだけど」
　だが、スローペースからの瞬発力勝負ではやはり、根性が持ち前のメイショウサムソンには分が悪い。そこは石橋守も「外に出して併せる形になって、そこから叩き合いになっていれば」と唇をかんだ。そして、ウオッカ、ディープスカイの後輩ダービー馬２頭に先着を許した結果に、「若いダービー馬に負けたのが、悔しいね」と、ポツリ口にした。

　だが、久々のコンビ復活で「乗せてもらって感謝しています」と前を向く石橋。高橋成調教師によれば、今後は有馬記念へ向かう予定だという。完全復活は年末有馬記念に持ち越しとなった。