中村、タイトルに一歩届かず=ジャパンオープン

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ジャパンOPテニス最終日 女子シングルス決勝で逆転負けした中村藍子=有明テニスの森公園 【共同】

 快挙まであと一歩だった。テニスAIGジャパンオープンは8日に最終日を迎え、女子シングルス決勝は第1シードのマリオン・バルトリ(フランス)が、中村藍子(ニッケ)に2−6、6−2、6−2の逆転で勝利し、初優勝を飾った。中村は第1セットから果敢に攻撃の姿勢を見せたが、第2セットはいきなり連続のブレークを許す厳しい展開を強いられ、その後も流れを取り返すことができなかった。中村は今大会で初めてWTA(女子テニス協会)ツアーの4強に進出。準決勝を勝利して初優勝の快挙に迫ったが、惜しくも手が届かなかった。

狂いが生じた自然体

 試合の序盤、日本のファンの期待は大きく膨らんだ。世界ランク22位(10月2日付)のバルトリに「動きが非常に速く、プレッシャーをかけてきた。私はボールに触ることさえできない状況に追い込まれた」と言わしめた攻撃で連続ブレークに成功。第6ゲームでも一気にセットポイントを迎える勢いはたくましく、コートに影がくっきりと浮かび上がるほどの陽光を受けた赤のウェアも、華やかなその色以上に映えていた。しかし、このゲームをデュースの末に落とすと、続くサービスゲームもブレークを許してしまった。数字の上では6−2と文句のない成績で、中村自身も“無心でプレーができてパーフェクトに近い内容”と振り返った第1セット。しかし、終盤には「簡単にセットを取りたいと思って、ちょっと力んだかもしれない」と話すように、“自然体”には狂いが生じ始めていた。

 そして迎えた第2セットは、バルトリの逆襲を大いに受けることになった。まず、前日同様にファーストサービスの成功率が落ちた。第1セットも51%と低かったが、第2セットには45%まで低迷。そしてラリーの駆け引きでは左右に走らされ、ショットミスを誘発させられた。特に、ウイニングショットを意識し過ぎたのか、ベースライン際に放たれるハイバウンドボールの処理を誤る場面が多かった。また、バルトリが「私はフィジカルのトレーニングを積んでいるし、メンタルには自信がある。第3セットはスタミナの面で私が勝っていたと思う」と話すのに対し、中村はサポーターが巻かれた右足の太ももが悲鳴を上げていた。「ウォーミングアップをしている時に右足に痛みがあって、試合の序盤は大丈夫だったけど、第2セット辺りから走らされて踏ん張れなくなってしまった。影響があったかもしれない。そういう状況でも何とかしなければならないけど、対応ができず経験不足だと思った」――手繰り寄せた勝機の綱は、みるみるうちに相手に引き戻されていった。第3セットの終盤には、再び力強いショットでバルトリに打ち勝つ場面も見られたが「少し調子が戻ってきたけど、ちょっと遅かった」(中村)。最後は、中村の放ったバックハンドショットが「アウト」とコールされて試合は終わりを告げた。

もう一段を上がる確かな足がかり

 これまでWTAツアーではベスト8が最高だった中村は、今大会で新たに二つの階段を上った。降雨による大会スケジュールの乱れで1日2試合をクリアした日もあった。いつか再び進むであろう決勝の舞台では、たとえハードな状況の下で相手に試合の流れを奪われても、取り返さなくてはならない。そのためには、バルトリに指摘されたスタミナ面などの強化が必要だ。中村は今大会を振り返り「違うプレースタイルの選手と戦って勝ち抜くことの難しさ、1週間を勝ち抜く体力の必要性をあらためて感じた。体力面で言えば、グランドスラムでは2週間あるし、もっと磨く必要がある」と、今後の課題を挙げた。今後は、足の状態を考慮しながらではあるが、PTTバンコクオープン(10月9日〜)や中国で行われるITF主催大会などを挟んで全日本選手権に臨み、12月にはアジア大会に出場する見込みだ。

 前日、準決勝後の会見で「明日は中村藍子というプレーヤーを見てほしい」と語った中村。結果としては負けたものの「気持ちよくプレーできた。課題はあるけれど、現時点でのベストは尽くせた。全米オープンの前には精神的に落ち込んだ時もあったけど、ファイナリストになることができて得た自信は大きい。来年にも生きると思う」と、もう一段上へと目を向けた。杉山愛(ワコール)、森上亜希子(ミキハウス)に続く日本女子テニス界の第3勢力は、飛躍の真っただ中にいる。
 初優勝の知らせはお預けとなった。しかし、今大会は次なるステップへの足掛かりを確かにつかんだ1日だったと、振り返る日が来るはずだ。

<了>
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