【マイルCS】「絶対に結果を残したい」抜擢に応えた団野騎手の気迫騎乗、ソウルラッシュがついに初GI獲り

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マイルチャンピオンシップはソウルラッシュが7度目のGI挑戦でついに初戴冠、殊勲の団野騎手は歓喜のガッツポーズ 【photo by Shuhei Okada】

 秋のマイル王決定戦、第41回GIマイルチャンピオンシップが11月17日(日)に京都競馬場1600m芝で行われ、団野大成騎手騎乗の4番人気ソウルラッシュ(牡6=栗東・池江厩舎、父ルーラーシップ)が優勝。中団追走から最後の直線で力強く突き抜け、7度目のGI挑戦にして待望の初タイトルを獲得した。良馬場の勝ちタイムは1分32秒0。

 ソウルラッシュは今回の勝利で通算22戦8勝(うち海外1戦0勝)、重賞は2022年マイラーズカップ、23年京成杯オータムハンデキャップ、24年マイラーズカップに続き4勝目。団野騎手はマイルチャンピオンシップ初勝利、同馬を管理する池江泰寿調教師は17年ペルシアンナイト以来の同レース2勝目となった。

 なお、2馬身半差の2着には西村淳也騎手が騎乗した7番人気エルトンバローズ(牡4=栗東・杉山晴厩舎)、さらにクビ差の3着には松山弘平騎手騎乗の10番人気ウインマーベル(牡5=美浦・深山厩舎)が入線。1番人気に支持されたブレイディヴェーグ(牝4=美浦・宮田厩舎)は4着、英国から参戦した3番人気チャリン(牡4=英・R.ヴェリアン厩舎)は5着、連覇を狙った2番人気ナミュール(牝5=栗東・高野厩舎)は17着に敗れた。

「このレースにかける思いはすごく強かった」

富士ステークスから継続騎乗の依頼を受け「このレースにかける思いはすごく強かった」と団野騎手 【photo by Shuhei Okada】

 GIで惜敗続きだったこれまでのうっぷんを全て晴らすような、見事な勝ちっぷりだった。

「とても嬉しい。最高の気分です」

 殊勲の手綱を握った団野騎手の声も弾んだ。ゴール入線前からの派手なガッツポーズは池江調教師から釘を刺され、本人も「速過ぎました」と反省しきり。この行為で過怠金50000円の制裁を受けることにもなった。それでも、「このレースにかける思いはすごく強かったですし、継続して乗せていただいたオーナー、池江調教師に感謝したいです」と、24歳若武者の気持ちがあふれ出た気迫の騎乗でもあった。

 団野騎手、池江調教師がレース前に確認したポイントは2つだけ。1つ目はゲートを出てからある程度促していかないとポジションが後ろになってしまうこと、そして2つ目は勝負所でズブさを出してしまうこと。これはソウルラッシュのレースにおいてはいつも気を付けているポイントでもあり、3度目の騎乗となる団野騎手としても十分に心得ているもの。それだけにレースプランに迷いはなかった。

ライバルを一刀両断、豪快に突き抜けた

馬群がバラけた最後の直線、外から豪快に突き抜けた 【photo by Shuhei Okada】

 ただ、道中は「思ったほどのポジションは取れなかった」と、鞍上が理想とする位置取りではなく中団やや後方からの追走。一方で、このメンバーだとある程度ついていけないことも覚悟していたという。だから慌てることなく、相棒のリズムに合わせて運ぶことに集中できた。

「道中のリズムもすごく良かったですし、3、4コーナーのハミの取り方、進路もすごくスムーズでした。それが最後の伸びにつながったのかなと思います」

 今年のマイルチャンピオンシップには前年覇者ナミュールを筆頭に、昨年のエリザベス女王杯の勝ち馬ブレイディヴェーグ、英国からは今年の欧州マイル王者チャリンが参戦と駒が揃っていた。最終的に1番人気となったブレイディヴェーグも単勝オッズ3.7倍と支持が割れる下馬評であり、大接戦のゴール前になるのではないか――そう予想していたファンも多いだろう。しかし、そんな混戦ムードを一刀両断するように、ソウルラッシュは馬群がバラけた最後の直線を外から豪快に駆けていったのだ。

「誰も後ろから来ないでくれと思いつつも、すごく気持ち良かったですね」

 大仕事を果たした団野騎手にとって、最高のご褒美の時間となっただろう。加えて、ファストフォースで制した昨年の高松宮記念に続くGI・2勝目は、今後の騎手人生を考えれば大きなステップアップとなる1勝に違いない。春はGI前哨戦のマイラーズカップで勝利に導きながらも、本番の安田記念はジョアン・モレイラ騎手に乗り替わり。「マイラーズカップは急きょの騎乗だったので、その後はどうかなと思っていましたから」と本人は冷静に振り返っていたが、悔しくないはずがない。そして迎えたこの秋は前哨戦から本番への継続騎乗が決まり、「今回抜擢していただいてすごく嬉しかったですし、絶対に結果を残したいという気持ちを絶やすことなく、いいメンタルで今日を迎えました」。GIで人気馬に騎乗するというプレッシャーも「気持ちのいい時間だったのかなと思います」とプラスに変え、百点満点の勝利で応えてみせた。この経験はかけがえのない財産となるはずだ。

次走は香港マイル、昨年4着の雪辱を

次走は香港マイルへ、充実期に入った今なら昨年4着の雪辱を期待したい 【photo by Shuhei Okada】

 そんなジョッキーの騎乗ぶりを「安心して見ていられましたね」と振り返ったのは池江調教師。そして、団野騎手にエスコートされて先頭でGIゴールを駆け抜けるソウルラッシュの姿は待ちに待っていたものでもあった。

「種牡馬入りさせたい馬でしたので、とにかくマイルのGIを勝ちたかった。本当に感無量です」

 昨年のマイルチャンピオンシップ2着、続く香港マイルが4着、今年春の安田記念も3着と、好走するのだがあと一歩が届かない。今回、ついにその「あと一歩」を後押ししてくれたのが馬場だったのではないかと、調教師は分析する。

「昨年と比べて何が良くなったということはないのですが、上手く噛み合ったのかな。雨は結局降りませんでしたが、今日の京都はパンパンではなくて力の要る馬場になっていたので、それがプラスになったかなと思います」

 6歳での初栄冠となったが、「春もすごく良い状態だと思ったので、この年になって充実しているのだと思います」と団野騎手も太鼓判を押しているように、今が絶頂期とも思えるソウルラッシュ。次なるターゲットは、昨年に続き12月の香港マイルと池江調教師は明言した。

「この後すぐに検疫に入る予定です。香港も2回目なので特に心配はしていないですね」

 香港でもコンビ継続となるかどうかはまだ分からない。でも、願わくは今回と同じように団野騎手&ソウルラッシュが香港シャティンの直線も豪快に突き抜けていく姿を見たいものだ。(取材・文:森永淳洋)
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