役者ぞろいの4強で、光るクライシュテルスの安定感=全豪オープン

武田薫

シャラポワ、ハラハラの4強入り 波に乗るクライシュテルス

個性派ぞろいの4強。なかでもひときわ光ったプレーを見せるクライシュテルス 【Getty Images/AFLO】

 女子の4強がそろい、個性派同士の面白い組み合わせになった。
 全豪オープン準々決勝が行われた24日、まず第1シードのマリア・シャラポワ(ロシア)が同じロシアの19歳、アンナ・チャクベタゼ(ロシア)と対戦。チャクベタゼは長身のシャラポワのひざ元に狙いをしぼって粘り強くラリー戦に持ち込んだ。その作戦はもう少しで成功しそうだったが、最後はシャラポワの強打と集中力につぶされ、7−6、7−5の順当な結果に落ち着いた。シャラポワの気力をたたえるべきだろうが、スタンド最前列に陣取って声援を送る父ユーリ・コーチが「警告」を取られるほど力が入り、ハラハラさせる内容だった。テニスではコートサイドからの指示は禁じられている。

ハラハラの展開ながら、3年連続で準決勝進出を決めたシャラポワ 【Getty Images/AFLO】

 注目された第2試合は、キム・クライシュテルス(ベルギー)がマルチナ・ヒンギス(スイス)に3−6、6−4、6−3で逆転勝ちを収めた。
 引退から復活して2年目のヒンギスは、3回戦で中村藍子(ニッケ)、4回戦で中国の李娜を破ったように、この日も打ち合いに力負けせず、一時は多彩なショットで主導権をつかみかけた。しかし、前週のシドニーでも優勝して波に乗るクライシュテルスには劣勢をひっくり返すだけのショットがあった。クライシュテルスは、第5ゲームでボレー、ロブなど技の広さを見せ、第7ゲームは持ち前のフォアをさく裂させ連続でサービスブレーク。第3セットは第2ゲームを先にブレークされながらも、第3ゲームの相手のサービスゲームをラブゲームでブレークバック。粘るヒンギスを気迫で退けた。

セリーナ復活なるか 17歳、バイディソバの活躍は?

米国勢で一人気を吐くセリーナ 【Getty Images/AFLO】

 セリーナ・ウィリアムズは、2年前からの故障がたたり、かつての栄光から遠い世界ランク81位、今回はノーシードからの挑戦だった。姉ビーナスも故障が癒えず、リンゼイ・ダベンポートはおめでた……米国勢で一人気を吐いて勝ち上がったが、どうにも重そうな体の動きが気になるところだ。準決勝の相手は17歳の成長株ニコル・バイディソバ(チェコ)。準決勝の大舞台は昨年の全仏で経験済みで(ロシアのスベトラーナ・クズネツォワに7−5、6−7、2−6で敗れる)、2年前のジャパンオープンで優勝しているから、日本でも覚えているファンは多いだろう。

安定感欠くシャラポワvs.充実のクライシュテルス

 さて、準決勝での組み合わせは、シャラポワvs.クライシュテルス、S・ウィリアムズvs.バイディソバ。
 なかでも事実上の決勝とまで言われているのが、シャラポワとクライシュテルスの激突。シャラポワには、今大会が今季初戦のせいか、もう一つ安心感がない。一方のクライシュテルスは大会前、今年いっぱいでツアーを離れて新しい人生を歩む計画を明らかにし、気持ちの上ではキムのほうに充実感を感じる。シャラポワは昨年まで4連敗していたクライシュテルスに、8月のサンディエゴ、年末のWTA(女子テニス協会)選手権で連勝した。すでに、大会後に世界ランク1位への返り咲きも決まっており、この準決勝はどうしても負けられない。女王らしい、うなり声いっぱいのプレーが期待できるはずだ。

<了>
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著者プロフィール

宮城県仙台市出身。男性。巨人系スポーツ紙の運動部、整理部を経て、1985年からフリーの立場で野球、マラソン、テニスを中心に活動。新聞メディアや競技団体を批判する辛口ライターとして知られながら、この頃は甘くなったとの声も。テニスは85年のフレンチオープンから4大大会を取材。いっさいのスポーツに手を出さなかったが、最近、ゴルフを開始。フライフィッシングはプロ級を自認する

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