五輪予選へ代表が始動 佐古ら参加=アジア選手権第1次強化合宿

鈴木栄一

バスケットボール男子日本代表始動の会見に臨んだ佐古(中央)と竹内兄弟 【鈴木栄一】

 バスケットボールの男子日本代表候補が19日、東京・国立スポーツ科学センターで北京五輪の予選を兼ねたアジア選手権(7月28日〜8月5日、徳島)へ向けての、第1次強化合宿をスタートさせた。アジア選手権で得られる五輪出場枠は、開催国・中国を除く最高位のチームに与えられるわずか一つのみ。ここで出場枠を逃した場合は、12チームで3枠を争う世界予選(来年7月開催、アジアの出場枠は2)での五輪切符獲得を目指すことになる。しかし世界予選には、欧州予選の3位から6位チーム、米国大陸予選の3位から5位チームと強豪国が参加するため、日本にとってはアジア選手権での五輪出場枠獲得が、五輪出場への最大のチャンスとなる。

中国以外は、横一線

 鈴木貴美一ヘッドコーチ(以下、HC)は、「(昨年12月のアジア大会では)中国は頭一つ抜けているが、ほかのチームはほとんど差がないと感じた」と他チームの印象を話した。日本の強化ポイントについては、体格が大きい中近東のチームと戦う事を視野に、「JBL(スーパーリーグ)では主に二人の外国人がゴール下を守っており、(日本人選手は)リバウンドに行くという意識が薄い。対戦相手のサイズ(体格)は、欧米と変わらないくらい大きい。リバウンドをどうやって取っていくか、細かい部分から詰めていかなければいけない」と、まずはリバウンド対応の改善を挙げた。

五十嵐圭ら世界選手権組の復帰

代表に復帰した五十嵐 【鈴木栄一】

 今回の代表メンバーには、世界選手権組から3人が復帰。中でも注目はパブリセビッチ下の日本代表では中心的存在だったポイントガード(以下PG)の五十嵐圭(日立)だ。
 「アジア大会で(代表から)外れたことは、全然気にしていなかったといえばうそになる」と当時の心境を語った五十嵐は、「スポーツ選手にとってオリンピックに出ることは目標ですが、まずはメンバーに残ることを考えています。自分の持ち味であるスピードを生かし、HCのバスケットを早く理解したい」と意気込んだ。鈴木HCは五十嵐を招集した理由について、「彼もまだ若くて発展途上の選手。アジア大会の時は、大会まで(合宿期間が)1週間と時間がなく、自分のバスケットボールを教え込む余裕がなかった」と明かし、今回は五十嵐に加え川村卓也(オーエスジー)、山田大治(トヨタ自動車)と、「JBLでしっかりと結果を残した」(鈴木HC)3人の世界選手権代表もメンバーに復帰させた。

 メンバーの中で監督のバスケットを最も理解しているのはPG佐古賢一(アイシン)だが、36歳の彼に1試合の大半を任せることは非現実的。鈴木HCも「PGを3人は選びたい。一人のPGに30分以上を任せることはない」という考えを示しているだけに、五十嵐が再び代表チームの主力としてコートに戻ってくるチャンスは十分にある。リバウンドからの速攻が攻撃の鍵となる日本にとって、日本人では傑出したクイックネスを誇る五十嵐が、チームのバスケットをしっかりと理解すれば大きな戦力となる。

鈴木体制での変化

 チーム方針として昨年のジェリコ・パブリセビッチ体制と、今回の鈴木体制で大きく変わったところは、若手、ベテランと世代によって練習メニューを分ける事だ。パブリセビッチ体制での代表チームは、若手、ベテラン問わずすべての選手たちが同じメニューをこなしていた。しかし鈴木体制では、若手にはフィジカル強化の練習を課し、体をどんどん追い込んでいく。若手だけの合宿開催も検討しているようだ。その一方、ベテラン勢には適度に休養を取らせるといった柔軟な対応をとっていく。
 また今回は、大会までの週間スケジュールを4勤3休として立てているが、これはあくまで代表チームとして全体で練習する日程のこと。3休の間は、「選手たちは練習熱心なので、こちらから言わなくても、個人での練習や各自の所属チームの練習に参加するでしょう」(鈴木HC)と、各自でトレーニングに励んでもらう方針だ。
 さらに4勤3休を導入した背景として、けが人を防ぐためというのが最も大きな理由として挙げられる。今回出場すれば、4度目の五輪予選となる36歳のベテラン佐古賢一(アイシン)も、「一番大事なことは、ベストな状態で大会に挑むこと。大会直前にけが人という誤算が出ると、大きくチームの歯車が狂ってしまう」と、コンディション調整の重要性を語っている。

ポイントは、中国以外のチームからの勝利

 3カ月後の五輪予選(アジア選手権)では、アジア大会優勝の中国に勝つのはかなり厳しいことだが、それ以外のチームには勝つチャンスが十分にある、というのがチーム共通の認識だろう。しかし、現実として日本は昨年12月のアジア大会6位だけでなく、2002年の前回大会も5位、アジアの主要大会でトップ3に入ったのは1997年アジア選手権の2位が最後だ。7月の五輪予選(アジア選手権)で求められるのは、『中国以外で1位になる』という結果のみ、それ以下の結果なら惜敗も大敗も全く同じだ。ここ10年間、跳ね返され続けたアジアの壁を今度こそ突破してもらいたい。

<了>
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著者プロフィール

1977年、山梨県生まれ。アメリカ・オレゴン大学ジャーナリズム学部在学中に「NBA新世紀」(ベースボールマガジン社)でライター活動を開始し、現在に到る。毎年、秋から冬にかけて母校オレゴン・ダックスの成績に一喜一憂している。

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