バレーボール日本代表・男子コメント=W杯ブラジル戦

田中夕子
 上位3チームに北京五輪出場権が与えられるバレーボールのワールドカップ男子大会最終日が2日、東京体育館などで行われた。すでに今大会での五輪出場が消えている日本は、ブラジルに1−3で敗れ、通算成績を3勝8敗の9位で大会を終えた。

 第4セット、日本は6連続得点で7−2とリードしていたが、日本の先発申請メンバーと実際の出場メンバーの違いが発覚し、それまでの得点は無効に。さらに攻撃権の移動でブラジルに1点が加わり、0−3から試合が再開するというアクシデントがあった。

 以下は試合後の、植田辰哉監督と選手のコメント。

アクシデントの後、勢いを取り戻すべくスパイクをたたき込んだ石島 【坂本清】

■石島雄介「東京3連戦でのいい形をプラスアルファとしていけるように」
 1セット取って、2〜4セットが取れなかったのは実力だった。自分の実力のなさが出てしまった。あと半年でそれを埋めるためにしっかりやっていきたいと思う。
 全日本から離れてVリーグでも、常に「オリンピック」ということを自分の念頭に置いてトレーニングしていきたいし、リーグが終わってまた全日本で集まったときに1から出直すのではなく、東京3連戦でのいい形をプラスアルファとしていけるよう、オリンピック予選に向かって頑張っていきたい。

■荻野正二「いいチームではなく、勝つチームをつくりたい」
 試合の最後まで、1年間やってきたものを頑張ろうと言い合い、それが1セット目から出ていた。結果を残したかったが、終わってしまったものは仕方がない。選手たちはよくやってくれたと思う。
 勝てる試合を落としたことや、チームのために何かできたのではないかということに対して、精神的にストレスもたまり、疲れたので休みたい気持ちもあるがそういうわけにはいかない。この歳でいい経験をさせてもらったので、良かったと思う。
 この3年間で伝えるべきことは伝えた。でも、メダルを狙うと言ってきてそれがかなわなかったことは残念。最低でもベスト5、6には入りたかった。いいチームではなく、勝つチームをつくりたい。
 最後に日本の意地を見せられたと思う。清水など若い選手がいい経験ができたと思う。3勝8敗という結果で、「3勝しかできない」という力不足を実感している。みんなチームに帰るが、経験したことを今後につなげていきたい。

■山本隆弘「どういう状況で出てもできる準備をしなければ」
 1セットは取ることができたが、2セット目からブラジルが日本の攻撃に対応してきたときに、その上にいけなかった。日本チームの意地は出せたと思う。今大会に関しては、納得できる大会ではなかったし、前半はチームに貢献することができなかった。コンディショニングに関して考えなければならないし、どういう状況で出てもできる準備をしなければならないと思った。
 5月のOQT(世界最終予選兼アジア予選)に向けて個々が準備しないと。時間がないので個々がレベルアップして、すべきことに取り組まなければならないと思う。

試合後に顔を覆った越川だが、得るものも多い大会となった 【坂本清】

■越川優「一番チームとして戦えていた試合」
 サーブに関しては1セット目にミスも出たが、それからうまく修正できたので、後半は迷いなく打つことができた。4セット目は、日本のミスでもある。それ(申請メンバーと出場メンバーの照会)を気にしなかったのは審判側のミスだと思うが、結果は結果。あの場面からでもいい場面を出せたと思うし、ああいうことがあってもいい試合ができる力は持っていると思う。全日本は一度終わるが、「終わり」ではなくて、今回出た課題を修正して、リーグが終わってまた集まったときに、個人がレベルアップした状態で集合して一つ一つ作っていくことが大切だと思う。
 4セット目のサーブの場面は、自分の調子はすごく良かったし、2、3セット目くらいからサーブのリズムが自分の中でできていた。迷いなく、しっかりと打てた。あのセットを取ることはできたと思うし、今回のワールドカップ中でも一番チームとして戦えていたと思う。課題も見えたし、力も出し切れた。すごく充実感のある大会。自信を持てた部分は、サーブに関しても、攻撃面に関しても、個人的にというよりチームのコンビネーションやサイドへのコンビに自信がついた。
 世界一のブラジルからセットを取れる力はついてきているのだと思う。相手が2セット目以降に対応してきたことに対して、取りきれない弱さがあるのも事実であり、3勝しかできないのが現状だと思う。それぞれ各チームに戻るが、来年5月の最終予選までにレベルアップするために、今回の課題を個々が意識していくことが大事。リーグが終わってナショナルチームとして集合したときに、個々がレベルアップした集合体になれれば、OQTでは結果がついてくると思う。充実した、大きな大会だった。

スパイクにブロックに活躍した山村(12) 【坂本清】

■山村宏太「攻める気持ちを忘れずに戦えた」
 仕方ない。いろいろなことが重なってああなった。もう終わったこと。従うなら従うしかない。
 みんな攻める気持ちを忘れずに戦えたのが良かったと思う。今日のように強豪チームに競る展開ができるときもあれば、そうでないときもあり、激しい波をなくしていければいいと思う。

■植田辰哉監督「反省があるなかでも収穫があったゲーム」
 今日のゲームに関しては1セット目を取っていいリズムだったが、4セット目で狂ってしまった。スターティングのメンバーを書くときに、ベンチ内で私が(3セット目終了時のメンバーではなく、)もう一度3セット目のスタートメンバーに戻すことを確認し合わなかった非常に初歩的なミス。副審と、われわれが確認できなかったことで悔いが残るセットになった。4セット目の中断後は、まず7−2から0−3まで戻され選手も動揺していた。あそこでは「切り替えて、もう一度ゼロから出発しよう」ということしか声を掛けることができなかった。
 東京での3連戦は、われわれがこの大会を通して目指そうとするバレー、修正してきたことが、レセプションも含めてブラジル戦で出すことができた。それは選手にとってもプラスになると思う。ブラジル相手にベストを尽くそうというなかで、4セット目の最後に踏ん張ってくれたことは評価したいし、OQTに向けてもう一度立て直し、確認するという意味では、反省があるなかでも収穫があったゲームだったと思う。
 初戦のチュニジア戦を落としたこと、オーストラリア、プエルトリコの試合はモチベーションの問題もあり集中力に欠けたものになってしまったことは、悔いが残る。最後の東京3連戦はいい集中力を持って臨むことができた。来年に向けてやらなければならない課題は明確になったので、解散してからも強化して臨みたい。
 前回大会と今大会の全体レベルの違いは分からないが、他チームのつぶし合いを見ても世界のレベルは1、2位が抜け出ているが、その下は拮抗(きっこう)している。やってきたことが全く通用しないことはあまりなかった。持っているモチベーション、メンタル面も含めてやっていけば5月には勝てると思う。それでも3勝しかできなかったことについては、短い期間で上位を目指すのは難しいということでもある。それでもこのチームは必ず上に上がっていけるチームだと確信した。

■国際バレーボール連盟審判委員会・シャハー・ナシーブ氏のコメント

 (第4セットのアクシデントについて)本来のスターティングメンバーに書かれていたのは11番(松本慶彦)の選手だったが、出場していたのは9番(富松崇彰)の選手。ルール上、(名前が)書かれていない選手は出場してはならないし、その選手がプレーしている状態で得たポイントは無効になる。メンバー表はコーチが記載して、副審が確認しなければならないが、今回は副審の確認に関してミスがあった。ただしルール上、得点は無効にならなければならないので、あのような状況になった。審判団もそれに気づいたのが7点まで進んだところだった。

<了>
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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