日本最南端のプロチームが起こす、新しい熱気=バスケットボールbjリーグ

鈴木栄一

3年目でカンファレンス制度を導入

3年目を迎えるbjリーグは今季から琉球、福岡が新たに加わり、カンファレンス制度を導入 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ/bj-league】

 いよいよ3年目のシーズンが始まった男子プロバスケットボールリーグのbjリーグ。今季からはライジング福岡、沖縄県をフランチャイズとする琉球ゴールデンキングスの2チームが参戦し、全10チームでそれぞれ44試合のリーグ戦を行う。また、チーム数が前年の8から10に増えたことに伴い、イースタン(仙台89ers、新潟アルビレックス、埼玉ブロンコス、東京アパッチ、富山グラウジーズ)、ウエスタン(大阪エヴェッサ、高松ファイブアローズ、大分ヒートでビルズ、福岡、琉球)に分けた2地区制を導入。そして、各カンファレンス1位と、2位と3位による1試合のワイルドカード(場所は2位のホーム)を勝ち上がったチームが参加し、4チームによるトーナメント形式のプレーオフが行われる。今回のカンファレンス制の導入、プレーオフ制度の変更について河内敏光コミッショナーは、「カンファレンス5チームの内、ワイルドカードを含めると3チームにポストシーズン進出の可能性がある」とコメント。多くのチームに最後まで優勝の可能性を与え、消化試合を減らそうという意図を語ってくれた。

バスケット王国・沖縄のデビュー

琉球は2戦目でリーグ初白星を挙げた。写真は、相手コートへ攻め入る琉球の澤岻(たくし)直人 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ/bj-league】

 10月30日の福岡対大阪の試合から始まったリーグ戦だが、今回、筆者は沖縄初のプロスポーツチームとして誕生した琉球キングスの開幕2連戦(11月3日、4日)を取材に訪れた。元々、沖縄と言えば、日本でも有数のバスケットボール王国として知られている。bjリーグでも昨年の時点で元・日本代表の仲村直人(大阪)、昨年のドラフト1位である呉屋貴教といった沖縄県出身者が、リーグを代表する日本人選手として活躍。そして、キングスが今年のドラフト全体1位で澤岻直人を指名するなど、計5人の沖縄県民を獲得したことにより、うちなーんちゅ(沖縄県民)は11人となった。開幕戦に訪れた河内コミッショナーが、「bjリーグの沖縄出身者は11人とリーグ最多。そういった意味でも日本で最もバスケットボールが盛んな地域の一つである沖縄にキングスが誕生したことをうれしく思います」とコメントしたように、この地にプロバスケットボールチームが誕生したことは必然と言ってもいいだろう。

 そして迎えた3日の開幕戦、キングスは大分ヒートデビルズを相手に第1Qから持ち味であるテンポの速いバスケットボールを展開。スリーポイントシュートなど外からのシュートがよく決まったこともあり、前半を終え12点のリードをつけて折り返す。しかし、第3Qはヒートデビルズが猛反撃、このQだけで24対9と圧倒し54対51と逆転。第4Qに入るとキングスも盛り返し、一進一退の攻防が続く。しかし、キングスは2点を追う残り3秒で痛恨のターンオーバーを喫し、大分が辛くも逃げ切った。

 続く4日の第2戦は、第1Qでヒートデビルズが先行すれば、第2Qにキングスが追い上げて39対38と逆転して前半を終える。後半に入っても両チームとも一歩も譲らない試合は、オーバータイムへと突入。オーバータイムに入っても、ゴール下へと積極的なアタックを仕掛けるキングスに対し、大分はファウルアウトしたジャスティン・アレンが審判に暴言を吐くなど、退場後に二つのテクニカルファウルを犯してしまう。その結果、キングスは4本のフリースローを得ると、このチャンスをこの日33得点を挙げたダニー・ジョーンズがすべて決め、残り3分15秒の時点でリードを7点に広げる。大分の桶谷大ヘッドコーチは「観客のみなさんに謝っても謝りきれない行為をした選手がいたことがショックでした」と試合後に語ったように、このアレンの暴走が試合のキーポイントとなりキングスが96対87で記念すべきチーム初勝利を挙げた。

個性派の琉球Gキングスにかける期待

個性の強い琉球ゴールデンキングス。参入1年目で文字通り黄金の輝きを見せられるか 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ/bj-league】

 2試合ともに熱戦を演じ、1勝1敗で第1週を終えたキングス。昨季のリーグ3位で、同じウエスタンカンファレンスのヒートデビルズと互角の戦いを演じたことで、チームは新規参入と言っても1年目から戦える自信をつけたのではないだろうか。試合を見て、印象的だったのは、沖縄の観客のバスケットボールに対する理解度、そして熱さだった。相手フリースロー時のブーイング、試合終盤のディフェンスコールなどは自発的に起こっており、観客がバスケットボールをよく知っていることをさまざまな所で感じることができた。勝利を挙げた2戦目の観客数は1547人と決して多くない数字だったが、2000人を下回っているとは思えない程の声援の大きさなど、バスケットボール王国といわれるだけの熱さが会場には存在していた。

 また、キングスはチーム自体も、他のチームと一味違う。2試合ともキングスは試合最後のシュートを決めれば同点、または勝ち越しという場面を得ていた。外国人選手枠の制限がないbjリーグにおいて、このような勝負所では外国人選手がボールを持って1対1を仕掛けるのがほとんどだ。しかし、キングスでは両方の場面で澤岻が1対1を行っていた。これは、他のチームとの大きな違いと言え、日本人選手の育成というリーグの理念を最も実戦しているチームの一つと評してもいいだろう。また、第2戦に出場した山城吉超は、188センチながら120キロで、他にいないタイプの巨漢ガードであるなど、個性豊かな選手がそろっている。日本最南端という場所、そして地元の選手を多く採用している所など、いろいろな面で独自の雰囲気を持っている琉球キングス。沖縄、そして日本バスケットボール界の活性化のために、新規参入といえど今年のリーグでインパクトを残すことを期待したい。

<了>
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著者プロフィール

1977年、山梨県生まれ。アメリカ・オレゴン大学ジャーナリズム学部在学中に「NBA新世紀」(ベースボールマガジン社)でライター活動を開始し、現在に到る。毎年、秋から冬にかけて母校オレゴン・ダックスの成績に一喜一憂している。

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