急成長を証明した天津と、個のレベルの高さを発揮した統一=プロ野球アジアシリーズ
アジアナンバーワンのプロ野球チームを決める「アジアシリーズ2008」が13日、東京ドームで開幕した。大会初日の第1試合では、中国の天津ライオンズと、台湾の統一7−ELEVEnライオンズが対戦。中国勢としては初めて単独チームとして出場した天津が、序盤にリードを奪い、優位に試合を進めたが、最後の最後に劇的なドラマが待ち受けていた。
先発の役割を果たした蘇長龍
天津の先発マウンドに上がったのは左の蘇長龍。初回に1死から四球で出した走者を二塁に進められ、2死二塁のピンチを迎えた。ここで打席に迎えたのは、台湾リーグで本塁打と打点のタイトルを獲得した4番ブリトー。蘇長龍が立ち上がりにどのようなピッチングをするのか一つのポイントだったが、3球続けてボールとしたものの、4球目でセンターライナーに打ち取り、ピンチを脱した。
これでリズムに乗った蘇長龍は、ストレートの球速こそ130キロ台だったが、鋭いスライダーやカーブを内外角にきっちり投げ分け、4回2死まで統一打線を無安打に抑える好投を披露した。
走力の明暗が出た2回の攻撃
この後、圧巻だったのは、9番・張振旺の打席で、一塁走者と二塁走者が重盗を決めたことだ。投手が無警戒だったということもあったが、「いよいよ天津の機動力全開か」と思わせる攻撃だった。張振旺も三塁線を破るタイムリー二塁打で続き、2者が生還。重盗が功を奏した形で3点目を奪った。
なお1死二塁とチャンスが続き、1番・侯鳳連。ここで侯鳳連にもヒットが出れば、天津が一気に試合を決めるかと思われたが、ここで天津の走塁に“落とし穴”が待っていた。侯鳳連の放った打球は浅いセンターフライ。投球と同時にスタートを切っていた張振旺は、二塁へ戻れず併殺となった。「打球が捕られる」と判断して帰塁できる時間は十分あったが、次の塁を狙う積極性が裏目に出て、大量点に結びついたかもしれないチャンスを「暴走」でつぶしてしまった。天津の足を絡めた攻撃の積極性と判断ミスが、両方対照的に表出した攻撃だったと言っていい。
逆転を許した継投の遅れ
しかし、“落とし穴”は9回裏にもあった。9回の先頭・劉芙豪にレフト前ヒットを許し、2死ながら三塁まで進められた。勝利まで「あと一人」という場面。焦益監督は動かず、呂建剛を続投させたが、代打・郭俊佑にレフト前タイムリーを浴びて同点とされた。
焦益監督は3番手に李家強をマウンドへ送る。李家強は続く1番・黄甘霖に死球を与え、2番・潘武雄潘に痛恨のサヨナラ3ラン本塁打を浴びた。
試合後、焦益監督は「投手交代が2度とも遅れた、ベンチのさい配ミスがあったことは否定できない」と悔やんだ。「国際試合での経験が足りなかった。バッテリーもアジアの強豪チームと比べたらまだまだ細かな配球ができない」とも語った。それでも「アジアの強豪と戦っていくことはわれわれにとっていい勉強になる」と述べ、残りの2試合にベストを尽くすことを誓った。
また、元横浜ベイスターズの松岡功祐・守備コーチも「ウチは足の速い選手が多くて機動力が武器なんだけどね……、(試合展開が)競ってくると台湾の方が個々の力では上だね」と悔しさをにじませた。
だが、悲観することなどまったくない。この日の戦いで中国野球のレベルは急激に成長し、台湾のチームに肉薄するところまで来ていることが証明された。残りの韓国・SKワイバーンズ、埼玉西武ライオンズという戦前の予想では“格上”の相手に対して、どれだけ戦えるのか。波乱を巻き起こす可能性は十分にある。