バダ・ハリ独占インタビュー「GPと大みそか連戦? 問題ない」

佐々木亜希

12月6日に開催される「K-1ワールドGP決勝戦」に向けた決意、そして「DREAM.6」での発言真意──。バダ・ハリの素顔に迫った。 【スポーツナビ】

 9月27日、韓国で開催された「K−1 WORLD GP 2008 IN SEOUL FINAL16」において、チェ・ホンマンから勝利した“悪魔王子”バダ・ハリ。
 K−1新世代、そして現在のK−1を代表するエースとして注目を集め、今年のGP優勝候補最右翼と目されるバダ・ハリが考えるK−1、理想のファイター像とは? 激しい挑発でDREAMファンからブーイングを起こさせた9月23日「DREAM.6」で行ったマイクの真意、そして12月6日に開催される「K−1 WORLD GP 決勝戦」に向けた決意。バダ・ハリの素顔に迫った。

「(格闘技は)嫌いだったけど、父親が強制的に通わせた」

リラックスした様子で丁寧に取材に応じてくれたバダ・ハリ 【スポーツナビ】

──今日はよろしく御願いします! あらためて、日本の印象をお伺いしていいですか

 回数を重ねるごとに日本のことは好きになっていると思うよ。ただ最初のころは、やっぱり文化も違うし人の考え方もかなり違っていたから、不慣れな部分はあったね。試合の前で気持ちがピリピリしているときなんかはストレスを感じたり、イライラさせられることはあったけど、理解していくうちにそれも変わってきたよ。全部を見てるわけじゃないから、これからもっといろいろなことを発見していけると思うけどね。

──取材を受ける機会も増えていると思いますが

 みんなすごく親切にしてくれているし、取材を受けたりするのは非常に楽しいと思ってるよ。ただ、オランダと比べると単刀直入にものを言わないというか、なんとなく質問がまわりくどいというか、遠慮がちに聞いてくるように感じるな。もっとはっきり聞いてくれてもいいのにと思うけど、俺が何か聞きづらいのか、聞いてくる側にシャイな部分があるのか。もっとはっきり聞いてきてくれると面白いのに。

──分かりました。では今日は、出来るだけはっきり質問するように頑張りたいと思います

 OK、受けて立つよ。まずは上着を脱ぐから、お互い構えるところから始めようか(笑)。

──よろしく御願いします!(笑)えーと、バダ・ハリ選手は小さいころからスポーツは得意だったんですか

 キックボクシングを7歳からやっていて、それしかやってないけど、小さいころから友だちと遊んだり、学校の運動会やスポーツテストなんかがあったときには何をしても1番だったな。身体能力が高くて、何をやってもそつなくこなしている子どもだったと思うけど、自分はキックボクシングをやっていくと思っていたから、他のスポーツをやることはなかったよ。

──他のスポーツからも誘いはあったんじゃないですか。すごく背が高いですし、例えばバスケットボールをやらないかとか

 あぁ、バスケットは学生のときに遊びでやったことがあるよ。楽しかったし、本格的にやらないかと誘われたけど、俺は格闘技が好きだったし、他の道に行く気はなかった。この年齢でこれだけやってるから、今更他のスポーツをやるのはなんだし、これからも格闘技をやっていこうと思ってるよ。

──そもそもどうして格闘技をはじめたわけですか?

 もともとは嫌いだったけど、父親が強制的に通わせたんだ。やっているうちに好きになってたな。今思えば、父親のチョイスは正しかったんだろうね。

──バダ・ハリ選手はすごく身長が高いですけど、来るたびに大きくなってるようにも見えるんですよ(笑)

 ハハハ。実際は3年くらい前に身長は止まってるから、大きくはなってないんだけど、大きく見えるのは有名になってオーラが出てきて大きく見えるんじゃないかな。

──なるほど。強くなって自信を身につけたことで、オーラが出ていると(笑)

 イメージや印象で実物より大きく見えるってことはあるからなぁ。俺は当たり前のどこにでも居る人間だけど、そういうところで大きく見えるのかもしれないな。

「リスクがないところに、リターンはない」

「リスクがないところに、リターンはない」と独自の勝負論を展開 【スポーツナビ】

──バダ・ハリ選手は常に相手を倒しにいくファイトスタイルですよね。それはかなりリスクの高い戦い方だと思うんですが、あえてそういう戦い方をするのはどうしてですか?

 リスクがあることは分かっているよ。ただ、どうして自分がリングに立てているかということを考えたとき、それはチケットを買って、わざわざ時間を作って会場へ来てくれる観客がいて、もっとたくさんのお金を払ってくれているスポンサーがいて、さらに高いお金を払ってくれているテレビ局がある。そういう全部が重なりあってイベントができていて、自分がいる。彼らの望んでいることが何かを考えて、いかに自分がファイトでそれを返すか、それが自分の責任だと思っているからだよ。

──観客が好むと分かった上で、あえてそういう戦い方をしているわけですか?

 打ち合いにいくことにリスクがあるのは分かっているけど、それは自分がしなきゃいけないことで、自分の戦い方だからな。人生においてもそうだけど、リスク(危険)がないところに、リターン(見返り)はない。リスクがあっても正しいチョイスをしていれば、見合ったリターンや見返りがあるだろう。失敗すれば大きな損益になることはあるだろうけど。自分はリスクをとって成功に変えていきたい。だからああいう試合になる。

──そういう考え方で試合をしているんでしたら、他のファイターの戦いかたや試合を見て頭に来ることはないですか?

 そういう戦い方をする選手を見ると、イライラするというか、残念に思うな。自分だけがK−1を背負っているわけじゃないし、他の選手全員がK−1を作っている。その中に、そういう選手が入っているというのは残念だよ。ただそれは他の選手のチョイスの方法であって、日本の格闘技ファンは目が肥えているから、つまらない試合をしていたら、いつかはいらない選手と判断されると思う。そういうことを分かった上でどういう試合をするかは彼ら自身だ。彼らと試合をするときには、自分のファイトスタイルを見せることで彼らが考え方を変えてくれたらいいとは思うけど、底辺でもいいからリングに残っていたいと思うのか、それとも頂点に立って短い間でも注目をあびたいのか、どっちを選ぶかは彼ら次第だ。自分としては後者をとって、結果を得られているから満足しているけどね。

──以前、ジェロム・レ・バンナとアンディ・フグをリスペクトしているとインタビューで答えていましたが、それは今でも同じですか?

 確かに彼らの名前をあげたことがあるけど、今も同じ気持ちかというとそうではないな。特にジェロム選手は、今の戦い振りをみていると、何年か前の最も強かったころと比べて半分くらいの戦い振りしか出ていないように思える。どんな素晴らしい選手にも終わりがあるように、彼もそろそろ終わりの時期なんじゃないかと思う。あくまでも自分が感じていることだけど、それは包み隠さず言いたい。彼自身もそう考えているんじゃないかなと感じるね。だから現時点でも尊敬しているかというと非常に難しいな。

──なるほど……

 フグ選手は、ああいう形で急にこの世を去ってしまったから、格闘技ファンも、彼に対して不変的なイメージを抱いていると思う。彼のことは今でも素晴らしい選手だと思っているけど、自分も経験を積むことで変化してきた部分があると思うし。

──では、今ほかにリスペクトできる選手として名をあげられる選手はいますか?

 正直いないかな。考えられない。頑張っている選手はいると思うし、その歴史を尊敬することは出来ると思うけど、その選手を尊敬できるかというと難しいな。その選手がどれだけの業績を“現時点で”持っているかというのが自分にとっては大事だから。

──歴史ではなく、いまの戦いぶりや戦績を見るということですね

 そう。だからそれに匹敵する選手というのは今はいない。変わりに自分自身が尊敬に匹敵する選手であることが出来るよう、一生懸命頑張っているけどね。

──逆に、もっとも嫌いなファイターとしてレミー・ボンヤスキーの名前をあげていましたが、それは今でも変わらないですか?

 あぁ。それは変わらない。それはもう、これから先も変わらない。ずっとだ。

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