高橋不在でフレッシュな新王者誕生、中庭は10位に終わる=フィギュア男子

辛仁夏

フレッシュな顔ぶれのメダリスト

会心の演技でGPシリーズ初優勝を飾ったアボット 【Getty Images】

 男子は、スケートアメリカの小塚崇彦(トヨタ自動車)同様、GPタイトルを初めて手にした新チャンピオンが誕生した。表彰台の顔ぶれもバンクーバー五輪でメダルを目指すフレッシュなスケーターがそろった。今季の中国杯では当初、大本命と見られていた高橋大輔(関西大大学院)が、右ひざの負傷で欠場を余儀なくされ、戦前の予想では混戦模様としていた。昨季のNHK杯で2位、2007年世界選手権4位のトマシュ・ベルネル(チェコ)の優勝が有力かと思っていたが、まったく予想外の結末となった。意外なスケーターが上位争いに加わり、今後の男子フィギュア戦線においては面白い存在になりそうだ。

 ショートプログラム(SP)でトップに立ったのが、これまで本番では必ず失敗をしていたジェレミー・アボット(米国)だった。意外な展開にメディア関係者も驚いていたが、当の本人はどこ吹く風といった感じで、練習を積んできた今季はかなり自信も持って臨んできたようだ。SP後の会見ではこんなことを言っていた。

 「結果には興奮している。自分で攻められたので良かった。きょうのSPはジャンプ、スケーティング、スピンなどすべてにおいて良かったし、上達していることを証明できた」と胸を張っていたほどだ。

 そして、迎えた8日のフリープログラム(FP)でもハイスコアをマークして堂々の1位となり、嬉しいGP初制覇を果たした。

 23歳のアボットはこれまでの主要国際大会では一度もタイトルを手にしていないが、この中国杯で77.05点のSPも、156.39点のFPも、233.44点の総合得点でも自己ベストの得点をたたき出す内容で初の頂点に上った。

ジャンプに安定感を見せたアボット

 金メダルを獲得して臨んだメダリスト会見でアボットは、終始笑顔を振りまきながら「きょうの演技には興奮した。試合前はちょっとナーバスになったが、本番では自分に集中して滑ることができた」と喜びをかみしめていた。

 今回のアボットはSP『Adagio』でもFP『Eight Seasons』でも、一度もジャンプの失敗がなかった。それだけ、今季はジャンプに安定感があり、自信を持っている様子がうかがえた。コンビをつける予定のジャンプでつけられなくても、次のチャンスにコンビジャンプを跳ぶなど、臨機応変に余裕を持った対処ができていたからだ。

 プログラムに4回転はないが、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で加点をもらえるほどきれいに跳んでいたことが躍進の要因になっていた。ジャンプが安定したことで、演技にも余裕が生まれ、終盤のストレートステップも勢いに乗って滑っていたのが印象的だった。最後のジャンプ、ダブルアクセルで着氷が乱れたが、フィニッシュポーズの後にはガッツポーズも飛び出す会心のプログラムを見せた。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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