ウオッカ vs.ダイワスカーレット――府中2000m頂上決戦!=天皇賞・秋 展望

スポーツナビ

天皇賞・秋で5度目の直線対決となるウオッカ(右)vs.ダイワスカーレット(左)(写真は07年桜花賞) 【スポーツナビ】

 現役最強馬を決めるJRA秋競馬の大一番、第138回GI天皇賞・秋が11月2日に東京競馬場2000メートル芝で開催される(発走は15時40分)。
 距離2000メートルで行われることから、2400メートル以上を得意とするステイヤー、2000メートル前後で強い中距離馬、1600メートルが主戦場のマイラーと、3つの距離カテゴリーからトップホースが集結。そのためにジャパンカップ、有馬記念よりも豪華なメンバーがそろう年も多く、まさに“無差別級”の現役最強王者決定戦といえる日本競馬界最高峰のレースだ。

 ウオッカ、ダイワスカーレットの日本競馬史に名を残す女傑2頭に、今年のダービー&NHKマイルカップを制した“変則二冠馬”ディープスカイ、07年菊花賞馬アサクサキングス、06年2歳王者ドリームジャーニーと、今年も3歳馬から4歳以上の古馬、牝馬まで日本を代表するトップホースが勢ぞろい。この究極の一戦、そして「魔物が潜む」と言われている府中2000の難コースを制し、現役最強の称号を得るのは――。

ダイワスカーレット、7カ月ぶりも問題なし

約7カ月ぶりの出走になるダイワスカーレットだが、仕上がりは大丈夫 【スポーツナビ】

 ウオッカvs.ダイワスカーレット――現在の日本競馬最高のライバル対決である女傑2頭の対決。今年の天皇賞・秋の大きな焦点と言えば、まず「このどちらが勝つのか?」だろう。

 同じ2004年生まれの4歳牝馬。これまでGIIIチューリップ賞、GI桜花賞、GI秋華賞、GI有馬記念で直接対決し、3勝1敗とダイワスカーレットがリードしている。
(チューリップ賞:ウオッカ1着・ダイワスカーレット2着、GI桜花賞:ダイワスカーレット1着・ウオッカ2着、GI秋華賞:ダイワスカーレット1着・ウオッカ3着、GI有馬記念:ダイワスカーレット2着・ウオッカ11着)

 スタートしてすぐスッと先手が取れる抜群のスピード、それでいてラスト3Fを33秒台でまとめられる持続性。ダイワスカーレットは現代の競馬で勝つ要素を高いレベルで持っている。ここまで10戦7勝2着3回のパーフェクト連対。昨年はGI桜花賞、GI秋華賞、GIエリザベス女王杯と3つのビッグタイトルを勝ち取り、今年も初戦のGII大阪杯で後のGI宝塚記念馬エイシンデピュティを難なく完封してみせた。

 レースそのものには死角らしい死角は見当たらず、当然、天皇賞・秋でも主役の1頭なのだが、今回は4月の大阪杯以来約7カ月ぶりの競馬。左前脚管骨の骨瘤で春シーズンを休養したため、ぶっつけで本番に臨むことになった。
 仕上がり状態が大きなポイントになるが、少しでも不安があれば2週後のGIエリザベス女王杯まで復帰を延ばすと管理する松田国英調教師が明言していただけに、ここでの復帰を決断したということは仕上がりは万全である証拠。放牧先や9月5日に帰厩後の栗東トレセンで入念に乗り込み、1週前追い切りでは坂路4F52秒0の好タイムをマーク。そして、29日の最終追い切りでも坂路で主戦の安藤勝己を背に馬なりで53秒1。好仕上がりをアピールしている。

 また、ダイワスカーレットは過去に4カ月ぶりのGIIローズS、4カ月半ぶりの大阪杯をいずれも1着に来ており、鉄砲が利くタイプ。今回も初戦から持てる能力を発揮してくるに違いない。
 復帰戦いきなりからその絶対的なスピードを見せつけ、ダイワスカーレットこそが現役最強であることを改めて示してみせるか。

ウオッカ、今度こそのライバル撃破だ

今度こそライバルを撃破し、真の最強の座を手にしたいウオッカと武豊 【スポーツナビ】

 いつまでもライバルに遅れを取れないウオッカは、6月のアジアマイル王決定戦・GI安田記念を3馬身半差で圧勝。昨年のダービー以来となる勝利を挙げ、完全復活をアピールした。

 昨年は、2歳女王として臨んだ3歳牝馬クラシック第一冠・桜花賞で2着に敗れたものの、果敢に3歳最強決定戦・日本ダービーに挑戦。17頭の牡馬を完ぺきに打ち負かし、64年ぶり史上3頭目の牝馬によるダービー制覇という歴史的偉業を達成した。
 その後、ディープインパクトも勝てなかった世界一決定戦、フランスの凱旋門賞挑戦プランも浮上したが、右後肢の蹄球炎のため断念。復帰戦の秋華賞3着、エリザベス女王杯は右寛跛(は)行で当日回避、ジャパンカップではメンバー最速の上がり3F33秒6の脚を繰り出し見せ場十分の4着だったが、最終戦の有馬記念、年明け初戦のGII京都記念で惨敗し、完全にスランプに陥っていた。

 しかし、今年3月の国際GIドバイデューティーフリーで4着と、改めて世界規格の能力を示すと、国内復帰戦のGIヴィクトリアマイルはドバイ帰りで体調不十分だったか2着と不覚を取ったが、香港最強マイラーも参戦した安田記念を前述のとおり圧勝。グレード制導入(1984年)以降、牝馬による安田記念勝利は1994年ノースフライト以来、14年ぶり3頭目の快挙だった。

 直接対決こそリードを許しているが、勝ったGIのインパクトはダイワスカーレットを上回るウオッカ。最大の魅力は末脚の爆発力であり、これを生かすのに東京競馬場はピッタリの舞台。事実、5戦[2201]うちGI2勝と、抜群の好成績を残している。
 秋初戦となったGII毎日王冠は2着に敗れたが、これは押し出されるように逃げる形の競馬になってしまったからであり、展開のアヤ。むしろ、逃げても課題の折り合いがついたことで、どこからでも競馬ができる見通しが立ち、収穫は大。レース後には武豊も「引っかからなかったし、いい感じで進められた。今回は残念だったけど、本番では」と、意を新たに巻き返しを誓っている。
 今度こそ本来の爆発力を生かす競馬で、打倒ダイワスカーレットへ一直線。秋の盾とともに、真の最強の座を射止めてみせるか。

ディープスカイ、世代最強から現役最強へ

世代最強から現役最強へ、3歳馬ディープスカイが一気の頂点を狙う 【スポーツナビ】

 歴史的女傑2頭の対決に注目が集まる一方、これらを破って一気に新時代を到来させる可能性を大きく秘めた若き3歳馬が勇躍参戦してきた。それが、今年の日本ダービー馬ディープスカイ。1600メートルのマイルGI・NHKマイルカップも勝利し、史上2頭目の“変則二冠”を達成している。

 通常この時期の3歳馬、ましてクラシックホースは3歳クラシック最後の一冠・GI菊花賞を目指すものであり、天皇賞・秋への参戦自体が少ない。1938年〜86年までは3歳馬が出走できない規定だったこともあるが、その年のダービー馬が天皇賞・秋に出走してくるのは1937年ヒサトモ以来71年ぶり、戦後初のこと。もちろん、勝てば史上初のその年のダービー馬による天皇賞・秋制覇だ。
 古馬の壁は厚いが、3歳馬では歯が立たないかというと、そうではない。再び3歳馬が出走可能となった1987年以降、1996年バブルガムフェロー、2002年シンボリクリスエスが勝利。また、1988年オグリキャップ、2004年ダンスインザムードが2着に来ており、確かな実力があれば年上相手のGIでも十分好勝負可能ということだ。

 もちろん、ディープスカイはその“確かな実力”を持つ1頭。NHKマイルカップ、ダービーはともにレベルが違うとばかりの快勝劇を見せ、秋初戦のGII神戸新聞杯では8分程度の仕上がりながら、後の菊花賞馬オウケンブルースリをあっさり撃破。改めて恐るべき素質を確認する結果となった。
 ウオッカ同様、ディープスカイ最大の武器といえば、直線の長い東京コースで抜群の威力を発揮できる末脚の破壊力。同世代を難なく斬り捨てた自慢の末脚で、今度は女傑2頭を一刀のもとに斬り伏せるか。

アサクサキングス、ドリームジャーニーら一発

勢い抜群のドリームジャーニー、父ステイゴールド超えを果たすか 【スポーツナビ】

 今年の天皇賞・秋が近年最高峰メンバーと言われる理由は、そのほかの出走馬の豪華さにもある。主役3頭が目立ちすぎているために今年に限っては脇役の1頭となってしまっているが、従来ならば主役級の扱いを受けていい馬がズラリ勢ぞろい。

 昨年の菊花賞馬アサクサキングスは、6月の宝塚記念以来約4カ月ぶりの競馬。春の連戦の疲れを完全に抜き取るためにステップレースを使えなかったが、その分、完全にリフレッシュしての出走となる。
 春GI戦線は天皇賞・春3着、宝塚記念5着とあと一歩で2つ目のビッグタイトル奪取はならず。大阪杯でも3着とダイワスカーレットの後塵を拝しているが、ダイワスカーレット56キロに対してアサクサキングス59キロと、3キロの斤量差がありながらタイム差は0秒2の惜敗。両者の実力は接近しており、天皇賞・秋では斤量差が2キロと縮まることから、アサクサキングスにも逆転の目は十分にある。
 また、休み明け初戦から走れるタイプで、東京コースもダービー2着を含む4戦[2101]と相性は抜群だ。

 2006年の2歳王者ドリームジャーニーは、目下2000メートルの重賞を連勝中と、中距離路線で完全復活を遂げた。
 父ステイゴールドと同じ小柄な馬体から繰り出す差し脚は切れ味抜群。2歳王者決定戦・GI朝日杯FSを最後方からのごぼう抜きで優勝した際には、騎乗した蛯名正義が「軽く飛んだ」と形容したほどだ。
 キレを取り戻した走りで連勝した2戦は、“GIIIでは格が違う”と言わんばかり。父ステイゴールドが2年連続2着に泣いた因縁の府中2000メートルで、親父超えを果たしてみせる。そして、2006年以来、2度目の王者となる時が来たか。

 他にも1997年エアグルーヴ、2005年ヘヴンリーロマンスがステップレースとしたGII札幌記念の勝ち馬タスカータソルテ、昨年の天皇賞・秋3着で今年GII2勝のカンパニー、また、ポップロック、アドマイヤフジらGIで好走を続けてきた実力派の存在も侮れない。

 女傑2頭の一騎打ちか、3歳ニューヒーローが新たな王となるか、それとも伏兵の一撃による下克上か――。現役最強を決める府中2000メートル頂上決戦は、11月2日・15時40分ゲートオープン!
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント