FC東京U−18、飽くなき勝利への執着心=高円宮杯

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主役はFC東京の岩渕良太

高円宮杯準々決勝で前橋育英に3−1で勝利してベスト4進出を決めたFC東京 【スポーツナビ】

 第19回高円宮杯全日本ユース(U−18)サッカー選手権大会の準々決勝が23日、千葉県市原臨海競技場で行われ、ラウンド16で前回大会王者の流通経済大学付属柏高校に競り勝ったFC東京U−18が、粘り強さを見せつけて前橋育英高校に3−1で勝利した。

 この試合の主役は、FC東京の岩渕良太だった。岩渕は、試合全体をコントロールしていたと言っても過言ではないだろう。FC東京の4−4−2のフォーメーションの2トップの一角に入った岩渕は、FWから少し下がったポジションでゲームを支配した。
 FC東京は試合序盤、重松健太郎が1トップのFWに位置し、右サイドの山崎侑輝を起点に攻撃を仕掛けた。試合が動いたのは14分、中央の重松からパスを受けた岩渕が、ドリブルで持ち込んで右足シュート。早くもFC東京が先制する。1点をリードしたFC東京は、その後も岩渕と重松のコンビで何度も前橋育英ゴールを脅かした。

 岩渕のプレーはシンプルだったが、要所を突くうまさを見せた。中盤でボールを持つと、まず前線の重松を探す。相手DFのマークが厳しいときは、自分でドリブルを仕掛けて相手の注意を自分に引き付け、フリーの味方選手にパスを出す。これは一見単純な流れの中での動きに見えるが、ボールをキープしても相手に取られない強さを持つ岩渕だからこそできるプレーだ。さらに、岩渕がボールを持つとチーム全体が前へと動き出した。まさに前半の岩渕は、ピッチ上のコンダクター(指揮者)だった。

 さらにベンチにいる指揮官、FC東京の倉又寿雄監督も積極的に動いた。前半に1−0とリードしている場面で、右サイドの起点になっていた山崎を下げて星暢哉を投入。「山崎の動きが鈍く、足が動いていないと判断した。相手とのマッチアップで、自分がどうすればいいのか分からずパニックになっていた。だから運動量で優る星を入れた」(倉又監督)。すると、このさい配が見事に当たり、交代直後の42分に星が追加点を奪う。
 前半はFC東京が終始試合の主導権を握り、2−0とリードして終了した。

チームを生き返らせた倉又監督

抜群のコンビネーションで前橋育英ゴールを脅かしたFC東京の重松健太郎(中央)と岩渕良太(右) 【スポーツナビ】

 後半が始まっても、岩渕と重松の関係は前橋育英DFの脅威になっていた。重松は“がむしゃら”が持ち味のFWで、72分に途中交代するまで積極的にゴールを狙い続けた。ゴール前での迫力はもちろん、ルーズボールを追いかける姿にスタンドからも共感の声があがっていた。また、時折見せるポストプレーでのワンタッチでの切り返しには、荒々しさだけではない繊細さも披露するなど、FWとしてのスケールの大きさを感じさせた。しかし、さすがに連戦の疲れもあって次第に運動量が落ちると、前線からのプレスがかからなくなり、前橋育英が後方からのビルドアップでチャンスを作り始める。そして76分、ついに1点を返して前橋育英が息を吹き返した。

 倉又監督は、ここが勝負とばかりタッチラインぎりぎりまで出て、大声で選手たちを鼓舞した。
「選手たちが思った以上にバテていたし、相手が点を取りにきたので特にキツく言った。中盤が薄くなってしまうので、岩渕をトップ下にして数的優位を作るように指示した」
 選手たちも倉又監督の声に呼応するかのように、センターバックでキャプテンの畑尾大翔を中心に声を掛け合い、強いハートで前橋育英の怒とうの攻撃を防いだ。

 その後、攻撃の中心だった岩渕が相手DFのファウルで負傷する場面があったが、何とか戦列に復帰。するとその直後に、それまでDFリーダーとして前橋育英の攻撃を身を投げ出して防いでいた畑尾が、CKから待望の追加点を奪った。
 前橋育英は最後まであきらめず意地の反撃を見せたものの、FC東京が危険な場面を粘り強く戦って切り抜け、国立へと駒を進めた。

「連戦で疲れている中で、どういうサッカーをするのかが大事だった。早めに点を取れて良かった。全体的にミスが多く、ボールを取れてからの速攻で危ない場面が何度かあった。だが、今日はディフェンスラインがよくやってくれた。選手たちも国立を夢見てやってきたので、この結果には満足しています」
 倉又監督は自分の声にしっかりと応え、勝利への執着心を見せてくれた選手たちの健闘をたたえた。
 なお、攻撃の中心としてチームをけん引した岩渕のけがについては、「大丈夫だと思います。明日、精密検査をします」と語っている。

 これでFC東京は、夢の国立で名古屋グランパスU18と決勝進出を懸けて戦うことになった。名古屋には日本クラブユースサッカー選手権大会で8−4と大勝しているが、リベンジに燃える相手をどのように攻略するのか。倉又監督の手腕、そして何より、選手たちの“負けない心”に期待したい。

<了>

(編集部:原田直樹)
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