もがき苦しむ福留、徹底的な弱点分析=小グマのつぶやき from シカゴ

阿部太郎

我慢して福留を使った首脳陣

 これか、恐るべしヤギの呪(のろ)いは。ここ10試合(現地9月9日まで、以下すべて現地日付)で2勝8敗、そのうちサヨナラ負けは2度。カブスのチーム状況は“今季最悪”の事態に陥っている。ついにあるメディアは、シーズン終盤で8ゲーム差をひっくりかえされた、屈辱の1969年を持ち出し、カブスファンを一層不安にさせている。

 ここは、背番号「1」が救世主となって……。しかし、長い間、不振から光を見出せないでいる福留孝介は、ここ数試合先発から外された。チームの大ブレーキでなりふり構っていられなくなったカブスは、福留を我慢して使う限界を通り越し、ベンチに置かざるを得ない状況になったのだ(ちなみに10日のカージナルス戦は「6番・ライト」で先発出場)。

 首脳陣はむしろ、ここまで「よく我慢して使った」と言っていいかもしれない。福留の打率は6月から現在まで、まさにバブル崩壊後の日本経済のように急降下した。6月→2割6分4厘、7月→2割3分6厘、8月→1割9分3厘、9月→1割(9日現在)。その間、ルー・ピネラ監督が直接指導に乗り出したり“早出特打”をしたり休みを与えたり……いろいろと福留復活に気をもんだが、福留の状態は上がってこない。一度狂った歯車は、なかなかうまく回転しない。

スカウト「打ち取りやすい打者」

 米スポーツ専門局『ESPN』電子版は3日、今季のフリーエージェント選手を評価する記事を出した。もちろん、福留も挙がっていたのだが、内容は少し衝撃的だった。数人のスカウトは、福留に対して「打ち取りやすい打者」という言葉を使っているという。そして「対戦相手はゲーム序盤に投手が内角の胸元に1、2度突けば、後は外のボールで打ち取れる」と分析しているようだ。極め付けは、「福留はイチローのようなアプローチをしているが、イチローのようなスピードとバットコントロールに欠けている」と指摘していた。

 福留がイチローと同じアプローチだとはまったく思わないが、この「内角を突く」というのは、福留攻略のキーワードだろう。自分が記憶している範囲で申し訳ないが、この内角攻めが顕著に見え始めたのは、オリオールズとの交流戦(6月)からだと思う。

 交流戦は期間が限定されるため、同じリーグや同地区のチームよりもかなり「データを重視した作戦」を取ると言われている。4、5月に「福留が外角の球をうまくさばく」というスカウティングリポートが出ていたのだろうか。そのとき、オリオールズバッテリーは福留に対して、執拗(しつよう)に内角を突いた。その3連戦で登板した先発の一人、ジェレミー・ガスリーに、福留の攻め方に対しての話を聞くと、こう答えていたことを思い出す。「内角をうまく攻められれば、外角の対処も落ちるだろうから、それが狙いだ」。ただ、彼は福留に本塁打を浴びた。内角を突くはずの球が、ど真ん中に入ったからである。福留は6月中旬までは、失投を逃さなかったのだが……。

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著者プロフィール

1978年1月9日生まれ、大分県杵築市出身。上智大卒業後、シアトルの日本語情報誌インターンを経て、スポーツナビ編集部でメジャーリーグを担当。2008年1月より渡米し、メジャーリーグの取材を行う

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