ダルビッシュも苦しんだ五輪の重圧=ジョニー黒木が見たキューバ戦

スポーツナビ
 北京五輪の野球が13日に開幕し、星野仙一監督率いる日本代表は1次リーグ初戦でキューバに2対4で敗れ、黒星スタートとなった。日本は先発のダルビッシュが制球に苦しみ、5回途中4失点で降板。打線では足を痛めている川崎宗則が3安打を放つなどアテネ五輪金メダルのキューバに食らいつくが、追いつくことはできず大事な初戦を落とした。
 日本にとって大きな誤算となったのがエース・ダルビッシュだった。4回3分の0で7被安打、5四死球と本来の投球ができず、試合中に修正することもできなかった。現地で取材していた黒木知宏はキューバ戦に登板したダルビッシュをどう見たのか?



――キューバ戦は惜しくも敗れましたが、取材を終えて今の感想は 
 やっぱり初戦ということで選手は緊張していたと思いますね。ただ、負けましたけどキューバは手が届かない相手ではないことがわかりました。普通に戦って日本が実力を出せばもっといい試合ができるし、勝つこともできると思います。あと試合には中国人のファンの方々がすごくたくさん来ていて、日本のことを「加油! 加油!(がんばれ、がんばれ)」と応援してくれていたんですね。正直、日本を応援してくれるのは意外だったんですけど、一緒に盛り上がってくれてすごくうれしかったですね。

気持ちが入りすぎて制球が乱れたダルビッシュ

――先発のダルビッシュは制球に苦しんでいたが、いつもと違いましたか
 一番思ったのはダルビッシュでも緊張するんだな、ということ。大事な初戦ということで、気持ちが入りすぎてコントロールが乱れてしまいましたね。日本ではミスが少ないし、調子が悪くてもすぐに修正できるのがダルビッシュなんですけど、今日はスライダーなどの変化球が高めに抜けてしまっていました。いつもできていることができない、それが五輪のマウンドで、日の丸の重みだと思うんです。初めての五輪で自分のピッチングをさせてもらえなかったですね。ただ、ダルビッシュは修正できると思いますから次の登板に期待したいですね。

――現場で試合を見ていて感じたことはありますか
 僕はベンチの星野監督にずっと注目していたんですけど、星野監督はずっと座らないんですよ。これには驚きました。攻守交替のときもずっと立っていて、戦っていくぞという思いを強く感じましたね。やはりチームを一番引っ張るのは監督ですから、星野監督の思いは必ず選手に伝わっていくと思います。ただ、それに比べてベンチが少し元気がなかったかな。もっと声を出して、もっと熱くなって、出ている選手よりも疲れるぐらいにやってもらいたい。今日は初戦ということでベンチも少し硬くなっていましたね。

――川崎は左足甲を痛めながらも3安打と活躍しました
 川崎の足の状態は悪いですね。それでも5回には星野監督が代走を指示しようとしたのに走者として残って、一時は同点となるホームも踏みました。状態は悪くても男がやると言えば信じるしかないんですよね。もちろんまだ五輪も先がありますから川崎にも無理はしないでもらいたんですけど、川崎のがんばりには感動しましたね。

――試合終了後の選手の表情は
 やっぱり試合に負けたあとですから表情は硬かったです。宮本(慎也)主将も緊張があったと話していました。ただ、打線はヒットも出ていて状態はいいですし、リリーフで登板した選手たちもキューバを抑えていましたから心配することはないと思います。

――2戦目以降の星野ジャパンに期待することは
 しっかり自分たちの力を出せれば大丈夫ですから心配はしていません。台湾、韓国と厳しい相手が待っていますが、自信を持って、元気を出して戦ってほしいと思います。

<了>
■黒木知宏/Tomohiro Kuroki
1973年12月13日生まれ。宮崎県出身。延岡学園高―王子製紙春日井―千葉ロッテ。愛称「ジョニー」でロッテファンならずとも多くの野球ファンに親しまれている。1995年千葉ロッテマリーンズ入団。1年目から小宮山、伊良部らとローテーションの一角として活躍。その後、最多勝、最優秀勝率など数々の賞を獲得し、日本代表としてシドニーオリンピックにも出場。2001年からケガに悩まされ続けるも、05年に執念の復帰を果たし2勝を挙げてチームも31年ぶりの日本一を達成! しかし、07年10月に戦力外通告を受け、惜しまれながらも同年12月に現役引退を発表。現在、ニッポン放送、 BS12 Twellv において野球解説を務めながら、「ジョニープロジェクト」を立ち上げ、自らを育ててくれた「野球」のさらなる発展、普及活動に力を入れている。
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