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最強メンバーでメダルに挑む韓国
北京五輪野球・直前リポート

4人の先発陣で大会に臨む

国際試合での経験も豊富な柳賢振は韓国投手陣の柱となる
国際試合での経験も豊富な柳賢振は韓国投手陣の柱となる【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

 昨年12月のアジア予選では敗れるも、3月の世界最終予選で五輪行きをつかんだ韓国。本戦にはこの2回の予選に出場した選手を主体に強力なメンバーで臨む。

 

 先発投手陣は、アジア予選で日本が対戦したときとは異なる顔ぶれだ。投手10人中、金卿文監督(斗山)が先発起用を明言しているのが4人。このうち、左腕・柳賢振(ハンファ・10勝)を除く3人は、アジア予選では代表入りしていなかった。その3人とは、昨秋、韓国シリーズで名を上げ、アジアシリーズでも中日相手に先発勝利した金廣鉉(SK・11勝)、米大リーグ・レッズ在籍時にワールドベースボールクラシック(WBC)で代表入りした奉重根(LG・8勝)、米マイナーリーグから昨年、韓国入りの宋勝準(ロッテ・9勝)だ。

 先発陣で唯一の右腕である宋勝準は、マイナーリーグでの豊富な経験を生かせる初戦の米国戦、あるいは右打者が多い2戦目・中国戦での先発が予想される。そうなると、4戦目の日本戦では、宋勝準を除く3人の左腕の誰かがマウンドに上がることになる。いずれも力のある速球と落差のある変化球を武器に、韓国プロ野球の奪三振部門トップ3を占める面々。どの投手が出てきても面白い戦いになりそうだ。


 そのほかの投手は中継ぎ4人、抑え2人で構成される。ブルペン陣も球威のある投手が多く、唯一制球力で勝負するのが抑えのサイドハンド・鄭大ヒョン(SK・18セーブ)だ。しかし、鄭大ヒョンは左ひざの故障で7月は安定感を欠いているため、本来は先発だが五輪ではリリーフ起用となる左腕の張ウォンサム(ウリ・8勝)への比重が大きくなるだろう。張ウォンサムは、6月以降安定したピッチングを続け6勝(1完封)2敗。五輪については「リリーフだからどの国相手に投げるか分からないが、できれば日本戦に投げたい」と意欲満々だ。

足を絡めた攻撃に注目

歴代最強クリーンアップの一角を担う金東柱。その打棒は相手チームには脅威だ
歴代最強クリーンアップの一角を担う金東柱。その打棒は相手チームには脅威だ【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】

 打撃陣は、代表チーム常連の李スンヨプ(巨人)、金東柱(斗山)、2006年の三冠王・李大浩(ロッテ)が歴代最強クリーンアップを形成する。これに加え、足を使える選手が多いのが予選からの特徴だ。世界最終予選では、俊足選手同士のレギュラー争いが生まれ、相乗効果として積極的な走塁が生きる場面が目立った。1番・李鍾旭(斗山・42盗塁)、2番・高永民(斗山・28盗塁)という打順が予想されるが、李鍾旭と同タイプで、世界最終予選では打率4割、大会トップの11得点を記録した李容圭(起亜・24盗塁)、長打力もある鄭根宇(SK・27盗塁)もスタメンの座を狙える存在だ。


 また、下位打線には高打率を残す選手が並ぶ。WBCでの度重なる美技から「国民的右翼手」と呼ばれ、アジアシリーズ決勝戦では岡本真也(当時中日、現埼玉西武)から同点2ランを放ち、国際試合で力を発揮する李晋暎(SK・3割3分6厘)、アジア予選では成瀬善久(千葉ロッテ)から左中間にタイムリー二塁打を放った李宅根(ウリ・3割2分5厘)と抜け目ない打線となっている。これらに加え、現在首位打者、20歳の金賢洙(斗山・3割4分2厘)が控えとして待機するなど、充実した打撃陣となっている。また、野手の中で4人が、金卿文監督が指揮をとる斗山の1番から4番を任される面々。さらに、三塁ベースコーチも斗山の金光洙コーチと、シーズンを共に戦うメンバーであることも1点を争う展開では、生きてきそうだ。

若いメンバーをまとめるベテランたち

 この数年間、代表メンバーの世代交代が進まなかった韓国。しかし、今回の代表投手陣は全て20代。また、金卿文というチームの若返りを成功させた監督を代表指揮官に据えたことで、ニューヒーローたちが代表の座をつかんだ。それと同時に、若い選手が多いということは、兵役義務の残る選手が多く含まれている。19歳から30歳までの男子に、2年間課せられる韓国の兵役義務。代表24選手中、半数以上の14人に兵役が残っている。兵役免除の条件は、オリンピックでのメダル獲得、またはアジア大会での金メダルが条件だ(第1回WBCでは4強入りで適用)。今回は野球が正式種目として行われる最後の五輪。兵役免除を手にするために、準決勝、または3位決定戦というメダルが懸かった戦いでの執念は、他国よりも一層強いものとなるだろう。


 これら若い選手をまとめるのがベテランたちだ。代表最年長35歳の内野手・金敏宰(ハンファ)と34歳の捕手・陳甲龍(サムソン)がその役を担う。陳甲龍はアジア予選で代表選考されたが現地台湾入り後、最終メンバーから漏れた。しかし帰国はせずチームに帯同。打撃投手などを務めチームのバックアップに尽力した。このような姿勢から、ナインから厚い信頼を受けている。両選手とも強力なリーダーシップを発揮するタイプではないが、背中で若いチームを引っ張っていく。


 金卿文監督は五輪での目標について「まず予選を通過すれば、次にメダル獲得の可能性が出てくる。選手たちはメダルを手にできるメンバーだと思う。いいチームワークと調和でメダル獲得に挑みたい」と語った。

 強力な左腕先発陣。どこからでも得点可能で、足も使える打撃陣。そして、真夏の戦いに挑める若さと精神力。今回の韓国代表は近年で最強ともいえる面々が集まり、メダル獲得へ闘志を燃やしている。


※記録は7月27日現在


<了>

室井昌也
室井昌也
1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。現在「室井昌也の韓国野球を観に行こう!」(ラジオ日本)に出演中。またWBCでは公式プログラムの執筆や中継局の情報提供を担当している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。