予期せぬ決勝=2008年コパ・リベルタドーレス
サプライズ続きの決勝トーナメント
リベルタドーレス杯で決勝に進んだフルミネンセの攻撃を支える元浦和のワシントン 【Photo:AFLO】
しかし2週間後、フルミネンセは同じマラカナンでの準決勝第2戦で、さほど苦しむことなく前年の王者を3−1で下し、決勝進出を果たした。63分まではパレルモの得点でボカが1−0でリードしていたが、元浦和のワシントンのゴールを皮切りに、フルミネンセが3ゴールを奪ったのだ。
ボカのホームで行われた第1戦は、2−2のドローで終えていた。本来であれば、ブエノス・アイレスにあるボカの伝説的スタジアム“ボンボネーラ”で開催されるはずだったが、ラウンド16のクルゼイロ戦で、観客席から大量の物を投げつけられた副審が負傷する事件が発生。ホームのボカには、今大会でのスタジアム使用禁止のペナルティーが科せられたのだった。
コパ・リベルタドーレスの“サプライズ”は、それだけでは終わらなかった。トーナメントのもう1つの山では、エクアドルのLDUキトがファイナリストとなったのである。輝かしい歴史があるわけではなく、今大会でも全くのアウトサイダー。しかし、決勝にまで進んだのは決して偶然ではない。何しろ、アルゼンチンのエストゥディアンテス、サン・ロレンソ、メキシコのクラブ・アメリカという手ごわいライバルたちを倒してきたのだ。
攻撃力のあるフルミネンセ、組織力のLDUキト
フルミネンセはブラジルのリオデジャネイロを本拠地とする強豪だが、これまで同郷のフラメンゴに次ぐ2番手の存在だった。ブラジルで最も人気があるクラブと言われるフラメンゴは、ジーコやアンドラーデ、ジュニオールを擁した81年には、コパ・リベルタドーレスで優勝。フルミネンセはまばゆい光の影に隠れていた。
現在フルミネンセを率いるのは、80年代に右ウイングとして活躍したレナト・ポルタルッピ。ピッチ外で物議を醸すことも多かったが、“悪魔的な”ドリブルでグレミオ、フラメンゴ、ローマなどでその名をはせた。
フルミネンセの快進撃を支えているのは攻撃陣だ。フェルナンド・エンリケは優れたGKだが、ディフェンスはお世辞にも強固とは言えない。破壊力抜群なのはアタッカー陣で、元仙台のチアゴ・ネービスはクレバーで才能溢れるMF。アルゼンチン人MFのコンカ、テクニックのあるFWドド、パワフルで得点力のあるワシントンがフルミネンセの攻撃を支える。
一方“リーガ”ことLDUキトは、戦術的に統制が取れているチームだ。率いるのはアルゼンチン人監督のエドガルド・ボーザ。南米のフットボール界ではよく知られる存在である。
チームには何人か国際的に知られた選手がおり、ウイングのジョフレ・ゲロンはエクアドルのフットボール界で将来を嘱望される一人。すでに多くのチームが獲得を狙っていると言われる。インディペンディエンテ、ニューウェルズ・オールドボーイズなどでのプレー経験もあるアルゼンチン人のダミアン・マンソは得点力のあるMFである。
新南米チャンピオンの行方は……
ラモン・ディアス率いるサン・ロレンソは、クラブ創設100周年の年に、何としてもタイトルを獲得しようと大型補強を敢行。ラウンド16では強豪リバー・プレートと対戦し、ホームでの第1戦を2−1で制した。第2戦では残り30分で、0−2のビハインド。しかも2人が退場と絶体絶命の状況に陥ったが、奇跡的に2−2の同点に追いつき、ベスト8進出を果たした。しかし、準々決勝でLDUキトの前に敗れ去った。
メキシコのクラブ・アメリカは、国内リーグでは低迷していたものの、コパ・リベルタドーレスでは快進撃を続けた。記者の投票による2007年南米最優秀選手のFWのサルバドール・カバニャスら、個人技に優れるタレントがチームを引っ張った。
クラブ・アメリカはラウンド16でフラメンゴ、準々決勝ではサントスとブラジルの強豪を撃破した。特にラウンド16のフラメンゴとの第2戦では、敵地マラカナンで3−0で勝利。第1戦を2−4で落としていたチームにとって、逆転は不可能だと思われていただけに、歴史的な1勝だった。だが、続く準決勝では伏兵LDUキトに競り負けた。
07年のコパ・スダメリカーナ決勝でアルゼンチンのアルセナルに敗れたクラブ・アメリカは、またしても頂点に立つことはできなかった。
南米のフットボール界は今、新たな南米王者のリストに名前の加えられるニューチャンピオンの誕生に注目している。覇者は十中八九、欧州王者のマンチェスター・ユナイテッドと、12月にクラブW杯の決勝で対戦することになるだろう。
<了>
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