限界を露呈したヒディンク・ロシア=ロシア 0−3 スペイン

中田徹

再戦で明らかになった、スペインとロシアの差

スペイン戦でのアルシャービン(右)は存在感を示すことができなかった 【REUTERS】

 グループリーグ初戦に続く再戦となった準決勝。立ち上がり15分間はスペインのペースだった。しかしロシアも遅攻でスペインのリズムを崩し、徐々にチャンスを作って行った。ロシアがDFからのビルドアップで狙っていたのが、いかにアルシャービンにグラウンダーのボールを通すか、ということ。この日の前半は、アルシャービンにボールが入ると、ロシアの攻撃にすご味が出ていた。

 しかし0−0のまま後半に入ると、スペインの一方的なペースになった。今大会の活躍で注目を浴びたアルシャービンとFWパブリュチェンコは、全くピッチ上で目立たなくなった。これもスペインの守備的MFセナが、イタリア戦に引き続き活躍したお陰だろう。また、アルシャービンとパブリュチェンコは、初めてのビッグトーナメントで、すでに力が入らなくなっていたのかもしれない。

「アルシャービンはアーセナルが注目」
「アルシャービンの夢はバルセロナ」
「アルシャービンにバルセロナが興味を持つ」
「レアル・マドリーがパブリュチェンコを獲得か」
 
 ギリシャ戦までは完全に大会のわき役だったロシアは、しかしスウェーデン戦での勝利から注目を浴び始め、アルシャービンとパブリュチェンコは、オランダ戦での劇的な勝利で大会の主役のような扱いを受けるようになった。そんな中、ベルギーの新聞は「静けさをなくしたことが、ロシアに影響を与えるかもしれない」と警告。一方、スペインの選手たちは、これぐらいの報道には慣れている。

 スペインもロシア同様、疲れていたはずだ。それでも、ロシアを上回るパフォーマンスを発揮できるのが、リーガでもまれている選手なのだろう。日常的に、ビッグリーグでプレーしているか、マイナーリーグでプレーしているか(ロシアは1人を除いて全員が国内リーグ所属)。ピッチの内外で、その差は大きかった。

 控えの選手の層、システムのバリエーションでも、スペインはロシアを上回っていた。ビジャの負傷退場により、前半途中に4−1−3−2から4−1−4−1の布陣に変えたが、後半から中盤の厚みが増してワンタッチフットボールがさえにさえ、シャビ(50分)、グイサ(73分)、シルバ(82分)と得点を重ねた。果たしてスペインは、ドイツとの決勝でも、このフォーメーションを採用するのだろうか。

ヒディンクのロシアでのチャレンジは続くか?

 こうして、ロシアの快進撃は終わった。
「今回の結果だけでなく、われわれが戦ったやり方にも誇りを感じている」とヒディンク監督。確かに、彼らの健闘は称賛に値する。しかしその健闘は、ハプニングに近いものでもあった。ロシアは今後、W杯やユーロでベスト4、ベスト8の常連になるような力をつけることが課題になる。

「もう一度、ロシアをサッカー界のビッグカントリーに返り咲かせること。それが私のチャレンジ」とヒディンクは言う。2010年W杯の予選では、ドイツと同組のロシア。今からさい配が楽しみだが、実はまだロシア協会とヒディンクは契約延長のサインをしていない。
「私と会長は握手をした。それで十分だと私は思っている」とヒディンクは言うものの、早く契約書にサインをして落ち着きたいところだろう。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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