ロシアを変えるヒディンク改革=ギリシャ 0−1 ロシア

中田徹

ピッチ内外で行われるヒディンク改革

ロシアサッカー界でさまざまな改革を行っているヒディンク 【Getty Images/AFLO】

 ロシア代表監督に就任した時、ヒディンクはロシアにとって重要なのは、サッカーのインフラの整備だと気付いた。
 ロシアでは、CSAKモスクワやスパルタク・モスクワなど、少数のクラブを除けば、スタジアムや練習環境が乏しい。ガス会社のスポンサードを背景にロシアでも屈指の強豪チームに登りつめたゼニトですら、スタジアムは時代遅れの古いものだ。
 ヒディンクはこれをもっと広い視点で見て、ロシアのサッカー界のインフラが整っていないのは、スポーツ環境が整っていないからではないか、と考え、元オランダ代表バレーボール監督のアルベルダをGMとしてロシアへ連れてきた。競技種目の異なるトップトレーナーの目からロシアのサッカー環境、スポーツ環境で改善すべき点を指摘してもらい、整えようとしたのである。この試みは残念ながら失敗に終わり、アルベルダはすでにオランダに帰国しているが、アイデアマンらしいヒディンクのトライだった。

 ピッチの上でもヒディンクの改革は進んでいる。代表チームは、これまでのロシアに根付いていた3バック(5バック)にしてMFも後方に残るリアクションサッカーから、4バックによるアクションサッカーへと変ぼうを遂げている。その成果はギリシャ戦で出た。
「2007年2月、われわれはオランダと試合をやって大敗した(1−4)。それからの進歩に私は満足している」
 ピッチの上でボールと試合を支配する、そんなヒディンク好みのチームにロシアは変わってきたのだ。

 次はスウェーデンとの“決勝戦”。
「スウェーデンの方が経験があり、われわれはアンダードッグだ。しかしアンダードックも何かができる」
 まるでスペイン戦前にも聞いたような発言をしたヒディンク。スウェーデン戦では、ゼニトの王様として、今季欧州サッカーシーンでセンセーショナルなプレーを見せたアルシャービンが、出場停止処分から戻ってくる。
 その一方で、アルシャービンに次ぐロシアのベストプレーヤー、ジルコフがギリシャ戦で負傷し、ギリシャ戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたストライカーのパブリュチェンコと攻撃的MFのビリャレトディノフも軽い負傷を負っており、実際にスウェーデン戦で起用できるか、これから見極めないといけない。
 勝負運の強いヒディンクだが、果たしてその手腕によってロシア対オランダのドリームマッチを実現できるか――スウェーデン戦は注目のゲームである。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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