関西からやって来る注目投手たち=全日本大学野球選手権直前リポート

島尻譲

近大の“T3”揃い踏みなるか

 関西学生リーグの優勝争いはリーグ戦中盤で近大と立命大の2校に絞られた。その直接対決で先勝しながらも2連敗を喫し、自力優勝の可能性が消えてしまった近大であったが、最終節で同大が立命大から勝ち点を奪ったことで逆転優勝。2年ぶり26度目の大会出場を果たした。このように苦しんでのリーグ優勝は自慢の投手陣の中心である巽真吾(4年=新宮高)、滝谷陣(4年=智弁和歌山高)、谷口友基(4年=大産大付高)のT3(ティースリー)が万全な状態でなかったからと言えるだろう。

 今秋のドラフトの目玉でもある巽は、投球フォームの試行錯誤で好不調の波が大きく、昨秋のリーグ最優秀投手の滝谷は左ひじの炎症で出遅れた。そこで谷口が先発からロング救援までフル回転。厳しい状況を何度も気迫溢れる投球で凌いだが、その疲れからかリンパ腺を腫らしてしまい、最後の対戦カードとなった関大戦では登板できなかった。ただ、巽は結果的にはリーグトップの5勝を挙げ、滝谷も試合勘を取り戻して復調の気配。谷口の体調も快復している。全国大会の舞台で3人が揃い踏みすれば1998年の第47回大会以来5度目の全国制覇への道が開けるはずだ。

新球種に手応えをつかんだ榊原に期待

新球種に新たな自信をつかんだ関西国際大・榊原。エースとしてチームを勝利に導けるか 【島尻譲】

 昨年の第56回大会で存在感を示した阪神大学リーグの関西国際大は2年連続2度目の出場。クレーバーな投球が信条の右腕・榊原諒(4年=中京高)と185センチの長身から角度のある球を投げ込む左腕・伊原正樹(4年=岡山共生高)の2枚看板がことしも健在だ。「この両投手を打ち崩さないと優勝できない」と、他校からの徹底マークを受け2敗を喫したものの10勝、勝ち点5でハイレベルなリーグ戦を制した。

 鈴木英之監督は「結果的には伊原の方が防御率とかはいいんやけれども、榊原の方が信頼度は上。だから、彼はエースなんですよね」と語る。これまで榊原はスライダーが決め球という印象が強く、それを狙い打たれたり、左打者への攻め方が単調になってしまうことがあった。しかし、落ちる球(フォークとチェンジアップ)を完全習得。「アイテムが2つ増えたことで、それ以上に選択肢が増えましたね」(鈴木監督)の言葉通り、さらに幅広い投球が可能になった。
「左打者も含めて楽になった部分はあるし、勝てる投手としてのステップアップにもなると思う」
 榊原自身も新たなる手応えをつかんでおり、2度目の大学選手権で頂点を目指す。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント