フェルナンド・トーレス「スペインの人々の期待に応えたい」 新世代の象徴が語るスペイン代表の未来

ベストコンディションで本大会に臨める

今季は移籍1年目のリバプールでも活躍。フェルナンド・トーレスはプレミアリーグで33試合に出場、24ゴールを挙げた 【Getty Images/AFLO】

――今大会の優勝候補はどこだと思う?

 ポルトガル、フランス、イタリア、そしてオランダだと思う。

――今大会ヒーローになる選手は?

 候補はたくさんいるよ。クリスティアーノ・ロナウド、ナニ(共にポルトガル)、ルカ・トーニ(イタリア)、フランク・リベリー(フランス)……。でも、スペイン代表のセスク、イニエスタにだってチャンスはあると思うよ。

――グループD(ギリシャ、スウェーデン、スペイン、ロシア)で勝ち抜けるのはどこだと思う?

 より可能性があるのはスペインとスウェーデンだと思う。予選でもいい戦いを見せていたし、いい選手もそろっている。伝統もあるしね。ただ、本番での力関係なんて、誰にも分からないよ。

――スウェーデンにはズラタン・イブラヒモビッチという、君と同じストライカーがいる

 彼はクラック(名手)だと思う。すべてを持っている完成されたストライカーだ。ユベントスやインテルでの活躍は皆が知っている。スウェーデンは海外、特にプレミアリーグで経験を積んでいる選手が多いし、チームとしてまとまっている。弱点を挙げるとしたら、攻撃がイブラヒモビッチに偏り過ぎていることかもしれない。とはいえ、傑出した選手を抱えるチームとしては、仕方がないことだとは思う。

――君個人として、ユーロで成功するために必要なことは何だと思う?

 今シーズン、プレミアリーグでやってきたプレーを継続することだと思う。プレミアはあこがれだったし、今まで夢見ていたことが実現したシーズンだった。幸いにも僕はリバプール1年目で結果を残し、ヨーロッパ中にストライカーとしての名を刻むことができた。ユーロでもプレミアと同じような活躍ができるかは分からないけれど、フィジカル的にも精神的にも、ベストコンディションで本大会に臨めると思う。

――もし君のコンディションが上がらなかったとしたら、チームに与える影響は少なくないと思うけれど……

 それはどうだろう? 今のスペインは1人の選手に頼るような戦い方はしていないよ。たとえ僕がいなかったとしても、アラゴネス監督がフォーメーションや選手起用について、何らかの決断を下すはずだ。攻撃のパターンは一つじゃないしね。もちろん、僕自身に何も起こらないことを祈るよ(笑)。

「スペイン代表」は選手個々の名前より大きなものだ

――スペインが成功するために、セスク、セルヒオ・ラモス、ビジャの果たす役割はどのくらい重要だろうか

 彼らは皆、偉大なプレーヤーだし、キャリアの中でも絶頂の時期にいると思う。でも、スペインにとってはすべての選手が重要だ。それぞれがチームの中で役割を持っている。もちろん、彼らのプレーが人々の印象に残っていることは理解できるし、それに値する活躍を見せてきた。でも、スペイン代表は選手個々の名前よりも大きなものだと思う。チームの中で、それぞれが重要なトロフィーを勝ち取るために迷いなく戦うことができれば、きっと素晴らしい経験になるんじゃないかな。それがチームのために戦うということだ。

――君やセスクのように、海外のクラブでプレーしている選手が後進に与える影響は大きいと思う?

 そうであってほしいね。現在、多くのスペイン人選手がヨーロッパ各地のクラブでプレーするようになったけれど、僕らがいいイメージを与えられているということはあると思う。海外のスペイン人と言えば、まず僕らのことが思い浮かぶだろうし、各クラブがスペイン人選手を獲得する際の基準になっているだろうね。そして、徐々にスペイン人選手は移籍市場で信頼され始めていると思う。それに、選手のメンタル面でも助けになっているんじゃないかな。新しいクラブでもリスペクトされていると感じるだろうし、先に海外へ出ていった選手から情報を得ることもできるからね。

――最後の質問だ。ラウルはスペイン代表に不要だと思う?

 その質問に答える立場に僕はない。チームの一員だし、僕自身が(ラウルと同じ)ストライカーだからね。僕がメンバー選考にかかわったわけではないけれど、個人的な意見を言えば、ラウルはスペイン代表、そしてスペインフットボール界のシンボルだと思う。今シーズンの彼は特に素晴らしいパフォーマンスを見せていたし、たくさんのゴールも決めていた。それに、ラウルの勝者としてのメンタリティーが、精神面でチームに与えてくれる力はとても大きいんだ。ラウルはもう長い間スペイン代表から離れていたのは事実だけれど、ユーロで彼がいないのは、僕らみんなが不思議な気持ちになるだろうね。かつて、大舞台にはいつもラウルの姿があったから。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント