フランス代表から遠ざけられたトレゼゲ

 ダビド・トレゼゲがユーロ(欧州選手権)のフランス代表メンバーから外れた。彼ほどのプレーヤーに対してはアンフェアともいえる扱いだ。果たして何が起こったのか。

 バフェティンビ・ゴミスは疑いなく良いFWで、来季は松井大輔のチームメートになるサンテティエンヌの選手である。フランス在住のセネガル人家族を持つゴミスは、ヘンリク・カスペルチャク前監督からセネガル代表入りを打診されていたが、断り続けていた。それは、“レ・ブルー”(フランス代表の愛称)での栄光を夢見ていたからだ。レイモン・ドメネク監督が30人のメンバーにゴミスを選出したのは、そういう背景からだ。

“パンサー”のニックネームを持つゴミスは、サンテティエンヌで32試合に出場して16ゴール、そのうち6点は最後の8試合に記録されている。セネガルに奪われる前にフランス代表に取り込んだ判断はさておき、それでトレゼゲを外す必要があったとも思えない。アルゼンチン出身のストライカーは代表71試合で34ゴール、今のところフランスでは最高の得点率である。しかし、トレゼゲはユーロのメンバーに選出されていないのだ。

 昨季は、まだ不選出の理由もあった。トレゼゲはセリエBでプレーしており、フランス代表選手としてはプレー環境が十分でないと言うこともできた。しかし、今季は事情が違う。ユベントスはセリエAでプレーして、フィオレンティーナやミランよりも上位の3位という好成績。しかも、トレゼゲは得点ランキングで2位、トップはチームメートのアレッサンドロ・デルピエロだが、その差はわずか1ゴールに過ぎない。デルピエロは1点多くPKを決めているだけなのだ。戦術重視のイタリアでの8シーズンで216試合に出場して通算130得点は、例外的というほかない。ボリエッロ、ディナターレ、イブラヒモビッチ、ムトゥといったトレゼゲのライバルたちは、そろってユーロに出場する。だが、トレゼゲは招集されていない。

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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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