親子2代でやられたポルトガル 市之瀬敦の「ポルトガルサッカーの光と影」

市之瀬敦

先行きの不安な欧州でのポルトガル勢

ゴールを祝うリサンドロ・ロペス(左)と、ブルーノ・モラエス。FCポルトは、CLのグループリーグ第3節でハンブルガーSVに完勝した 【Photo:Getty Images/AFLO】

 17、18日にはチャンピオンズリーグ、グループリーグ第3節の試合も行われた。本戦に参加しているポルトガルの3大クラブは、明暗がはっきりと分かれてしまった。ホームにハンブルガーSVを迎え撃ったFCポルトは本領を発揮、4−1で大勝した。9月の2試合ではCSKAモスクワと引き分け、そしてロンドンではアーセナルに敗れたポルトだが(その直後、国内リーグで“ポルトガルのアーセナル”ことスポルティング・ブラガにも敗れた)、この勝利で息を吹き返すことができるかもしれない。

 一方、グラスゴーに乗り込んだベンフィカは、中村俊輔のセルティックに0−3と、予想以上の大差をつけられて、痛い敗北を喫した。ちなみに、セルティック対ベンフィカの対戦に関しては、実はこのスコアに前例がある。
 古い話だが、37年前の11月、両チームはチャンピオンズカップの2回戦で対戦し、まずグラスゴーでセルティックが3−0で勝利した。そして2週間後、今度はリスボンでベンフィカが3−0で勝利。当時のルールに従い決着はコイントスに委ねられ、結局はセルティックが勝ち上がったのだった(決勝でフェイエノールトに敗れた)。69年といえば、エウゼビオの時代の話である。
 2006年も、37年前と同様、リスボンで同スコアによるリベンジがなるのかどうかは分からないが、3試合を消化し、まだ勝ち点1しか挙げていない状況を思うと、ベンフィカは限りなくUEFAカップに近づいてしまったような気がする。大逆転のためには、ホームでセルティックとコペンハーゲンに連勝するしかない!

 また、アルバラーデ・スタジアムにドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンを迎えたスポルティングも0−1の悔しい敗戦を味わった。バイエルンがポルトガルのチームに負けたのは、1987年のチャンピオンズカップの決勝戦(対FCポルト)だけという歴史を変えることは、またしてもできなかったのである。順位はグループ2位につけているとはいえ、厳しいアウエーの戦いがこの先も待っており、決勝トーナメント進出に向けて楽観視はまったく許されない。

 そして、UEFAカップでの生き残りも、すでにブラガのみとなっている。少し気の早い話だが、2年後のUEFAの大会でポルトガルから参加できるチーム数が1つ減らされてしまうのではないかと、ちょっと心配になるのである。

国内リーグの驚きは無名のナバル

 すでに第7節を終えたポルトガルリーグ。首位にはFCポルト。同一勝ち点ながら得失点差でスポルティングが2位。そして、スタートにつまずいたベンフィカも勝ち点13で3位に順位を上げてきた(ベンフィカは開幕戦が取りやめになったため1ゲーム少ない)。ブラガとナバルも得失点差で4位と5位につけている。こうしてみると、早くも例年通りの優勝争いといった趣になるが、ブラガとナバルの健闘がなかなか光っている。

 昨シーズンも首位争いに絡んだブラガは最終的に4位に食い込み、UEFAカップの出場権を獲得した。今季は開幕直前にジェズアルド・フェレイラ監督をFCポルトに引き抜かれたものの、ウーゴ・レアル、ベンデル、パウロ・サントスら、昨季までの主力選手が残り、そこにボアビスタから移籍して来た、あのFWジョアン・ピントも加わり、安定した戦いぶりを見せている。特にホームにFCポルトを迎え撃った第5節では、2−1で勝利を収め、敵将フェレイラ監督に去年より強くなっているとまで言わしめた。
 また、ブラガはUEFAカップでも、ポルトガルのチームとしては唯一1回戦を勝ち上がっている。冷静に戦力を見れば、国内リーグとUEFAカップを同時に勝ち抜くことは難しいだろうけれど、1つでも多くの勝利を積み重ねてほしいものである。

 ブラガの活躍は予想の範囲内だが、ここまでのナバルの躍進は驚き以外の何物でもない。昨季はぎりぎりのところで降格を免れたチームだが、今シーズンはロジェリオ・ゴンサルベス監督の下、選手同士がよくサポートし合い、パスをつなぎ、そしてフェアなサッカーを展開している。
 チーム力を分析すれば、現在の5位という順位を最後まで維持することは非現実的だろう。彼らの現実的な目標は1部残留である。しかし、「サプライズ」のないリーグ戦はつまらない。誰かがリスクを冒さなければ、マンネリが続くだけとなる。今季はブラガとナバル。とりわけ日本ではまったく無名のクラブ、でも有名な観光地フィゲイラ・ダ・フォスのナバルにそれを期待したい。

<この項、了>

2/2ページ

著者プロフィール

1961年、埼玉県生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授。『ダイヤモンド・サッカー』によって洗礼を受けた後、留学先で出会った、美しいけれど、どこか悲しいポルトガル・サッカーの虜となる。好きなチームはベンフィカ・リスボン、リバプール、浦和レッズなど。なぜか赤いユニホームを着るクラブが多い。サッカー関連の代表著書に『ポルトガル・サッカー物語』(社会評論社)。『砂糖をまぶしたパス ポルトガル語のフットボール』。『ポルトガル語のしくみ』(同)。近著に『ポルトガル 革命のコントラスト カーネーションとサラザール』(ぎょうせい)

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント