オーバーエイジ起用の必要性=U−23日本代表対アンゴラ代表

スポーツナビ

アンゴラの個人能力の前に勝ち切れず

北京五輪イヤーである2008年の反町ジャパンの国内初戦となったアンゴラ戦は、1−1の引き分けに終わった。A代表相手に引き分けたこと、試合の主導権を日本が握っていたことから、メディアなどでは好意的なムードが漂っている。だが、私はこの試合でU−23日本代表の個の力の限界を見た気がしている。

 水本裕貴、安田理大、内田篤人がA代表に、そして海外組の本田圭佑や水野晃樹は招集されず、梶山陽平、本田拓也も負傷で合宿を離脱。さらに昨年の最終予選で主力だった家長昭博、柏木陽介は負傷のためにメンバー外。この日の日本のスタメンは、昨年とは大きく変わっていた。
 GK西川周作、伊野波雅彦、青山直晃に、2月の米国遠征からU−23代表に招集されている森重真人を加えた3バックが守備を固める。ほとんどの主力を欠く中盤から前は、細貝萌、青山敏弘がダブルボランチ、梅崎司がトップ下、長友佑都が右で上田康太が左、2トップには李忠成と久々に代表復帰した豊田陽平が入った。

 試合前日に来日したアンゴラは、開始からいきなり足が重い。アンゴラは、マーキングがいい加減で、日本の選手が2列目やサイドをフリーランニングすれば、簡単にフリーでボールを受けることができた。ただ、そこで発揮されるのがいわゆる、身体能力というやつだ。梅崎が「抜いたと思うところでも反転してくるのが速かった」と言うように、完全に裏を取っているのに、驚異的なスピードでぎりぎりで追いついてくる。前半28分に豊田が裏に抜けたときも、シュートモーションに入っている間にDFがシュートブロックに戻ってきた。
 足の長さが違うため、間合いも違う。梅崎がドリブルで引き付けてパスを出そうとしても、引き付けている間に相手の足が伸びてきて、ボールを絡め取る。前半途中からはアンゴラが高い個人能力でボールを支配し、日本を押し込んだ。

 後半に入るとさすがに前日に来日したツケが出たのか、アンゴラの運動量はさらに減って、ボールホルダーと受け手だけが動くプレーに終始。チーム全体の連動を目指す日本とは対照的なサッカーとなった。後半8分には、この日再三、右サイドでチャンスを作った長友の低いクロスを豊田が決めて日本が先制。これで試合は決まったかと思われたが、そこから個人の力だけで何とかなってしまうのが、ブラックアフリカのサッカーだ。後半31分には、日本のミスもあったが、マヌーチョが素晴らしい瞬発力で日本DF2、3人を振り切って中央にクロス。これをジャンジが決めて、アンゴラが同点に追いついた。この後も日本が攻めたが、最後の最後に伸びてくる相手DFを突破することはできなかった。

日本の個の力の限界

 試合後の会見で、反町監督の口からは珍しく、「非常にいいゲームだった。個々またはグループとして、対等、または後半は対等以上に戦えた」とポジティブな言葉が出た。
 ただ、これは少し過大評価ではないか。というのは、アンゴラのコンディションがあまりに悪すぎたからだ。26日に来日したアンゴラは、試合開始時刻である19時15分までに、たったの29時間しか日本に滞在していない。アンゴラとの時差は8時間。20時間以上のフライトを経て来日したアンゴラのコンディションは最悪だった。「アンゴラは前半の最初、始まったときに足が止まっていたし、後半もバテていた」(梅崎)と、実際に対峙(たいじ)した選手はよく分かっている。

 そんなアンゴラに対して、反町監督が言うように「グループとして」は十分に戦えたと言えるだろう。3、4人が絡むプレーでは、日本がアンゴラを圧倒していた。ただ、「個々」で勝っていたかと言うと、疑問符がつく。特に後半は右サイドの長友や途中出場した香川真司がドリブル突破してチャンスを作るシーンはあったが、試合全体として日本はアンゴラの個の対処に苦労していた。失点シーンなどはまさに個の力が出た部分で、日本DFは完全に振り切られていた。

 香川や長友、森重のように2月の米国遠征を経験した選手が戦力になることが確認できたことは収穫で、これまでの主力が不在でも、A代表のアンゴラ相手に引き分けたことは、全体のレベルが上がっていることを表している。
 しかし一方で、日本の個人勝負での状況打開の限界を感じたこともまた事実で、これは今回不在の主力が戻ってきても大きくは変わらないだろう。コンディション不良のアンゴラがここまでやるのだから、ベストコンディションで北京五輪に臨んでくる世界の強豪はいったいどんなプレーをするのか。今の日本が互角に戦えるとは思えない。

<続く>

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