オーバーエイジ起用の必要性=U−23日本代表対アンゴラ代表

スポーツナビ

OA枠を使う理由

 私はオーバーエイジ(OA)枠はフルに使うべきだと考えている。それもなるべく早くにアナウンスして、一緒に練習すべきだと。
 そう考える理由は2つある。1つはより良い成績を得るため、もう1つは北京五輪以後の、この世代のA代表への融合を早めるためだ。

 五輪では、アルゼンチン、ブラジル、カメルーン、ナイジェリア、コートジボワール、オランダ、イタリアなど、この日対戦したA代表のアンゴラ以上に個の力がある国と対戦する可能性が高い。これらの国のOA候補として、カカやロビーニョ(ブラジル)、リケルメ、マスチェラーノ(アルゼンチン)、ドログバ(コートジボワール)、セードルフ(オランダ)といった世界のトップ選手の名前がメディアをにぎわせている。
 日本よりもタレントがそろっている国が、さらにOA枠で世界トップの選手を加えようというのに、日本がOAを使わない理由は何なのだろう。もちろん、OA選手を呼んだとしても、個人の能力に活路を見いだそうという訳ではない。日本の売りは個ではなく、チームとしての組織立った連動性だ。だが、弱い個が連動して作る組織よりも、強い個で作る組織の方がより強固なのは明らか。日本は、なるべく強い個、つまりA代表バリバリの主力級をOAに呼ぶべきだろう。

 新たにOA選手をチームに加えると、これまで作ってきた組織が崩れる危険性も指摘されている。しかし、それならなおのこと、一刻も早くOA候補選手をチームに合流させるべきではないか。アテネ五輪の時は、OAの曽ヶ端準は事前合宿から参加していたが、それでも6月末から。小野伸二に至っては、チームに合流したのは8月に入ってからで、たった10日程度のトレーニングでアテネ五輪本番を迎えている。案の定、小野の役割とポジションは一貫せず、チームもうまく小野の力を生かすことができなかった。日本はこのときの教訓を生かさなければならない。

「OAの選手が入ることで、練習からいい経験ができると思う。ポジションを失うかもしれないという危機感も出てくるし」と青山直が言うように、レベルの高いOA選手と一緒に練習することで、五輪世代はより上のレベルを感じることができ、さらに本大会メンバー入りに向けて競争意識の高まりも期待できる。

 すでにブラジルは、五輪代表チームの監督を兼任するドゥンガの下、若手選手を多く招集して親善試合を行っている。五輪には出場しないが、フランスはA代表とA’代表として、若手を含む40名程度の選手を招集。そして一緒にトレーニングをし、2チームが練習試合を行っている。こういう試みを日本も取り入れてみてはどうだろう。

 過去に、五輪世代が2年後のワールドカップ(W杯)出場メンバーに最もうまく吸い上げられたのは、両代表の監督を兼任していたトルシエ監督のときだ。監督が別々の場合は非常に困難で、1996年アトランタ五輪のメンバーの中で、98年W杯・フランス大会のスタメンに名を連ねたのは、川口能活、城彰二 、中田英寿の3人。フランス大会はほかの選手も控えメンバーに入っていたのでまだいいが、2006年W杯・ドイツ大会では、メンバー入りしたのが茂庭照幸と駒野友一の2人だけだった。
 反町監督はかねてから「A代表に選手を送り込むこと」も五輪代表チームの目的として掲げてきた。ならば、五輪以後をにらんでOA選手をチームに呼び、合宿なり試合なりを行うべきではないか。

反町監督には物言う監督になってほしい

 今のところ反町監督はOA枠を使うかどうかを明言していない。アンゴラ戦後の会見では、「現時点ではU−23の選手を強化することが第一です。なぜかというと、OAの選手は3人だからです。ですから、3人を決めてから枝をU−23の選手にするのではなくて、U−23の選手を幹にして、それから枝をどうするかというところで、もしかしたらオーバーエイジの可能性が出てくるかもしれないということです」と、その理由を説明する。

 だが、これまで述べてきたようにOA選手起用のメリットは大きい。まずU−23世代の構想を固めてからOAを加えるのではなく、OAも候補数名を一緒に合宿させてそこから選んでいけば、チームの幹、枝を一緒に選考できるのではないか。
 もちろん、これには所属チームの理解やA代表との兼ね合いがある。これはあくまで想像だが、指揮官のOA構想はすでにある程度できているのではないか。というより、考えていないとむしろおかしい。ただ、チームや協会への配慮から、口にできないのだろう。

 しかし、北京五輪はもう4カ月後に迫ってきている。強化日程を見ると、4月に合宿があり、その後は5月のツーロン国際大会を経て、壮行試合数試合があるのみ。時間はそれほど残されていない。
 思えばこのチームは、2006年のアジア大会でも、07年の4カ国対抗戦でも周囲の事情によってベストメンバーが組めず、強化の機会を十分に生かせなかった。その都度、反町監督は「与えられた環境の中でやる」と口にしてきた。だが、今こそ反町監督は声を大にして、自分が一番仕事がやりやすい環境を要求すべきだろう。満足いかない環境で強化し、仮に敗れた場合でも、その結果がこの世代への評価となってしまうのだから。反町監督には物言う監督になって、最適な強化環境を確保してもらいたい。

 26日には、ナイジェリアが北京五輪への出場権を獲得し、出場16カ国が出そろった。中国、日本、韓国、オーストラリア、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリア、ベルギー、イタリア、オランダ、セルビア、米国、ホンジュラス、ニュージーランド、ブラジル、アルゼンチンと、世界の強豪国がずらりと並ぶ。こうした国を相手に、日本はどう太刀打ちするのか。反町監督の英断を期待したい。

<了>

(編集部=渡邊浩司)

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