靭帯損傷…五輪目前の大けがから3年 モーグル女子、戻ってきた伊藤と村田

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村田と伊藤、二人で計4つのメダル獲得

3年前のソチ五輪時期に、大けがを負った村田(左)と伊藤。冬季アジア大会では、2種目で表彰台に立った 【写真:アフロスポーツ】

 女子モーグル界で日本の先頭を走る2人が、国際大会の表彰台に帰ってきた。26日に閉幕した冬季アジア札幌大会で、2014年ソチ五輪代表の村田愛里咲(行学学園)が金メダル1つ、銀メダル1つ、06年トリノ五輪からソチ五輪まで3大会連続出場の伊藤みき(北野建設スキークラブ)が2つの銅メダルを獲得した。

 24日のデュアルモーグルに続き、26日に行われたシングルでも3位に入った伊藤。「決勝はすごく緊張しました。(トップで)戦えている中での緊張というのがワールドカップ(以下W杯)では無かったので、優勝を狙っている1人として戦えている感覚を得られたのが今日の手応えです」と、国際大会では久しぶりとなるメダル争いに満足げな表情を浮かべた。

 シングルを制した村田は、今シーズンから2季ぶりにW杯復帰を果たしたばかり。「(ソチ五輪で痛めた)膝はすごく調子が良くて、(滑りも)だいぶ戻ってきました。(けがをする前と比べて現状は)60〜70パーセント、もう一息だと思います」。

膝の大けがからはいまだ復調途上

ソチ五輪会場での公式練習で、痛めていた箇所を再び負傷した伊藤(写真中央) 【写真:アフロ】

 2人ともソチ五輪では悲劇に見舞われた。伊藤は痛めていた右膝の靭帯損傷を予選前の公式練習で悪化させ、フィニッシュラインを越えた後は自力で起き上がることもできず。「I can, I can!」と涙声で出場を訴える姿はテレビにも映し出された。村田は決勝ラウンド前の公式練習で左膝の前十字靱帯を損傷して無念の棄権。以後、2人は長いリハビリに励むこととなった。

 先にW杯へ復帰したのは伊藤。15年ー16年シーズンから世界の舞台に戻ったが、今に至るまで最高成績は11位と、ソチ以前の表彰台、上位入賞を重ねていた頃の姿からは程遠い。村田も同じタイミングで復帰が予定されていたが、結局W杯に出場できたのは昨年の12月から。3シーズンぶりの復帰を果たしたものの、まだ決勝に残ることもできていなかった。

 けがした下半身を守ろうと筋力トレーニングに励んだ結果、全体のバランスが変化し「上半身がブレるようになった」(伊藤)など、体を以前と同じ状態に戻すのは至難の業。29歳(伊藤)、26歳(村田)と20代後半の2人はかつての滑りを取り戻そうともがき続けた。

「やっと戻ってきた」

日本開催の大会で、結果を残した二人。平昌へ向かってそれぞれ歩みを続ける 【写真:ロイター/アフロ】

 来年はあの悲劇から丸4年経ち、ふたたび五輪がやってくる。伊藤と村田がメダルを目指すのならば、ここから急な上昇曲線を描かなければならない。しかし14年ぶりの自国開催で大きな声援を浴びた2人は、札幌で一定の手応えを得たようだ。

「今日みたいに自分の良い滑りをし続けていくことが、これから勝てる場所に戻っていく唯一の方法だと思います。どんな時も、どんな条件でも勝てる条件を自分で作っていきたいです」(伊藤)

「けが前にやっと戻ってきたなという感じなんです。平昌へ向けて第2の地元である札幌でこのような結果を出せたのは次につながりますし、練習を重ねて頑張ります」(村田)

 他の選手たちから遅れること3年、平昌へ続く道のスタートラインに、ようやく2人が帰ってきた。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)
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