田中将大、活躍するほど周囲はザワザワ シーズン後契約解除しFAの可能性は?
2016年はヤンキースのエースとして十分な成績を残した田中 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
昨季の田中は31試合で14勝4敗 防御率3.07、165奪三振と堂々たる成績を残し、登板数、勝ち星、イニング、奪三振などは軒並みキャリアハイだった。防御率はア・リーグ3位と見事な安定感を披露。上質な投球を続ける過程で、“右ひじへの懸念”“一発病”“中4日への不安”といった課題もすべてクリアしていった。
あら捜しと詮索が好きなタブロイド紙が主流のニューヨーク・メディア。ファンは地元選手にも厳しいことを売り物にしている感すらあり、プレーヤーにとって必ずしもやり易い環境ではないのだろう。
その一方で、どの国から来た人間でも、力を見せれば仲間として認めてくれるのがこの街の特徴でもある。厳しい視線に見守られながら、一歩ずつ階段を登り、田中は今ではニューヨーカーからもリスペクトされる存在になったと言っていい。
そして、28歳という脂が乗りきった年齢で迎える17年。過去最高のシーズンを過ごすかもしれないという期待以外に、田中の一挙一動がこれまで以上に注目される理由がもうひとつある。14年1月にヤンキースから7年1億5500万ドル(当時のレートで約161億円)の契約を受け取った日本産の右腕は、4年目である今季終了後、契約オプトアウト(契約破棄条項)権を得る。残り3年6700万ドルの契約をまっとうするのではなく、FAになって新しい契約を模索する権利を手にするのだ。
近年よく聞くオプトアウト権とは?
システム自体は90年代から存在したが、注目を浴びたのは2000年12月にアレックス・ロドリゲス(A・ロッド)がレンジャーズと10年2億5200万ドル(約277億円)の契約を結び、7年目終了後のオプトアウト権を授与されたとき。結局、A・ロッドは07年オフに契約破棄した上でヤンキースからFAとなり、10年2億7500万ドル(約248億円)の契約を結び直した。
こんなケースが先駆けとなり、最近では多くのスター選手の長期契約にはオプトアウト権が含まれるようになった。特に1年前のオフはデービッド・プライス(レッドソックス)、ジョニー・クエト(ジャイアンツ)、ジェーソン・ヘイワード(カブス)ら、大型契約の大半がオプトアウト条項を含むものだった。この制度がこれほど流行になったのは、選手、チームの両方にそれぞれメリットがあるためである。
オプトアウト権を選択、行使するのは選手なのだから、いわゆる“プレーヤー・フレンドリー(選手に有利)”なシステムであることは間違いない。年俸に見合うだけの活躍ができなかった場合、オプトインすれば以降の給料は保証される。ほぼ確実に昇給が望めそうなときにだけオプトアウト権を行使してFAになればいいわけで、この権利が欲しくないスタープレーヤーなど存在しないはずだ。
選手だけでなくチーム側にメリットも
2人は年齢的にも今が全盛期だけに、故障ががない限りはオプトアウトの可能性は高い。つまり、30歳のクエトとジャイアンツの契約は事実上は2年4600万ドル(約52億円)、31歳のプライスとレッドソックスは3年9000万ドル(約102億円)も同然という考え方もできる。
この両チームはピークのパフォーマンスが期待できる向こう2、3年を念頭に置き、エース級投手に巨額投資を行ったのだろう。もちろん故障、低迷のリスクは残るが、リスキーではない高額契約など存在しない。“結局は短期で済む長期契約”が可能になったこと自体が、チーム側にとってのアドバンテージと言っていい。