田中将大、活躍するほど周囲はザワザワ シーズン後契約解除しFAの可能性は?

杉浦大介

田中にとっては最高のタイミング

17年シーズンへ向け調整する田中、シーズン後にどんな選択をしているか? 【写真は共同】

 さて、それでは1年後にこのオプトアウト権を得る田中とヤンキースの間で、どんなシナリオが展開されていくのか。総合的に見て、田中はほぼ最高のタイミングで再びFAになる可能性は高い。

 14年に負った右肘じん帯部分断裂の不安を語る声はもうほぼなくなり、右ひじから骨片を除去する手術直後だった昨季のような懸念材料もない。元来の聡明さを考えれば、昨季の成功の後でも気を抜くとは考えられない。3年連続の開幕投手、日本人初となるデビューから4年連続の二桁勝利は有力だろう。

「(自分はマウンドを)降りるイニングが早いと思うんです。本当にトップのピッチャーは100球以上投げる。チームがこれまでの僕の2年間を踏まえて大事に使ってくれているというのはあるんですけど。そこも関係なしに、投げていけるようになっていけば、(エリートレベルに)近づいていけるのかな」

 昨季終了時、今後の課題についてそんな風に説明してくれたのが記憶に新しい。案の定、キャンプ入りを前に、田中は今季の目標としてイニング数を稼ぐことを挙げたという報道が届いている。

 昨季は199回2/3に終わったイニングがついに200イニングを越えれば、また新たな勲章が手に入る。マーケット価値も改めて跳ね上がる。その後に契約オプトアウトしてFAになれば、ジェーク・アリエッタ(カブス)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)とともに、田中が目玉商品となることも十分に考えられる。

ヤンキースの判断にも注目

 ここで気になるのは、田中がFAになった場合、ヤンキースが再び大枚を叩いて再契約に動く意思があるのかということ。過去にA・ロッド、CC・サバシアとの長期契約延長で痛い目にあっただけに、微妙かもしれない。クエト、プライスのケース同様、もともと“20代の働き盛りの田中”に照準を合わせ、ヤンキースはオプトアウト権を組み入れていたとしても驚くべきではない。だとすれば、今季に田中が活躍すればするほど、移籍の可能性が膨らむという見方もできる。

 もちろん現時点ではすべては推測に過ぎない。チーム状況、成績次第で事情は変わり得るし、本人の意思、チームへの愛着の度合いもわからない。それゆえに、田中の将来は現時点では極めて読みづらい。

 はっきりしているのは、エースの契約オプトアウト権が今季のヤンキースで最大級の話題になっていくということ。現代のメジャーリーグのトレンドとなった制度をめぐり、17年を通じ、田中の周囲では騒がしい日々が続いていきそうである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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