18年ぶりトヨタ参戦で注目集まるWRC チャンピオン撤退で混戦模様か?

田口浩次

2016年のラリー・モンテカルロ 【写真:WRC】

 トヨタの18年ぶりワークス参戦とあって、注目を高めているのがWRC(世界ラリー選手権)だ。今週末(現地時間1月19日〜22日)は開幕戦のラリー・モンテカルロ(モナコ)が開催される。その直前の状況とともに、2017年のWRCを簡単に紹介しよう。

 まずWRCとは、1973年にスタートしたFIA(国際自動車連盟)が認可・主催する世界選手権のこと。サーキットを中心に一斉に全車スタートして順位を競うレースとは違い、一般道の一部を区切り、そこを1台ずつ走行してタイム計測するタイムアタック方式で競う。また、レースは周回数や時間でスタートからチェッカーを受けるまでとなるが、ラリーではタイムを計測する区間(SS=スペシャルステージと呼ぶ)をいろいろと変えて、WRCでは3日もしくは4日間かけ、イベントによっては20以上のSSを走行し、その合計タイムでもっとも速いドライバーを決める。

 また、最大の違いは、ドライバーが一人だけ乗り込むレース車両と違い、ラリーでは助手席にナビゲーターやコ・ドライバーと呼ばれる、ドライバーに次のコーナーの方向や角度などを指示する相棒(ここではナビと呼ぶ)が同席することだ。単純にマシン性能やドライバーの腕だけで勝負するレースとは異なり、ナビの能力やドライバーとの相性が勝負のポイントになる。走行中の会話などもテレビ中継されることから、より人間味が見えるモータースポーツともいえる。

王者VWの撤退でDNAが分散

2016年のラリー・モンテカルロ。アルプスをバックに、フランスの山岳地帯を走行する 【写真:WRC】

 そんなWRCに今年参戦するのは、フォード、ヒュンダイ、シトロエン、そして18年ぶりに復活したトヨタ。この4つの自動車メーカーがワークスとして挑戦する。実は昨シーズンまで4年連続で王者を獲得したフォルクスワーゲン(VW)が参戦していたが、米国で発覚したディーゼルエンジンの排ガス不正問題に影響を受ける形で、昨シーズン終了後に撤退を発表した。

 この撤退は本当に突然決定したもので、チームは17年向けのマシンをテストしていたし、ドライバーも決定していた。そのなかには、VWとともに4年連続でドライバーズチャンピオンシップを獲得し、現役最強ドライバーのセバスチャン・オジェ(フランス)も含まれる。そのため、VWのドライバーがどこへ移籍するかも含めて、大きな注目が集まっていた。

 結果、王者のオジェはフォードに、WRC16勝を誇るベテランのヤリ=マティ・ラトバラ(フィンランド)はトヨタへ、そして若手アンドレアス・ミケルセン(ノルウェー)は、VWの子会社でもあるシュコダ(チェコの自動車メーカー)へ移籍し、WRCのひとつ下のクラスに参戦することが決定した。チャンピオンチームが撤退し、そのDNAが、他のチームにも分散することで、優勝予想はより難しくなり、混戦となるのではないかとファンを期待させているのだ。

 ちなみに、開幕戦となるラリー・モンテカルロは、F1のモナコGPでも有名なモナコを中心にフランスの山岳地帯などをコースに組み込んでいる。初開催は1911年とラリーでもっとも伝統があり、最初にラリーと言う言葉を使ったのも、このラリー・モンテカルロが最初だと言われている。途中開催しない時期もあったことから、今回は第85回大会となる。

 さらに今年はマシン規定が変更され、より軽く(25キロ軽くなり最低重量は1175キロ)、よりパワーアップ(最高320馬力程度から380馬力程度へ60馬力増加)したことから、マシンのスピードアップは確実で、ドライバーやナビの対応力がさらに求められることとなる。

1月から11月まで全13戦開催

2016年のラリー・オーストラリアの模様。オーストラリアの赤い土の大地は、晴れていれば派手な砂埃が、雨が降ると、厳しい泥んこラリーへと変貌する 【写真:WRC】

 WRCは開幕戦の開幕戦のラリー・モンテカルロから、11月の最終戦ラリー・オーストラリアまで全13戦が予定されている。

第1戦:ラリー・モンテカルロ (1月19日〜22日)
第2戦:ラリー・スウェーデン (2月9日〜12日)
第3戦:ラリー・メキシコ (3月9日〜12日)
第4戦:ラリー・フランス (4月6日〜9日)
第5戦:ラリー・アルゼンチン (4月27日〜30日)
第6戦:ラリー・ポルトガル (5月18日〜21日)
第7戦:ラリー・イタリア (6月8日〜11日)
第8戦:ラリー・ポーランド (6月29日〜7月2日)
第9戦:ラリー・フィンランド (7月27日〜30日)
第10戦:ラリー・ドイツ (8月17日〜20日)
第11戦:ラリー・スペイン (10月5日〜8日)
第12戦:ラリー・GB (10月26日〜29日)
第13戦:ラリー・オーストラリア (11月16日〜19日)

 このところ、F1を筆頭にモータースポーツを地上波テレビで見る機会が減少しているなか、WRCの中継は有料放送の『J SPORTS』で全戦放送するが、テレビ朝日が毎月WRCに関連した番組を開始するという。また、結果やダイジェスト映像を「報道ステーション」などでも扱うとのことなので、テレビで迫力の走行シーンを見る機会は増えそうだ。また、スマートフォンやPCで見ることができる『Red Bull TV』では、英語だがWRCを全戦放送する予定だ。

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