UFC2戦目を控える粕谷優介を直撃 試合、格闘技、仕事、そして家族愛

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11月26日のメルボルン大会でUFC2戦目を迎える粕谷優介(右)に直撃 【Zuffa LLC】

 日本時間11月26日(土)に開催される「UFCファイトナイト・メルボルン」で日本の粕谷優介(27歳、MMA戦績9勝2敗、UFC戦績0勝1敗)がアレックス・ボルカノフスキー(オーストラリア)と対戦する。

 11月16日に誕生日を迎え、27歳になったばかりの粕谷はMMA戦績9勝2敗を誇るも、UFCでは1試合を経験して1敗。すい星のように現れた期待の星、粕谷優介の素顔に迫る。(文、取材:高橋テツヤ)

「川尻選手に憧れてMMAファイターになりました」

――まず、粕谷選手がMMAファイターになられたきっかけを教えてください。

 6歳の頃から極真空手をやっていたのですが、15歳の頃に修斗を見て川尻達也選手に憧れたことがきっかけで、MMAの練習を始めました。学校で修斗の“川尻vs.宇野(薫)”の話をしたりしていました。

――中学生が学校でPRIDEではなく修斗の話をしていたのですか!

 はい、PRIDEのことはみんな知っていましたが、修斗のことは誰も分かってくれませんでした。

――そんな中で粕谷少年があえて川尻選手に注目したのはなぜですか?

 とにかくあのムキムキの身体を見て、「強さといえばこの人だ!」というイメージが自分の中に植え付けられたんです。

――粕谷選手のプロ戦績を拝見していると、空手出身にもかかわらず、サブミッション勝ちがほとんどなんですね。

 最初の頃は寝技が分からず、キックボクシングの練習ばかりしていたのですが、高校生の時にアマチュア修斗に出場して、寝技で3連敗したんです。そこからずっと、寝技の練習ばかりしているうちに、寝技にはまりました。理想は川尻さんのようにグラウンド・アンド・パウンドで勝つことなのですが、いまだにパウンドはあまりうまくないんです……。

――2010年に修斗でプロデビューされ、新人王も獲得されましたが、その後は海外団体での活躍が続きました。

 川尻さんを目指して修斗で戦っていましたが、やがて、その先にあるものはUFCではないかなと思うようになり、そのために海外で経験を積みたいなと思うようになりました。

――すると、とても順調にUFC入りが実現したのですね!

 正直、空手ではなかなか勝てなくて、逃げるように辞めたのですが、MMAではまさかの連勝を続けてしまい、今に至っています。

家族の面倒をきちんと見た上で、自分の好きな格闘技をやるのが本来だと思います

――粕谷選手といえば、UFCでの試合だけでなく、ご家族、お仕事、ジム経営と、大忙しのご様子ですが、今もフルタイムでお仕事をされているのですよね?

 はい、月曜日から金曜日は仕事があります。これでもUFCと契約してからは土曜日をお休みにしてもらったんです。

――そして22歳でご結婚され、お子さんがお2人いらっしゃいます。

 はい。上が2歳の男の子、下が1歳の女の子です。

――世間的には今、結婚したくない若い男性が増えていると言われますが、粕谷選手に言わせればとんでもないことですね。

 まあ、人それぞれでいいと思いますけど、僕はかねて、家族のことをちゃんとした上で、自分の好きなことをやるのが大事なのではないかと思っています。だから僕は、格闘技だけをしていればいいとか、練習時間が足りないから勝てない、というのは、ちょっと違うと思っているんです。

――そして若いのにジムの経営もなさっているわけですが、これはまたどうしてなのですか?

 実は僕は一度引退しているんです。公表していたわけではないのですが、家族には格闘技を辞めると宣言しました。仕事一本でやっていこうと決意したのですが、やはり好きな格闘技と関わりを持っておきたい、将来は子どもと一緒に練習をしたいと思って、ジムを開きました。採算も何も考えていませんでした。とにかく、ジムを開くなら今しかない、年を取ってからでは家族の同意を得られないのではないかと思っていました。

――今、練習時間はどれくらい取れていますか。

 1日2時間くらいですかね。仕事から帰ってきて、子どもをお風呂に入れて、夜にジムの指導をして、その後に練習をしています。

試合があるというのに、実はまだ、会社の休みが取れていません

――さて、前回のUFC初戦のニック・ハイン戦(2015年9月、UFCファイトナイト・ジャパン)は惜しくも判定負けでした。素人目には勝ったかとも見えた試合でしたが……。

 試合直後には、僕も勝っていたのではないかなという気はしつつも、一本取れなかった以上、仕方がないと納得はしていたんです。でも、UFCのイベントで会った川尻さんから、「簡単に負けを認めちゃダメだ」と教えてもらったので、今はあの試合で自分は負けていなかったと思うようにしています。そう思って次に進む気持ちが大切だと思います。

――その後、今回の試合まで、やや間があきました。

 はい、実はハイン戦の最初1分で、後十字靭帯(じんたい)を断裂してしまい、半月板も割れてしまいました。膝から下の感覚がなくなり、「ああ、この試合では寝技にはいけないな」と思いました。

――その状態でフルラウンド、戦われたのですね……。手術はされたのですか?

 していません。勧められたんですけど、1カ月入院だと言われたので、それは困ると……。自然に治癒させて今に至ります……。

――9月の「UFC 203」、そして10月の「UFCファイトナイト・マニラ」と、粕谷さんにはいかんともし難い事情での試合の延期が相次ぎました。こういう時にはどのような気持ちになるものなのですか。

 一番に思ったことは、また仕事で休みを取らないといけなくなる、ということでした。もう3カ月連続で休みをもらうことになるんです。実は、今月試合があることはまだ言えていないんです(インタビューは11月11日収録)。どうも言いにくくて……。あの、試合の延期は僕のせいじゃないということを、ネットで書いてくれませんか? 上司がそれを偶然見てくれるといいのですが……。

――会社の人たちは粕谷さんのUFCでの活躍をあまり知らないのですか?

 ほとんど知られていません。たまに、「早くプロになれるよう頑張ってね」と言われたりします。

――今回の対戦相手、アレックス・ボルカノフスキーについては、どのような選手だと分析されていますか?

 パンチが強くて、レスリングが強くて、スタミナもありそうで恐ろしいですね。何で勝負すればいいのか……。パワーで押されないように用心します。

――ボルカノフスキー選手はオーストラリア人ですので、敵地での完全アウェーの試合になりますが、その点はどうですか?

 そこは大丈夫です。僕は応援をたくさん頂く方がプレッシャーを感じて緊張してしまうたちなので……。

――最後に、この試合で勝ったあとのUFCでの展開や、戦ってみたい相手などがあれば教えてください。

 いや、まずはとにかく1勝したいんです。僕は30歳までUFCでの活動を続けたいと思っています。そのためにも勝ち続けたい。ベルトを獲るというより、UFCで戦い続けることを大事にしたいと思っています。
※なお、粕谷選手が試合直前の11月25日(金)に、UFC日本公式のFacebook及びLINEアカウントでライブチャットを実施します。詳しい時間や参加方法は、UFC日本公式サイトをご覧ください。

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