“変化の少なさ”は強さの証し B1中地区 川崎ブレイブサンダース編

『hangtime』編集部

チームの大黒柱は身長210センチのニック・ファジーカス(左)。その高さを生かしペイントエリアで絶対的な力を発揮する 【B.LEAGUE】

 9月22日に開幕を迎える男子プロバスケットボールの新リーグ「Bリーグ」。B1に所属する18クラブをカウントダウン方式で紹介していく。第8回はB1中地区の川崎ブレイブサンダースだ。

昨シーズンのNBL優勝メンバーが残留

 昨シーズンのナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)チャンピオンは中地区で頭ひとつ抜きんでた存在かもしれない。5戦3先勝方式のファイナルでは百戦錬磨のアイシンシーホース三河(現シーホース三河)を相手に連敗スタートと出遅れながら、その後3連勝して逆転優勝を収めた。ピンチをしのいだ後の戦いぶりは見事で、覇権を握った強さはそのまま継続中だ。今シーズンのベンチスタッフ、ロスターに変わりはなく、追い込まれた状況を打破できるチームワークの良さはストロングポイントと言えそうだ。

 チームの大黒柱は210センチのセンタープレーヤー、ニック・ファジーカスだ。高さを生かしてペイントエリアでは絶対的な力を発揮する。パワフルなタイプではないが、リーチが長く、しなやかな身のこなしで相手をかわしていく。シュートタッチの柔らかさに特長があり、時折見せるロングレンジの3ポイントシュートも高確率で決める。

 インサイドがファジーカスなら、アウトサイドには辻直人がいる。日本代表でもエースとして活躍する彼は、チームを率いる北卓也ヘッドコーチの現役時代を彷彿(ほうふつ)とさせる“クラッチシューター”(勝敗を分ける局面で実力を発揮できる選手の意)ぶりを発揮。ピンチになればなるほど集中力が上がり、立て続けに3ポイントシュートを決めて見せる。彼の1本のシュートがチームに勢いをもたらす。

チームのまとめ役は明るいキャプテン

 チームをまとめるのはキャプテンの篠山竜青。178センチと小柄ながらアグレッシブなプレーでチームをぐいぐい引っ張っていく。ポイントガードとして冷静に戦況を見極めながらチャンスメークし、ディフェンスでは相手の反撃の芽をつぶす機敏な動きが持ち味だ。

 篠山は明るいキャラクターの持ち主で、チームメートからの信頼は厚い。学生時代には試合日と母親の誕生日が重なり、応援に来ていた母親のために、試合後のベンチでチームメートと一緒にバースデーソングを熱唱したというエピソードもある。

 指揮を執るのは、6シーズン目となる北卓也ヘッドコーチだ。前述のとおり、現役時代はクラッチシューターとして名を馳せ、1999−2000シーズンのJBL(日本バスケットボールリーグ)では優勝を果たし、MVPも受賞した。95年の入社以来、チーム一筋で、選手としてもコーチとしても申し分ない実績を残してきた。

 若手選手の起用も積極的で、シーズン当初は実戦を経験させ、多少の失敗には目をつぶる懐の深さがある。そのため、チーム全体が伸び伸びとプレーできており、それが苦しいシーズン終盤になって生きてくる。それが安定したチーム力の維持につながっている。

 昨シーズンでいえば長谷川技が成長し、プレーオフではチームの窮地を救うプレーを見せた。ベテランのジェフ磨々道も自分の役割をしっかりと果たし、目立ちはしないもののチームの結束を高める働きで勝利に貢献した。

強さの源は裏返せば弱点になることも!?

 ロスターはほぼ同じで、スタッフも不動。思い切った選手起用でシーズンを乗り切る力を蓄えることができるなど、良いことずくめのようだが、不安があるとすれば新鮮味に欠け、マンネリ化することだろうか。

 高いレベルで安定はしているものの、いつも通りのプレーができなかった時にいかに調整するかが重要だろう。ただし、軌道修正をする力もリーグ屈指。連敗を重ねたり、大きく負け越したりすることはないのではないか。NBLラストシーズンの歓喜を胸にしまい込み、ファンとともに新たな歴史の1ページを飾るべく、Bリーグファーストシーズンに臨む。

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(グラフィックデザイン:相河俊介)

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