『こち亀』の歴史は新井貴浩の歴史!? カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

【イラスト:カネシゲタカシ】

『こち亀』の連載がついに終わります。子どものときから大好きな作品で、漫画家としても大いに影響を受けました。

 せっかく商売で大成功した両さんが、お金に目がくらんで破滅するいつもの展開が好き。あと「両津はどこだー!」と乗り込んでくる大原部長の「コスプレ芸」も好きですが、それをフォローする中川巡査の適当なひと言はもっと好き。「長い旅に出ました」とか、いつも超適当。

 あとアフロヘアになってしまった両さんが「小柳トムかよ」とセルフツッコミ入れながら走っているシーンがやたらツボにはまり、単行本片手にずっと笑ってたこともあります。あれ何巻だったっけな……と思った所で探すのは一苦労。なんせ全200巻ですから。うーん、やっぱりすごい!

 そんな偉大なる『こち亀』こと秋本治先生の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が『週刊少年ジャンプ』で始まったのは1976年9月21日のことでした。

 当時のプロ野球界はどんな出来事があったのでしょうか? 『こち亀』の歩んだ歴史をプロ野球界のスケールにあてはめることで、その偉大さを実感してみたいと思います。

76年9月21日のプロ野球をお伝えします

 皆さんこんばんは。モントリオール五輪の興奮冷めやらぬなか、プロ野球ニュースをお伝えします。本日、昭和51年9月21日火曜日は、セ・リーグ2試合、パ・リーグ3試合が行われました。まずはセ・リーグの結果から。

 川崎球場で行われた大洋ホエールズ対読売ジャイアンツの試合は6対7で巨人が勝ちました。勝利投手は倉田誠。セーブ投手は小林繁。阪神ではありません。巨人の小林です。そして大洋の敗戦投手は三浦。といっても「大輔」ではなく「三浦道男」です。こちらもお間違いなく。なおこの試合は3年ぶりのリーグ優勝を目指す巨人の試合とあってか、24000人の観衆で賑わいました。

 セ・リーグのもう1試合、広島カープ対ヤクルトスワローズ(広島市民球場)は、広島が水谷実雄の21号3ランなどで6対2と逆転勝利。高橋里志が完投で5勝目、ヤクルトは松岡弘がこちらも完投したものの12敗目を喫しています。観衆はなんと1500人。

 なおパ・リーグの結果はご覧のとおりです。 えっ、ちゃんと伝えろって? わかりました。

 えー、県営宮城球場で行われたロッテオリオンズ対南海ホークスはダブルヘッダーでした。第1試合は1対2で南海が勝ちました。勝利投手は山内新一で20勝目。セーブは江夏豊について8セーブ目。第2試合はロッテが5対1で南海を下しました。八木沢壮六が14勝目を手にしています。観衆は第1試合が4000人、第2試合で6000人でした。

 そして後楽園球場の日本ハムファイターズ対太平洋クラブライオンズは2対1で日本ハムが勝ちました。先発の高橋直樹が完投で13勝目。しかし、それを見届けた観衆はわずか3000人。川崎球場はあんなに盛況なのに……ううっ(泣)。おっと、失礼しました。涙を拭くには『木綿のハンカチーフ』が良いでしょう。今年の大ヒットナンバーです。

 ……とまあインチキニュース風にお伝えしました。親会社が違ったり、本拠地が違ったり、なにより巨人戦とそれ以外の観客動員に圧倒的な差があったりと、時代を感じますね。

その2日前には阪神が1試合9発

 ほかにも調べてみると、この2日前の1976年9月19日には、阪神タイガースが「1試合9本塁打」というプロ野球タイ記録を達成しています(対広島ダブルヘッダー1試合目/甲子園)。

 その内訳は、ブリーデン32号・33号、田淵幸一32号・33号、ラインバック18号・19号、掛布雅之20号、中村勝広12号、池辺巌11号。すでに故人となってしまった方もいますし、のちの「ミスター・タイガース」こと掛布雅之はまだプロ3年目。この試合は2番打者として出場しています。

「おとといの田淵、すごかったよなぁ」「掛布も未来の4番やで」などと小学生が会話するその手に『少年ジャンプ』。そこに『こち亀』の第1話が掲載されていたということになります。

 ちなみに映画化もされた大人気漫画『がんばれ!! タブチくん!!』の連載が始まるのは翌77年。『こち亀』の誕生はそれよりも早かったのです。

【イラスト:カネシゲタカシ】

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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