『こち亀』の歴史は新井貴浩の歴史!? カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

ベストナインには往年のスターがズラリ

 もうすこし1976年のプロ野球をみてみましょう。この年の日本シリーズでは阪急ブレーブスが読売ジャイアンツを下して2年連続の日本一に。またシーズンでは26勝7敗5セーブの山田久志(阪急)と、ベーブ・ルースを超える通算715号も達成した王貞治(巨人)が最優秀選手賞を獲得しました。

ベストナインには昭和のプロ野球を代表するそうそうたるメンバーの名が 【イラスト:カネシゲタカシ】

 ドラフト会議では酒井圭一(ヤクルト)、斉藤明雄(大洋)、佐藤義則(阪急)、宇野勝(中日)、松本匡史(巨人)、山本和範(近鉄)らが指名されプロ入りしました。

同じ76年度まれの現役選手は?

 では『こち亀』と同学年(1976年度生まれ)の選手はいったい誰がいるのでしょうか。現役ではわずか6選手となってしまいました。

サブロー(千葉ロッテ):76年6月1日生まれ
相川亮二(巨人):76年7月11日生まれ
川井貴志(東北楽天):76年9月16日生まれ
福原忍(阪神):76年12月28日生まれ
新井貴浩(広島):77年1月30日生まれ
多村仁志(中日):77年3月28日生まれ

 サブローはすでに今シーズン限りでの引退を表明。『こち亀』とともに世に生まれ、『こち亀』とともに現役生活を終えることとなります。また福原忍にも戦力外という一部報道がありました。引退を選ぶのか、現役続行をめざすのか、注目が集まっています。

 そんななか、新井貴浩だけは25年ぶりのリーグ優勝と打点王に向けてフル回転中。まるで両津勘吉のごとく元気です。

【イラスト:カネシゲタカシ】

 新井さんが生まれた頃から現在まで、ずーっと休まず書き続けられたのが『こち亀』。しかもお情けのフルイニング出場ではなく、バリバリ現役のまま最後まで走り続けた漫画界の鉄人。秋本治先生、本当にお疲れ様でした。

『こち亀』との良き思い出

 最後にちょっと私的な話題を。僕の漫画家デビューは『週刊少年ジャンプ』でした。研究生という形で雑誌に所属していた20代半ば頃、じつは秋本治先生のスタジオにアシスタントとして勉強に行くという話がありました。しかし、最終的には実現せず。おそらく画力が圧倒的に足らず、面接以前の段階で落ちたものと思われます。

 その後、僕が生まれて初めてアシスタントとして働いた某先生の現場で「『こち亀』でやってる」というアシさんと一緒になることがあったのですが、その作画能力の高さ、手の速さに度肝を抜かれた記憶があります。僕は「ああすごい人が来た。もう絵を描くのはこの人にまかせればいい」と心に決め、率先して部屋の掃除とか、買い出しとか、職場を盛り上げる雑談とか頑張ってたら、その現場を3日でクビになるというね……まあ、今では良い思い出です。

 あと、僕の当時の作品は「代原」(代理原稿)という形でジャンプ休載作品(主にHUNTER○HUNTER)の代わりに載ることが多かったのですが、一度だけ『こち亀』のウラに僕の作品が来たことがあったんです。『こち亀』のオチのページ、それをめくると自分の名前、そして作品。これには心が震えました。世の中にそんな『少年ジャンプ』がたった1冊でもあることは、僕にとって誇りです。

 秋本治先生、本当にお疲れ様でした。これからも時々両さんを描いてくださいね。そして新井貴浩先生、これからは時々ベイスターズ戦で手加減してくださいね。

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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