「水の女王」成田真由美、進化の理由 リオパラ水泳で21個目のメダルへ
45歳にして日本記録を更新
“レジェンド”と呼ばれるパラ水泳の成田真由美。5度目のパラリンピックに臨む45歳が進化を続ける理由とは? 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
障がい者スポーツ界にも、レジェンドがいるのをご存知だろうか。パラ水泳の成田真由美(横浜サクラ)はアトランタ、シドニー、アテネ、北京大会と4度のパラリンピックに出場し、日本最多15個の金メダルを含む計20個のメダルを獲得してきた。
「水の女王」とも言われる成田は、昨年に7年ぶりとなる現役復帰を果たすと、今年3月の日本選手権で自身5度目となるリオデジャネイロパラリンピックへの出場権を獲得。17日に行われたジャパンパラ水泳大会では、女子50メートル自由形(S5クラス)に出場し、予選で39秒70をマークし自身の持つ日本記録(39秒96)を更新した。決勝でも39秒91と安定した実力を披露し、45歳にしてさらにレベルアップした姿を見せつけた。
食事を改善し肉体改造に成功
「技術面で(コーチから)直されることはなくなりました。ライバルがどんな練習をしているか分かりませんが、負けないトレーニングを積んでいると思っています」
技術的には既に自身の思い描く泳ぎができていた。変わったのは肉体のほうだ。成田は復帰後、「北京大会の頃にはなかった」という日本身体障がい者水泳連盟と味の素が提携して行うマルチサポートを受け、肉体改造に取り組んでいる。
中でも成田が最も力を入れたのが食生活の改善だ。3月に代表復帰して以降は、味の素の篠田幸彦氏が毎日、無料通話アプリ「LINE」で成田の食事をチェックしている。さらに、料理好きな成田は篠田氏の情報を積極的に取り入れ、普段の食事もアレンジしながらコンディション向上に努めている。改善のポイントは「まごにはやさしい(「豆」「ごま」「肉」「わかめ」「野菜」「魚」「しいたけ」「芋」の頭文字)」食物を取ることだ。
「体は2カ月あればまったく変わります。(成田の)3月の写真と現在を見比べてみればかなり絞れています」(篠田氏)
また、疲労回復のためのサプリメント摂取や食事を改善し、新たに師事するコーチの元、1日に3〜5キロは泳ぎ込む過去最高の練習量・強度をこなしている。
成田も肉体改造の成果を実感しており、「トレーナーにも筋肉がついて逆三角形(の体)になってきたと言われます」と照れながら明かしてくれた。筋肉が付き、体が絞れたことで、より力強い泳ぎができている。
加えて、以前は行っていなかったというトレーナーのケアを週に3回受け、激しいトレーニングをしても疲労を溜め込まないようにしている。今回のジャパンパラでも、予選と決勝の間に適切な処置を受けたことで、ほぼリセットした状態で決勝に臨むことができたという。
さらなるレベルアップは必須
リオパラでのメダル獲得には38秒台以上が必要とされる。成田にはさらなる進化が求められている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
成田もそれを自覚しているが、「泳ぐ度に記録が伸びているので、自分でもどこまでいけるかは分からない」と自身の泳ぎに可能性を感じており、焦りは感じられない。
さらに復活した女王の励みとなる事実がある。成田は2020年の東京五輪・パラリンピック組織委員会理事としての顔も持っている。先日、組織委員会の理事が現役のパラリンピアンとして大会に出場するのが初の快挙であることを知り、モチベーションが高まったという。
変わらぬ技術に、進化した肉体、新たなモチベーションと心技体を兼ね備えてリオに挑む成田は、21個目のメダル獲得という新たな伝説を作ることができるか。
(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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