阪神・福留は外様選手らしい外様選手 静かに迫る日米通算2000安打

山田隆道

日米通算で2000安打に迫る福留 【写真は共同】

 そういえば、阪神・福留孝介の日米通算2000安打達成が目前に迫ってきた。6月13日現在で日米通算1990安打と、残り10安打である。

 しかし、これが不思議なほど話題になっていない。ひと足早く2000安打を達成した広島・新井貴浩は残り29本でシーズンインした直後から大きな注目を集めていたが、福留の場合はここにきてようやく一部の在阪マスコミが取り上げ始めた程度だ。

 虎党の私の周囲もそうだ。福留のカウントダウンに日々熱狂しているマスコミ関係者や阪神ファンはほとんどいない。本当に「そういえば」「いつのまにか」という感じで、福留はじわじわと大記録に歩み寄っているのだ。

 もちろん「日米通算」という記録は少々ご都合主義的な解釈であり、NPBの公式記録ではないため、一部には興醒めしているファンもいることだろう。しかし、それでも日米通算2000安打は名球会が入会基準として認めているからか、これまでマスコミはもちろん、大多数のファンがおおいに盛り上がってきた。その名球会についても、いろいろと問題点や疑問点は指摘されているものの、権威としての力はやはり根強いのである。

 では、福留が阪神の生え抜きではなく、いわゆる外様選手であることが、盛り上がりに水を差しているのだろうか。いや、2008年に同じく外様選手である金本知憲が2000安打を達成したときのお祭り騒ぎを思うと、それも関係ないだろう。

かつての外様選手とは異なるタイプ

 そもそも阪神は昔から外様選手が主力級の活躍をすることが多く、ファンもそれに寛容なところがある。先述の金本をはじめ、同時代に活躍した矢野燿大や下柳剛、さらにさかのぼれば真弓明信、小林繁、江本孟紀、もっと古くは山内一弘ら、阪神の外様選手は結果さえ残せばファンに愛され、生え抜き選手と変わらない脚光を浴びてきた。

 現在の福留も39歳ながら主力中の主力である。MLBから鳴り物入りで入団後、1年目は満足な結果を残せず、ファンから批判されることもあったが、2年目の後半あたりから徐々に往年の打棒が復活し、3年目の昨季はフルシーズン働いて打率2割8分1厘、本塁打20、打点76と及第点の成績を残した。今季も若手の多い阪神打線の中で、福留の打撃技術の高さは際立っており、外野守備の安定感も含めて貴重な働きをしている。

 ただし、福留は過去の阪神の外様選手たちと比べると、少々異質なタイプである。

 ここ近年、阪神で主力級の活躍をした外様選手は先述の金本しかり矢野しかり、その後の城島健司や西岡剛など、毒のあるジョークを交えたサービスコメントをするタイプが多く、観客をおおいに盛り上げていた。かつて矢野がよく口にした「必死のパッチ」という決め台詞、広沢克己が甲子園のお立ち台の上で歌った「六甲おろし」、ああいうパフォーマンスによって阪神の外様選手はファンに受け入れられ、やがて生え抜きと変わらぬ存在感を発揮するようになった。照れ屋で知られた下柳にしても、彼はあまりお立ち台に上がってこなかったが、たまに金本や矢野といった同級生から強引に連れてこられると、その口下手ぶりを二人にいじられることで、味のあるキャラクターとして認知された。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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