速さ増した錦織 全仏で期待の日本選手 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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コンディションが充実している今季の錦織

昨年の全仏で錦織は準々決勝へ進出するも、ツォンガに敗れた 【写真:ロイター/アフロ】

 全仏オープンの開幕が近づいてきました。今回は大会に出場する日本選手を展望します。現時点で本戦のエントリーリストには、錦織圭、ダニエル太郎、土居美咲、日比野菜緒、奈良くるみ、大坂なおみの各選手の名前があります。

 錦織選手は今、すごく良いテニスをしています。オフの忙しさがシーズンにどう影響するかと見ていましたが、北米のハードコートでも、クレーに切り替わっても、質の高いテニスを見せていますし、充実した表情をしているように見えます。調子としては去年の全仏と同じくらいか、それ以上に良いなと感じます。

 前への詰め、展開の早さなど、持ち味であるプレースピードがさらに速くなっています。バルセロナ(オープン)のナダルとの決勝でも「え?」というくらい、お互いにハイテンポのラリーが見られました。

 錦織選手の良い時は、自分から早めにダウン・ザ・ラインに仕掛けます。積極的に展開できるのは、自分が動けるからこそ。ダウン・ザ・ラインに展開すれば、必然、オープンコートもできるので、カバーのために自分も動く必要があり、その覚悟も必要です。動くスピードがあるから、あのテニスができるのであって、そこに対戦相手は怖さを感じるのです。今の彼は、体も強くなり、動けるコンディションにあることが何より大きいと思います。

大坂なおみの「若さ」に期待

 女子で注目したいのは、やはり大坂選手ですね。サーブ力、グラウンドストローク力とも、あそこまでパワーのあるショットが打てる選手は日本にはいなかったと思います。だから、プレーは見応えがありますね。今の女子テニスでは攻撃力は不可欠で、彼女の持ち味を生かせばトップ10も倒せる潜在能力を持っていると思います。

 彼女は米国のハードコート育ちですからクレーの経験は浅いはずですが、それさえ伸びしろと捉えていいと思います。クレーコートでは忍耐力が必要で、精神的な部分だけでなく持久戦に耐える体力も求められます。そこが分かってプレーできるのか、分からなくてもラウンドを進めていく中で自然に身に付いていくのか。若い頃は1試合1試合が勉強の場です。

 私自身、全仏では19歳で初勝利を挙げ、そのまま4回戦まで進みました。1回戦でヘレナ・スコバ選手に勝ったのも自信になりましたし、クレーでのプレーの仕方を1試合1試合つかんでいって、「できる」という自信に変えることができました。大坂選手にもそんな若さの特権を発揮してほしいと思います。

クレー向きな土居のプレースタイル

トップ50に定着してきた土居美咲。昨年の全仏は2回戦で姿を消した 【写真:アフロ】

 ランキングで日本女子のトップに立つのは土居選手です。トップ50に定着、テニス自体、1ランク上のテニスになってきたなと感じます。グランドスラムに限っては、マッチポイントを逃すなど、もう少しの所で……という試合が続いてしまったので、今度こそはと思っているでしょう。

 全仏では去年も良いプレーをしていますし、クレーコートは、一番と言っていいくらい彼女のプレースタイルにフィットしていると思います。彼女の武器であるフォアハンドの質の高さがクレーに向いているのです。回転量も増やせるし、同じ構えからいろいろなショットを繰り出します。クレーコートではプレーの幅が求められますが、彼女は回転量の多いボール、スピードボール、アングルショットと、3つ4つのショットを同じ構えから打ち分けます。しかもバウンドしてから伸びる、質の高いボールです。

 1回戦を突破し、上位を破って2週目も……と、そんな期待ができるくらいの実力をつけていると思います。
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