イチローの公式記録訂正の背景とチーム内で高まる存在感

丹羽政善
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現地時間19日、イチローの一打はエラーから安打に記録が変わった 【Getty Images】

 セーフコ・フィールドのマリナーズのダグアウトには、記者席中央にある球団広報の席へつながる直通電話がある。マイク・ハーグローブがマリナーズの監督だった頃(2005年〜07年)、彼は試合中にたびたび受話器を手に取った。
 
「オイ、今のは内野安打だろう。公式記録員に抗議しろ」
 
 例えば、マリナーズの選手が三塁前にセーフティーバントを試みる。焦って処理した三塁手が一塁へ暴投――。内野安打かと思いきや、スコアボードに「E(エラー)」が点灯すると「ちょっと待て」となる。広報は監督に従わざるを得ず、公式記録員のところへ行って説明を求める。本来、公式記録員に説明責任があるわけではなく、そもそもチーム関係者によるそうした行為はルールで禁じられているが、公式記録員も「こういう理由で判断した」と見解を伝える。
 
 その時点で広報の反論が勝って記録が訂正されることがあるが、そうなれば、今度は相手チームが「ちょっと待て」と詰め寄ることもあり、どちらかが納得いかない場合、最終的には5人によるリーグの委員会に諮られ、記録が確定する。何日かたって、公式記録が変更される背景には、そういう経緯がある。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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