金本効果を最も受けているのは西岡剛 放送席から見えた“超変革”の秘密

楠淳生(朝日放送)

藤川を立ち直らせたアドバイス

8日にサヨナラ打を放った西岡(写真中央)。楠アナは金本監督の影響を強く受けている、と語る 【写真は共同】

 西岡自身も選手たちに影響を与えています。開幕直後、打順が6番に変わった鳥谷は25打席ヒットが出ず、とても苦しんでいました。そんな時も凡打の直後に「当たりよかったやん!」と声をかけ、26打席ぶりの安打が出た時には我が事のように喜んでいました。3日のDeNA戦では先発の藤川が序盤2回までで4四死球と大乱調。この時にはマウンドに行って「楽しめていませんよ! 野球は楽しむものですよ」と声をかけて藤川を立ち直らせています。

 メジャーから帰ってきた選手にしかわからない背負い込んだものがあるんでしょう。活躍するのが当たり前、福留も「単打やったらアカン、二塁打やないと」と言っていますし、元東京ヤクルトの岩村明憲さんも同じようなプレッシャーを感じていたそうです。それをわかっている西岡が藤川に声を掛けたことで、藤川も感じるものがあったのでしょう。

横田、江越の右中間になれば超変革の完成

 今後への不安を挙げるとリリーフ陣。セットアッパーの福原忍にどうつなぐかですね。榎田大樹、歳内宏明あたりがもう少しピリッとして、2軍から石崎剛、松田遼馬、岩本輝あたりの突き上げがあると、藤川は5回まで投げれば勝ち星をひろえるようになります。最多勝を取ったころ(05年)の下柳剛さんのような感じですね。メッセンジャー、藤浪晋太郎には完投を期待しますが、それ以外の投手でも勝ちパターンを作ることができます。

 あとはマテオ。3月31日のヤクルト戦では3回、61球を投げましたが、その後の広島戦ではカットボールに合わせられていました。またルナに盗塁を許してしまったのも痛いですね。クイックに課題が残るでしょう。

 開幕から12試合連続でスタメン入りをしながら、8日からスタメンを外れた横田のケアは片岡篤史打撃コーチがしっかりやっています。本来は「強く叩く」という金本イズムに合致して、柳田悠岐(福岡ソフトバンク)のように育てたかったのですが、合わせて三遊間に転がす打撃になってしまった。ここは1回メンテナンスをする時期なのでは、という考えですね。

 それと合わせて江越の調子、“株価”が上がってきた。そんな選手を使わないわけにはいかないですね。もう江越は絶好調。振り終わったあとのバットの振り戻しが田淵幸一さんのようでした。この2人はライバル関係になります。将来は2人で右中間を組むようになると、長期的なスパンでの“超変革”の完成になるのでしょう。

 今年の阪神は実況をしていても楽しいです。10日の中継でも「帰った人を悔しがらせるような試合」と表現しましたが、相手投手が絶好調の広島・中崎翔太なので、逆転できませんでしたが、ボルテージも高まってきた甲子園で他の抑えだったら大逆転だったでしょう。イニング別のチーム打率を見ると9回が最高で3割4分5厘。最後まで何が起こるか分からない阪神野球にこれからも期待したいですね。

(構成:スポーツナビ)

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【画像提供:三笠書房】

 楠アナウンサーがプロ野球、高校野球の実況中継アナウンサーとして、30年以上にわたって放送席、グラウンド内外で見た・聞いた・調べた「超絶プレー、感動のシーン、人間ドラマ」を初公開! あの選手、この監督、迷解説者の方々、許されるかぎり実名で登場。「舞台裏」を知って見ればもっと面白い。選手もチームももっと好きになる。あなたを野球の「奥深い世界」にご案内します!

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著者プロフィール

1957年8月16日生まれ。1981年に朝日放送(ABC)に入社。プロ野球、高校野球を中心に実況アナウンサーとして、テレビ、ラジオでスポーツ中継に携わる。その豊富な経験を生かし、大阪経済大学大学院で「スポーツアナウンスにおける予測実況と累積実況の提案」の修士論文を発表。2016年3月28日には単著「眠れないほど面白い野球の見方(三笠書房)」も出版した。

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