金本効果を最も受けているのは西岡剛 放送席から見えた“超変革”の秘密

楠淳生(朝日放送)

8日の広島戦でサヨナラ打を放った西岡(右)を笑顔で迎える金本監督 【写真は共同】

“超変革”を掲げる金本知憲新監督の下、ここまで9勝6敗1分でセ・リーグ2位と好調な滑り出しを切った阪神。野手では高山俊、横田慎太郎、江越大賀といった若手が躍動し、助っ人選手らもここまで活躍を続けている。大阪・朝日放送(ABC)でキャリア30年以上の大ベテラン・楠淳生アナウンサーは今シーズンもテレビ、ラジオの実況担当としてバックネット裏から猛虎の戦いを見つめる。テレビ、ラジオの放送席から見えた“超変革”はどこに現れているのか、語ってもらった。

チーム対抗リレーの影響がシーズンに

 キャンプからチームを取材して、あらゆるところに意識改革が見えています。私がラジオ実況を担当した4月10日の広島戦、4点差で迎えた9回はその象徴。先頭の3番・江越が三塁線へのボテボテの当たりで一塁にヘッドスライディングして内野安打。福留孝介もつなぐと、広島の投手・永川勝浩は5番・今成亮太に死球を与え、無死満塁としてしまいました。

 ベンチを見ると選手たちが高校球児のように身を乗り出して声を出しているんです。金本監督の「なんとかせんかったら去年と同じやぞ。まずは気迫やぞ」と言った指導が感じられます。逆転サヨナラ勝ち、とはいきませんでしたが明らかに変化が見えています。

 この意識改革の第1歩は春季キャンプで行った選手たちのリレーでしょう。4チームに分かれて1人約400メートル。トップアスリートが過呼吸になるようなメニューですが、走ることの楽しさを選手たちに思い起こさせる効果がありました。

 それがシーズンに影響を与えています。江越、横田といった足の速い野手は当然ですが、開幕戦ではメッセンジャーが盗塁しましたからね。次の回に疲れて自滅、相手投手の大野雄大(中日)に打たれてしまいましたが(笑)。

愛すべきやんちゃな金本監督

 こういった意識改革がなぜできたのか。金本監督の性格にあると思います。彼は愛すべき性格の持ち主です。さらに主力選手たちにしっかりと声をかけているようです。鳥谷敬に「本塁打20本以上を狙って長打を目指そう! このチームはお前のチームだぞ」、能見篤史には「真っすぐを磨け」、藤川球児には「もう1回花を咲かせよう」といった具合です。

 その影響を一番受けているのは同じような性格の西岡剛ですね。やんちゃな精神を持ち、野球に魅せられてしまった男同士、言葉で確認しなくともわかりあえる部分があります。野球に関してはストイックですが、いたずら心があったり、人をだまそうと考えていたりするところは共通しています。ただ、西岡は頭がよいので、合理的な考えに基づいて「ここは手を抜いてもいいだろう」と考えてしまうのです。それを金本監督は一喝しました。本人も「(金本監督に)監視されています」と笑いながら言っていましたが、彼をしっかり指導することで、他の選手もついていく。“サボり大魔王”といじることもその一環でしょう。

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著者プロフィール

1957年8月16日生まれ。1981年に朝日放送(ABC)に入社。プロ野球、高校野球を中心に実況アナウンサーとして、テレビ、ラジオでスポーツ中継に携わる。その豊富な経験を生かし、大阪経済大学大学院で「スポーツアナウンスにおける予測実況と累積実況の提案」の修士論文を発表。2016年3月28日には単著「眠れないほど面白い野球の見方(三笠書房)」も出版した。

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