ACL出場クラブへの多岐にわたる支援 Jリーグがアジアを勝ちにいく意義

川端暁彦

ACLのタイトル獲得は今季最大のターゲット

村井満チェアマンが最大のターゲットと位置づけるACLの戦いがスタートした 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 2月23、24日の両日から、アジアNo.1のクラブチームを決するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の戦いがスタートした。村井満チェアマンが最大のターゲットと位置づけるタイトルに向けて、Jリーグの戦略はどうなっているのか。そして、そもそもACLを重視する意味とは何なのか。Jリーグの幹部に加えて、実際にサポートプロジェクトスタッフとして出場クラブと向き合っているスタッフを直撃した。

 まず、Jリーグ側の思考の出発点は「危機感」にある。アジアにおける戦績がこの10年で下降線をたどっているという自己認識があるからだ。中西大介常務理事は「2007年に浦和レッズ、08年にガンバ大阪が2年連続で(ACLのタイトルを)獲って、これからアジアはJリーグの時代だと思った人は多かった。ところが、現実はそうではなかった。その2年を頂点にして7年連続して優勝できていないし、そもそも決勝進出もない。成績も徐々に落ちている」と分析する。

 ここ3シーズンでのべ12チームがACLに挑んで、決勝トーナメントに進んだのは半分の、のべ6チーム。「以前は予選リーグで敗退したら『何が起こったんだ?』という雰囲気すらあったけれど、いまは逆」(同常務理事)。出場チームのグループステージにおける平均勝ち点は徐々に低下し続けており、昨年(柏レイソル、G大阪、浦和、鹿島アントラーズが出場)は平均勝ち点7.8(最大18)で、史上最低の数字を記録してしまった。競り合いながら勝ち残るしぶとさを各チームが見せているとも言えるが、アジアにおけるJリーグの競技力での優位性が失われつつあることは「各種のデータからも明らか」(同常務理事)ではある。この事態に対する危機感がJリーグ側にはある。

価値が高まり続けるアジアの市場

 一方で、別の視点もある。

「UEFA(欧州サッカー連盟)のチャンピオンズリーグ(CL)は今や米国のスーパーボウルと並ぶ世界最大規模のスポーツイベントになった。そういう中で、今年コパ・アメリカ(南米選手権)が米国で開催される。その背景にあるのは、『UEFAに対抗するもう一つの経済圏を作っていこう』という南北アメリカ双方の思惑がある。米国やメキシコは強くて華のある対戦相手を得られるし、南米は彼らから資本を享受できる。そういう関係性から新しい経済圏ができつつある」(中西常務理事)

 その中で、アジアである。「では、僕らのいるアジアの未来が暗いかと言うと、そうでもない。中国と東南アジアは依然として世界で一番の経済成長センターだし、その成長とともにフットボールへの投資も膨らんでいっている。いきなりCLとは言わないけれど、コパ・リベルタドーレス(南米のCLに相当する大会)に匹敵するようなスターが集う場になっていく可能性は十分にあると思っている。そして、より大きくなっていくであろうアジアの市場の中で、日本のポジションを確保していくことに確かな意義を感じている」とも言う。

 つまり、大会が成長していくと予想しているからこそ、この大会にJリーグが投資していく価値があるということだ。日本という国自体の成長が見込めなくなる中で、近隣には成長の可能性を持った市場がある。ならば、そこで戦っていくことで、Jリーグという産業の規模を拡大していく。「それは出場する4クラブだけのものじゃなくて、Jリーグを引っ張るエンジンになる。そういう観点から、出場するチームをより厚くサポートしていきたい」と中西常務理事は断言した。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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