ACL出場クラブへの多岐にわたる支援 Jリーグがアジアを勝ちにいく意義
ACLのタイトル獲得は今季最大のターゲット
村井満チェアマンが最大のターゲットと位置づけるACLの戦いがスタートした 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
まず、Jリーグ側の思考の出発点は「危機感」にある。アジアにおける戦績がこの10年で下降線をたどっているという自己認識があるからだ。中西大介常務理事は「2007年に浦和レッズ、08年にガンバ大阪が2年連続で(ACLのタイトルを)獲って、これからアジアはJリーグの時代だと思った人は多かった。ところが、現実はそうではなかった。その2年を頂点にして7年連続して優勝できていないし、そもそも決勝進出もない。成績も徐々に落ちている」と分析する。
ここ3シーズンでのべ12チームがACLに挑んで、決勝トーナメントに進んだのは半分の、のべ6チーム。「以前は予選リーグで敗退したら『何が起こったんだ?』という雰囲気すらあったけれど、いまは逆」(同常務理事)。出場チームのグループステージにおける平均勝ち点は徐々に低下し続けており、昨年(柏レイソル、G大阪、浦和、鹿島アントラーズが出場)は平均勝ち点7.8(最大18)で、史上最低の数字を記録してしまった。競り合いながら勝ち残るしぶとさを各チームが見せているとも言えるが、アジアにおけるJリーグの競技力での優位性が失われつつあることは「各種のデータからも明らか」(同常務理事)ではある。この事態に対する危機感がJリーグ側にはある。
価値が高まり続けるアジアの市場
「UEFA(欧州サッカー連盟)のチャンピオンズリーグ(CL)は今や米国のスーパーボウルと並ぶ世界最大規模のスポーツイベントになった。そういう中で、今年コパ・アメリカ(南米選手権)が米国で開催される。その背景にあるのは、『UEFAに対抗するもう一つの経済圏を作っていこう』という南北アメリカ双方の思惑がある。米国やメキシコは強くて華のある対戦相手を得られるし、南米は彼らから資本を享受できる。そういう関係性から新しい経済圏ができつつある」(中西常務理事)
その中で、アジアである。「では、僕らのいるアジアの未来が暗いかと言うと、そうでもない。中国と東南アジアは依然として世界で一番の経済成長センターだし、その成長とともにフットボールへの投資も膨らんでいっている。いきなりCLとは言わないけれど、コパ・リベルタドーレス(南米のCLに相当する大会)に匹敵するようなスターが集う場になっていく可能性は十分にあると思っている。そして、より大きくなっていくであろうアジアの市場の中で、日本のポジションを確保していくことに確かな意義を感じている」とも言う。
つまり、大会が成長していくと予想しているからこそ、この大会にJリーグが投資していく価値があるということだ。日本という国自体の成長が見込めなくなる中で、近隣には成長の可能性を持った市場がある。ならば、そこで戦っていくことで、Jリーグという産業の規模を拡大していく。「それは出場する4クラブだけのものじゃなくて、Jリーグを引っ張るエンジンになる。そういう観点から、出場するチームをより厚くサポートしていきたい」と中西常務理事は断言した。