ACL出場クラブへの多岐にわたる支援 Jリーグがアジアを勝ちにいく意義
中国の経済規模は日本を凌駕しつつあるが……
中西常務理事は「金だけで決まるわけではない」と「戦力」以外の部分に突破口があることを強調した 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
「フットボールの世界では資金で戦力が決まる面はある」のは確かだが、「金だけで決まるわけではない。もしそうなら、CL上位はプレミアリーグ勢ばかりになるはずだけれど、現実はそうなっていない」(同常務理事)。先日のAFC・U−23選手権(リオ五輪アジア最終予選)がそうだったように、サッカーという競技の特質を含めて、「戦力」以外の部分に突破口はある。
クラブの財政的負荷は大幅に減少
また、広大なアジアを股に掛けるゆえに財政面の負担がクラブにとって重くのしかかってきていたが(それゆえにACL出場を『罰ゲーム』などとやゆする声もあった)、現在は「グループステージにおける渡航費は実費の80パーセントを、ノックアウトステージ(決勝トーナメント)からは50パーセントをJリーグが負担させていただいています」(西尾氏)。またJFAからは勝利給と強化費が各クラブに支給されており、戦績に応じて支払われる形となる。今年からACLの賞金が倍になったことを含め、出場すること自体に財政的な負荷があった時代からは様変わりした。
他にも国際試合ゆえに難易度や求められる水準も変わるホームゲームにおける運営面の支援や、スカウティング映像の提供、現地の領事館や大使館との折衝などもサポートする体制ができあがった。
ワールドクラスの選手が出場する大会の価値
ただ、「中国にワールドクラスの選手がいることで、彼らとACLという舞台で戦えるというのは日本の選手にとって大きな財産になる。そういう視点が持てれば」と中西常務理事が言うように、大会の話題性に関してはポテンシャルもあるのは確かで、「決勝まで行けば地上波放送もあるし、そこで優勝すればまた変わる」というJリーグ側の見立ては、あながち単なる楽観論でもあるまい。
日本経済が奇跡的に立ち直るといった環境変化でもない限り、Jリーグ勢が戦力的に他国を圧倒するような時代は来ないだろう。まさに「アジアで勝つのが難しくなった時代」(霜田正浩JFA技術委員長)が来ているのは間違いない。ただ、大きく市場が膨らみ、富と人材が集まりつつあるACLは、Jリーグが未来に向けて発展していくためのチャンスが詰まった場になってきたのも確かだ。浦和とG大阪の戴冠から「空白の7年」を経て迎える今季が、後世において「Jリーグのアジア戦略における新たなムーブメントの始まりだった」と記憶されるシーズンになることを期待したい。