ドジャースキャンプでさっそく披露 「マエケン体操」の理論と効果とは?
ドジャースキャンプに参加した前田は、おなじみ「マエケン体操」を披露 【写真は共同】
さて、「マエケンのキャッチボールを見たことがありますか?」と少し前に聞かれたことがある。ドジャースとの契約を交わした前田がそろそろ渡米か、という時期だが、正直言って見たことがない。試合で投げている姿もハイライトぐらいだ。
ならばと、ある映像を見て見ると、鞭(むち)がしなるかのようにきれいなフォームで投げている試合とはまるで違い、肩の稼働域が狭いのか、うまく肘を使えていないのか、彼のキャッチボールはどこかぎこちなかった。おそらくマウンドでも同じ投げ方なら、肩、肘を壊してしまうのではないか。
実際、PL学園時代にマエケンは肘を痛めたことがあるという。そんな中、肘に負担がかからないよう、全身を使った投げ方を模索する中で生まれたのが、マエケン体操だという。そのマエケン体操により、キャッチボールはともかく、マウンドでは、自然なフォームで投げることが定着した。
利に適った身体の操り方を習得
「理に適った身体の操り方を習得することができ、短期的または永続的に身体に落とし込む効果があります」とパフォーマンス・コーディネーターの手塚一志氏は指摘する。
「理に適った身体の操り方」については、「本来腕をスイングして指先を振り、指先や持っているモノなどに速度を与えようとする際の、本質的な運動パターン」と説明。その本質的な動きを身につけるのに、マエケン体操は適しているそうである。つまりマエケンは、その動きを通じて、本質的で利に適った身体の操り方を自分の体の中にしみ込ませようとしている、ということになり、それを追求することは体にとって一番無理のない形を追求することでもあるので、マエケン体操がもたらすものは、小さくない。
ただ、このマエケン体操の理論そのものは、決して新しいものではない。マエケンが習得したのは、2004〜06年の高校時代だが、1995年には手塚氏がその動きを肩甲骨周辺のコーディネートドリルとして取り入れていれている。発表は「別冊宝島263号 スポーツトレーニングが変わる本」(宝島社 96年)。
手塚氏はそのドリルを「サークルスクラッチ」と呼ぶ。スクラッチとは、「投手がテイクバックに入る際に肘を畳んで腕を引っかくように持ち上げてくるシーンのこと」(手塚氏)であり、肘が円運動(サークル)をしていることから、両方を合わせて、一つの言葉としたそうだ。