ドジャースキャンプでさっそく披露 「マエケン体操」の理論と効果とは?

丹羽政善

新型サークルスクラッチも存在

MLBでも「マエケン体操」を定着させることができるか? 【Getty Images】

 その効果に関しては先ほど少し触れたが、実のところ、手塚氏が指摘しているそれは、もう少し進化したサークルスクラッチについてのものである。

 2004年に今の動きにたどり着き、旧型と新型の違いを手塚氏は、「旧型が“肩から腕にかけての調整効果”を狙いとしていたのに比べ、新型は同じ肩から腕にかけての調整効果に加え“骨盤からの連鎖・連動による全身運動”を目的としている」と解説。旧型ではできなかったことも実現した。

「旧型の、投球中のボディースピンによる遠心力(慣性)を考慮していなかったという問題点を、新型はクリアすることに成功しました。そして、よりピッッチャーのコンディショニング、または調整・調律効果が増したと考えています」

 サークルスクラッチは、骨盤と連鎖させた全身運動となり、体のひねりからの遠心力をも得られるようになった、ということのようだ。

 その手塚氏が見る限り、マエケンは旧型だそうだが、マエケン本人は十分に効果を実感しており、特に改良の必要性を感じていないのかもしれない。

 ちなみに、手塚氏は04年から、ドジャースに移籍する前年の07年まで黒田博樹のパフォーマンスサポートをしており、黒田自身、新型のサークルスクラッチになじみがあるそうだ。

 さて、今やサークルスクラッチは、野球という枠を超え、テニス、ゴルフ、水泳、陸上、ラグビーなどにも応用でき、相撲でも一月場所で初優勝を遂げた琴奨菊がトレーニングに利用するほど、広く認知されるようになった。それは、「前田投手のおかげ」と手塚氏。「ぜひ会って感謝の気持ちを伝えたい。そして新型を紹介したい」と笑った。

 手塚氏は、投手の肩、肘の故障予防の観点から米球界での広がりも期待しているが、マエケン体操が注目されることで、ぞれが一役買うことになるのかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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