前田健太、異例の契約に至った3つの理由 ドジャースとの契約過程を振り返る
ドジャース入団会見での前田健太 【Getty Images】
「Hi, my name is Kenta Maeda. I'm from Hiroshima Toyo Carp. I'm very honored to be a Dodger. Thank you.」
入団会見で開口一番英語を披露した前田の表情は、実に晴ればれとしたものだった。しかし昨年12月24日にドジャースタジアムを初訪問し入団交渉が本格化して以降、会見までの2週間は決して平坦ではなかった。
すでに日米のメディアがさまざまなかたちで報じているが、投手としてはドジャース史上最長の8年契約を結んだものの、完全保証されている金額は契約金の100万ドル(約1億1700万円)と8年間の年俸2400万ドル(約28億円)のみ。1年当たりの年俸300万ドル(約3億5000万円)はMLBの平均年俸(2015年は425万ドル=約5億円)にも達していない低さだ。このオフのFA市場で、先発投手部門である程度の評価を得ていた投手に提示される契約内容とは思えない内容だった。
にもかかわらず前田はドジャースに最大限の感謝を示すとともに、誇らしげに入団会見に臨んでいた。今回は会見で得たすべての情報を披露しながら、前田がドジャース入りするに至った顛末をレポートしていきたい。
“イレギュラーな点”を共有し交渉へ
もちろん前田が自ら説明したように、身体検査で“イレギュラーな点”が見つかっていた。だがそれは契約合意の後で発覚したのではなく、前田が昨年12月に渡米直後に行った身体検査で判明したもので、ドジャースとは始めからその事実を共有した上で交渉を行っていたのだ。それは会見に同席したアンドリュー・フリードマン編成本部長も認めている。
ここで補足説明しておくと、通常FA選手の場合、身体検査は契約合意に至ったチームによって行われるものだが、以前にポスティング制度でヤンキース入りした田中将大も渡米直後に身体検査を行い、その結果を各チームに伝え交渉を行っており、過去にもあったケースだということは理解しておいてほしい。
「とにかく我々はしっかり時間をかけて彼を再査定した。その結果16年シーズンのみならず将来においてチームを助けてくれる選手だと自信を持つに至った」
フリードマン氏が説明しているように、ドジャースは慎重かつ徹底的に前田を調べた。チームとしてもあらためて身体検査も実施し、やはり同じ結果を得ていたという。それでもなおドジャースに欲しい戦力としてチーム史上最年長契約で獲得を決断したわけだ。