“ブーム”と“激動の1年”を乗り越え 風香GMが振り返るスターダムの5年間
スターダムの5周年を記念して、ここまでの歩みを風香GMにベスト5形式で振り返ってもらった 【スポーツナビ】
明るく、激しく、美しく、女子プロレス界の一番星を目指して旗揚げしたスターダムもいよいよ5周年。旗揚げ当初は“ゆずポン”愛川ゆず季というスターを生み出し、その活躍で東京スポーツが制定する女子プロレス大賞に2011年、12年と連続受賞を飾った。さらに15年には、団体の大黒柱でもある紫雷イオが同賞を受賞するなど、女子プロレス界の中心に躍り出ている。しかし、その反面、主力選手や生え抜き選手が団体を去ったり、世間をにぎわす騒動が起きたりと、激動の5年間でもあった。
今回スポーツナビでは、ここまでの道のりを風香GMに振り返ってもらい、印象に残った出来事ベスト5を選んでもらった。
『燃え尽き症候群』となった両国大会
両国大会はゆずポンの引退試合ということで大成功に終わった。ただその代償も大きかった 【前島康人】
風香GM この大会まではすごく順調に来ていて、『ブーム』と呼んでもいいぐらいの状態でした。そこにはゆずポンというスター選手がいて、ほかにも人気選手がたくさんいたので、勢いがありました。いろいろな良い要素が詰まっていて、両国大会を成功させることができたと思います。
でも、この大会が終わった後、愛川さんが引退されて、ほかの選手も一気にいなくなってしまいました。それは、私もそうだったんですけど、『燃え尽き症候群』に陥ってしまった部分がすごくあったと思うんです。みんな辛いことがあっても「両国大会を目標に頑張って乗り切ろう」と思っていたところがありました。やっぱりここまでスターダムを盛り上げてくれた愛川さんをいい形で送り出したいから、たくさんの人に観に来て欲しかったのもあって、いろいろなプレッシャーがみんなにかかってしまったんだと思います。
だからあの大会はすごく大きな成功であった反面、その直後の代償も大きかったのかなと思っています。でもこの大会のおかげで、いろいろなメディアでスターダムを取り上げてもらえたので、広められるきっかけになったし、愛川さんをいい形で送り出せたので、良い大会だったと思います。
プロレスラー・愛川ゆず季は「“覚悟”が違いました」と話す風香GM 【t.SAKUMA】
(その愛川さんが引退された後というのは?)私も燃え尽きちゃって、3カ月間ぐらいはモチベーションがなく「この先どうしよう?」という感じでしたね。ちょっと長く続いちゃいましたね。徐々に気持ちを切り替えていったんですけど、気持ちを切り替えられたのはイオちゃんの事件があったからですね。
「イオを信じて待ちます」
12年5月の紫雷イオ逮捕騒動はスターダムにとって最初の大激震ニュースでもあった 【前島康人】
風香GM 私って、みんなに「ついて来い!」って言うタイプじゃなくて、遅れそうな子がいたら「頑張れ、頑張れ!」って励ますタイプなんです。でも、この騒動があった時、誰かが矢面に立たなきゃいけないと思ったので、ここは自分が行くしかないなって思って、「私はイオを信じて待ちます」という方向性を示したんですね。この時は、応援してくれる人もいましたが、やっぱり批判する人がすごく多かったんです。
それこそ逮捕されたという報道はすごく大きく取り扱われたんですけど、無実だったということは、あまり取り上げられなかったんです。(※大麻取締法違反容疑で逮捕されたが、その1カ月後に不起訴処分が決定。さらにその後、別の人物が首謀したことを認めている)
だから今でも、プロレスを見ている人なら紫雷イオはチャンピオンで、活躍しているという印象に変わっているけど、一歩離れている人は、「あの逮捕された子だ」という人もいるんです。それぐらい大きなニュースになったのはスターダムとして初めてだったので、あの時は一番苦しかったです。そういう免疫もなかったので、本当に私自身、どうしようと悩んでいました。
ただ、その頃からイオちゃんがプロレスに対して真剣に向き合っていて、練習も一生懸命やっていたし、その姿を見て周りの選手もイオちゃんを信じていくようになりました。そんなこともあって、イオちゃんも「恩があるからここでやっていく」と腹をくくってくれて、本当に変わってくれたんだと思います。
今だから言えることですけど、すべてがドラマですよね。イオちゃんが現役生活を振り返った時に、あれもイオちゃんを盛り上げるためのシナリオだったんじゃないかと思うぐらいなので(笑)。結果的には良かったし、でも良かったと言えるのは、イオちゃんがこれだけ頑張ってくれたからだと思います。